現地レポート

攻める男の流儀RSS

2013年03月28日 22時50分


見ていてスカッとする、気持ちのいいチームだ。それは、男子の広島県選抜である。


最近の日本のバスケットは「ディフェンスからファストブレイク」が基本だと聞く。そのせいか、トップチームから中学校、ミニバスケットにいたるまで、多くのチームがチーム作りの根幹にディフェンスを置いている。それはけっして悪いことではなく、実際のところ背の小さい日本人が世界で戦おうと思えば、ディフェンスは最重要項目の、さらに一番手となる。


広島県選抜もディフェンスを軽視しているわけではないが、それよりは「もっとバスケットを楽しもう!」と、あえてオフェンス――具体的に言えばシュートにこだわりを持って、これまでチーム作りをしてきた。世の流れから逆行するかもしれないが、1つや2つ、そういったチームがあってもいい。またバスケットの初心者からすれば、シュートを決めるか否かほど、見ていてわかりやすいものはない。小田 実コーチは言う。


「けっして身体能力が高いわけではなく、身長だって低い子がたくさんいるチームです。だからシュートだけは…。この子たちを選んだときからずっと言い続けているのが、『とにかくシュートだけは、チャンスがあったら思い切って打って、勝負していこうじゃないか!』ということでした」。


自分たちの現実を受け入れ、それでも勝負に出ていく。小田コーチの言葉どおり、初戦の山梨戦は序盤からエンジン全開で勝負を挑み、結果として72得点を挙げている。2試合目の熊本戦こそ、勝てば決勝トーナメントに進める気負いか、それとも相手の勢いに気圧されたのか、シュートが決まらずに苦しい展開になったが、それでも終盤に本来の“攻め気”を取り戻したことで、勝利につなげている。59得点はいつもに比べると数字は少ないそうだが、それでも瞬間的な得点力は「攻めの広島」の面目躍如と言えよう。


その熊本戦、最後の最後でチームに勢いをつけたのが#4 柳川 幹也選手だった。広島市立井口中学校でも小田コーチの教えを受けていて、チームの中では小田コーチのバスケを誰よりも理解し、体現できるエースである。彼は昨年の「全国中学校バスケットボール大会」の予選リーグで、1試合51得点を挙げている。


「(終盤のシュートは)その直前にあったタイムアウトで、みんなから『ここは幹也しかおらん』って言われて、ボクも『ここで入れなきゃ男じゃない!』と思って自信をもって打ったら、入りました」。


「ここで入れなきゃ男じゃない」という発言がいい。51得点を取ったときとは異なり、広島県選抜はこの大会のためだけの、寄せ集めのチームである。それでも普段は敵同士のチームメイトの言葉に発奮し、結果を残すことで柳川選手はまたひとつ大きく成長したことになる。


明日からは、一発勝負となる決勝トーナメントが始まる。柳川選手は、そして広島県選抜は、どんな戦いぶり、どんな攻めっぷりを見せてくれるのか。


選手がそれぞれの成長に向かって“攻め続ける”バスケットは、見ていておもしろい。


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