パリ2024オリンピック出場を懸けたFIBA世界最終予選(OQT)が行われ、日本代表は3試合の短期決戦(スペイン、ハンガリー、カナダ)に挑むこととなった。東京2020オリンピックで銀メダルを獲得して以来、世界中から研究・対策を受ける立場となった日本だが、恩塚亨ヘッドコーチの下、攻守両面でさらなる進化を遂げ、過去の日本代表が世界大会・世界大会予選で記録した中でも最高のオフェンス効率を叩き出した。予選の全体像と、注目のポイントである「2ガードの採用」「カナダへのリベンジ」を中心に振り返る。
3試合しかないOQTの形式では、一戦ごとに結果が大きく影響する。日本は初戦から高い集中力とアグレッシブな姿勢を見せ、攻撃のリズムを維持したまま試合を進めた。恩塚HCが掲げる“カウンターバスケ”で、相手に主導権を渡さない時間帯を長く作り出すことに成功した。
2024/2/8
日本 86-75 スペイン [BOXSCORE]
2024/2/9
日本 75-81 ハンガリー [BOXSCORE]
2024/2/11
日本 86-82 カナダ [BOXSCORE]
OQTでは、ピック&ロールのハンドラーとして機能するガードを2名同時に起用する「2ガードラインナップ」が大きな特徴となった。宮崎早織と山本麻衣が同時にコートに立つ時間帯は、どちらもドライブ・パス・シュートの脅威となり、相手ディフェンスはマークを絞りきれない。攻撃の起点が複数になることでテンポが単調にならず、オフェンス効率の向上につながった。
リバウンドを奪った瞬間、どちらのガードも素早くプッシュできるため、スピードのあるバスケを最大限に活かせる。2ガードが起点を作ることで、フォワード陣やシューター陣もオープンなシュート機会を得やすくなり、結果として日本の強みである外角シュートがさらに効果的に機能した。
映像45_大会MVPの山本:キャッチ&3P - キャッチ&ドライブ
映像46_大会MVPの山本:ピック&ロール
映像47_大会ベスト5の宮崎:ピック&ロール
映像48_大会ベスト5の宮崎:トランジション
映像49_日本のシューター林
映像50_オフェンス効率をあげた2ガード起用
映像51_課題となったタフレイアップ
初戦の相手は、ヨーロッパ屈指の強豪・スペイン。アルバ・トーレンスやアストゥ・ンドゥールといった世界トップクラスのプレーヤーを擁する相手に対し、日本は宮崎早織と山本麻衣の“2ガード”を中心とした素早いオフェンスを展開。さらに髙田真希が要所でリバウンドやインサイドの得点を奪い、終盤にリードを広げて勝利を手にした。
アウェーの大声援を背に受けるハンガリーは、2メートル超えのセンター、ベルナデット・ハタールを軸にペイント内を支配。日本は馬瓜ステファニーや馬瓜エブリンが果敢に身体を当てて対抗し、外角シュートでも追い上げを図ったものの、終盤で逆転までは至らず惜敗。前半のビハインドを挽回しきれなかったことが痛手となった。
前回のFIBA女子ワールドカップで苦杯を喫したカナダ相手に、日本は高さとフィジカルに対して徹底的に対策。地元のハンガリーの応援を受けたカナダはエースであるキーア・ナースやブリジット・カールトンが攻守で存在感を示す中、日本は宮崎早織と山本麻衣によるピック&ロールと速いトランジションで相手ディフェンスを翻弄。髙田真希の得点と馬瓜姉妹のリバウンド奪取が効果的に働き、終盤の僅差を守り切って86-82でリベンジを果たした。
映像52_カナダ戦の振り返り:一進一退のゲーム展開
3試合の短期決戦で日本代表はスペイン、カナダという強豪相手に勝利し、ハンガリーとの一戦こそ惜しくも敗れたものの、全体としては過去最高水準のオフェンス効率を記録。特に宮崎早織と山本麻衣の2ガードがもたらす多彩なピック&ロール、そして髙田真希や馬瓜姉妹が繰り広げるインサイドの攻防が噛み合い、日本の強みであるスピードと連動性が最大限に発揮された大会となった。東京2020オリンピックでの銀メダルの勢いを継続しつつ、新たな進化を遂げた日本代表の戦いぶりは、パリ2024オリンピック本戦でのさらなる躍進を大いに予感させるものである。
映像53_カナダ戦の裏側とオリンピック出場を自力で獲得、そしてその後