パリへの軌跡

世界が変わったFIBA女子ワールドカップ2022

日本は脅威に値すると認識される

警戒された日本に対して、対戦国は日本が得意とする「トランジション」や「3ポイントシュート」を警戒し、対策を徹底してきた。その結果、オフェンス効率は大会全体で9位にとどまり、攻撃面で苦戦した一方、ディフェンス効率は全体4位と高く、恩塚亨ヘッドコーチの分析力と選手の能力が最大限に発揮された形となった。

東京2020オリンピックで席巻したスピードと高精度の3ポイントシュートによって銀メダルを獲得した日本代表は、FIBA女子ワールドカップでも同様の武器をベースにカウンターバスケの原理原則を導入していった。しかし、大会前から徹底的に研究されていたこともあり、対戦相手は高い位置からのプレッシャーやアウトサイドへの厳しいマークなど、“日本対策”を十分に準備していた。その結果、日本が得意とする速いトランジションや3Pシュート成功は減少し、オフェンス効率は大会全体で9位にとどまった。

従来の強みを維持しつつ、新たな攻撃オプションを十分に機能させるには時間を要する状況であった。ピック&ポップの3Pシュート成功率は33.3%、ピックプレーからスポットアップの成功率は45.5%と高い一方で、ハンドラーのフィニッシュやコンテインに対しての対応が課題として浮き彫りになった。

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映像35_オフェンス面での成果

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映像36_オフェンス面での課題が浮き彫りになったFIBA女子ワールドカップ

FIBA女子ワールドカップ2022 ロスター

No. 選手 P 身長 生年 年齢
3 馬瓜 ステファニー SF/PF 182cm 1995 23
5 安間 志織 PG 161cm 1991 28
8 髙田 真希 PF 185cm 1995 33
10 渡嘉敷 来夢 C 193cm 1999 31
14 吉田 舞衣(※) SG 175cm 1991 24
23 山本 麻衣 PG 163cm 2001 22
31 平下 愛佳 SG 177cm 1991 20
32 宮崎 早織 PG 167cm 1998 27
52 宮澤 夕貴 PF 183cm 1990 29
75 東藤 なな子 SG 175cm 1999 21
88 赤穂 ひまわり SF 184cm 1992 24
99 オコエ 桃仁花 PF 182cm 1998 23

日本平均
192.5cm
26.7

※吉田の「吉」は「土」に「口」が正式表記

ディフェンス面の成果

ディフェンス面においては、FIBA女子ワールドカップ全体で4位という高水準の結果を残した。これは恩塚亨ヘッドコーチの分析と選手の遂行力の高さが発揮された結果である。チームは試合映像や各種スタッツを細かく読み解き、相手の攻撃パターンやキープレーヤーの特徴を把握したうえで、試合ごとに最適なディフェンス戦略を構築した。ボールマンへの強いプレッシャーやパッシングレーンの制限に加え、素早いリカバリーを徹底することで、相手にノーマークのシュートを許す場面を最小限に抑えたことが大きな要因となった。

また、全員が高い意識をもってディフェンスに取り組み、ピック&ロールやドライブに対して連動性のある対応を可能にした点も評価できる。特に、相手にターンオーバーや24秒バイオレーションを誘発するディフェンスは、試合の流れをこちらに引き寄せるうえで効果的に機能した。今大会ではオフェンス効率の伸び悩みが目立ったが、オフェンスの停滞をディフェンスでカバーして接戦に持ち込む試合展開が多かったことからも、恩塚ヘッドコーチのディフェンスシステムは日本代表の基礎づくりになったと言える。ただし、ポストディフェンスの強度とピック&ロール時のコンテインディフェンスは課題として残った。今後はこのディフェンスの継続・強化するとともに、より多彩なオフェンス戦術と掛け合わせることで、試合全体の完成度をさらに高めていく必要がある。

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映像37_ディフェンスの成果

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映像38_ディフェンスの課題

試合結果

予選グループフェーズ【グループB】

2022/9/22
日本 89-56 マリ [BOXSCORE]

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2022/9/23
日本 64-69 セルビア [BOXSCORE]

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2022/9/25
日本 56-70 カナダ [BOXSCORE]

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2022/9/26
日本 53-67 フランス [BOXSCORE]

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2022/9/27
日本 54-71 オーストラリア [BOXSCORE]

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PTS POSS PPP
OFF 63.2 80.6 0.779
DEF 66.6 85.6 0.778

オフェンスPPP:0.779 ≫ 大会9位
ディフェンスPPP:0.778 ≫ 大会4位