現地レポート

初めてだからこそ――RSS

2014年03月28日 23時31分


本日開幕した「東日本大震災復興支援 第27回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2014(ジュニアオールスター2014)」。初日の今日は東京・東京体育館を中心として、神奈川、千葉、埼玉の計6会場で予選リーグの96試合が行われた。出場した全チームはこの日のために練習を重ねてきたといっても過言ではない。しかし勝負とは非常なもので、明日の決勝トーナメントに進めるのは男女各16チームのみ。残りの男女各32チームは一足先にチームを解散しなくてはならなくなった。


 



しかし敗れたとはいえ、その32チームもまた、勝ち残った16チームと同じくらいかけがえのない経験を積んだに違いない。


たとえば男子の福井県。初戦の島根県とのゲームは“トリプルオーバータイム”、つまり3度の延長戦までもつれ込むビッグゲームとなった。前半こそ福井県のペースで進んでいたのだが、終盤に追いつかれて、1度目のオーバータイムへ。そこでは追いついた島根県がペースを握ったのだが、今度は福井県が粘りを見せて、2度目のオーバータイムへと持ち込んだ。そこでも決着がつかずに、3度目のオーバータイムに進んでいる。


福井県のキャプテン#4 二上 燿選手も、島根県のキャプテン・#4 福島 洸星選手も「トリプルオーバータイムは初めて」と言う。それはそうだろう。トリプルオーバータイムなど、そうそう見られるものではないのだから。


オーバータイムでは互いに「絶対に負けない」という一心で戦っていたが、二上選手の言うとおり「リバウンドを取られたことと、シュートミスが多くなったことが敗因」となった。実際には島根県もシュートミスをしていたのだが、福島選手曰く「すごく緊張感のある3つのオーバータイムでしたが、そこで勝つには精神力や集中力などが絶対に必要になると思っていました。その点で福井県を上回ったのだと思います」


二上選手が在籍する福井市立明道中学校は、現時点で福井県1位のチームだという。二上選手は今回の敗北に悔しさを抱えつつも、次なる目標、全中(全国中学校バスケットボール大会)出場へと目を向けていた。


「自分のシュートミスが多かったので、これからは練習のときから、試合で通用するシュートの練習をしたいと思います」


ゲームは何が起こるかわからない。試合終了まで集中してシュートを決めきる精神力や集中力の必要性を、二上選手をはじめ、福井県の選手たちは学んだはずである。


 



初めてといえば、女子の奈良県のキャプテン・#4 板倉 奈々選手はジュニアオールスター2014が初めての全国大会だという。そういう選手はほかにも数多くいるだろうが、ともかく全国大会に初めて立った板倉選手が引っ張る奈良県は、埼玉県と宮城県にそれぞれ敗れて、予選リーグ敗退となった。


「埼玉県は今日の会場(さいたま市記念総合体育館)が地元ということで応援がすごかったですし、出てくる選手がみんな強かったです。宮城県はディフェンスがうまくて、でも1試合目の埼玉戦を観客席で見ているときに『宮城県は1試合目だからあれだけ動けるのだろう』と思っていたら、2試合目になる奈良県との試合でもディフェンスの足が動くし、外のシュートも入るし、やっぱり全国のチームはすごいんやなって思いました」


板倉選手の在籍する奈良市立若草中学校もまた、現時点で奈良県1位のチームだと言うが、それでも上には上がいるということを、直接その肌で知れたことは板倉選手をはじめ、奈良県の選手たちにとっては大きな財産である。


さらに板倉選手はキャプテンとして、県内ではライバルである仲間たちをまとめる難題にも今日までしっかりと取り組んできた。


「コーチに怒られて、みんなが落ち込んだときにテンションを上げるのには苦労しました。でも普段はライバルチームの子たちと一緒にいろんなことをしゃべったり、シュートが決まったときにワーッと言えたりしたのはすごく楽しかったです」


結果は残念なものだったが、試合だけではなく、そこに至るまでの約20回の練習(高校生との練習試合を含む)で得た、いろんな選手と一緒にバスケットをする楽しさは、彼女たちにとって、これからもバスケットを続けるうえでのモチベーションになるだろう。


 



初めてのトリプルオーバータイム、初めての全国大会、初めての選抜チーム――初めてだからこそ心に強く残る経験を、敗れた男女各32チームの選手たちには、今後に生かしてもらいたい。


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