FIBA 3x3は、今回のパリ2024オリンピックにおける3x3の成功を確信している。本レポートでも示した通り、今大会は前大会と比較しても若手選手の台頭が目立ち、全体的な競技レベルが上がった。また、FIBA 3x3は世界規模におけるプロモーションが展開されていったことも強調している。彼らによれば、パリ2024オリンピックにおける3x3とそのファンとのデジタル環境を通じた接点であるソーシャルチャンネルおよびデジタルチャンネルでは、1億3,200万回の視聴と1億9,500万回のインプレッションを記録し、これは東京2020オリンピックの記録を超える613%という驚異的な成長であったと報告している(FIBA公式HP参照)。FIBAはバスケを「世界一のスポーツ」へと押し上げる戦略の中で、今まさに3x3が全世界に向けて新たな選択肢として提供されている。つまり、バスケは5人制と3x3が両輪となって「世界一のスポーツ」へ飛躍を遂げるべく、新たな局面を迎えている。
世界に目を向けてみると、この3x3は目覚ましい発展とインパクトを与え続けて、世界中のファンを魅了して爆発的な革新を起こしている。当初から3x3をリードしてきた主な地域や国と言えば、欧米の国々やアジアでは中国、モンゴル、そして日本が挙げられる。しかし、FIBA 3x3はそれ以外のアジアの国々への進出、例えば、5人制で強豪国と言われてこなかった国々に戦略的な価値を見出している。それを裏付けるかのように、FIBAは3x3を世界的に発展させていくことを目的とし、新設されるFIBA 3x3チャンピオンズカップを2025年3月にタイ・バンコクで開催。また、その大会を今後5年間はタイで開催することを決めた。それに呼応するかのようにタイはもちろんのこと、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアなどといったアジアの国々では3x3の代表強化に舵を切り始め、3x3の国際大会を積極的に誘致しようとしている。このように3x3はFIBAの世界戦略の中で確実に、そして急速に動いている。
では、日本はそのFIBAの世界戦略とどのように向き合うべきか。3x3は2010年にユースオリンピックという国際的な公式イベントで初開催されてから15年目という月日を数え、3x3はもはや新しい種目と呼ぶに相応しくない段階に入っている。日本においても、多くの関係者の継続的な取り組みによる経験や知見が蓄積されてきた。オリンピックで3x3が初開催となったのは日本であり、その際の経験値は大変に貴重なものである。しかし、すでにそのオリンピックを終えた国として過去の記憶となって忘れ去られる訳にはいかず、それらの経験や知見を風化させる訳にもいかない。日本の3x3の基盤となる国内環境に関しても、大会運営を行うオーガナイザーが活動規模を広げられるような環境を整えて国内に国際大会をもっと誘致できるようにしたり、指導者養成の取り組みや選手キャリアのサポート(3x3で所得を生み出す仕組み作り)など開拓の余地はまだ残されていると思われるので継続が必要である。また、世界基準における3x3の活動の場は世界最高峰ツアー大会であるFIBA 3x3ワールドツアーやFIBA 3x3ウィメンズシリーズであり、「3x3の舞台は世界」になる。FIBA 3x3の世界戦略に対して日本独自の向き合い方(代表強化のやり方)があるにせよ、少なくとも「日本人選手が世界を転戦するための仕組み作り」は日本代表を強化し、ロサンゼルス2028オリンピック以降の大会出場およびメダル獲得のためにも絶対必要条件である。
「はじめに」でも記した通り、本レポートは世界の3x3が革新的に認知度が高まっている現状と日本の3x3におかれた現状を踏まえて、この種目の魅力や楽しさの解説、または種目の特性の説明を通して多くの人に3x3に触れてもらうことを優先することとした。技術や戦術の解釈については、様々な意見や反論や批判も含めて「あのプレーはこうだったのではないか?」という議論に願わくば繋がって欲しいと考えている。そのような議論が活発に湧き上がることで3x3の技術や戦術に関する理解が深まり、またその理解がさらに実践現場や指導現場に生かされて欲しいと願う。きっとそれが今後の日本の3x3を発展させるきっかけとして、「日本人選手が世界を転戦するための一助」となるはずである。本レポートが、FIBAの世界戦略の中で「“日本一丸”となって世界で戦っていく礎になること」を心より信じている。
最後に、本レポートをまとめるにあたり、貴重なコメントを残してくれた3x3日本代表コーチや選手各位、ならびに作成サポートをくださった関係者の皆様に心より感謝の意を表するものである。