オリンピック自力出場。どれだけの人がその可能性を信じていただろうか。
バスケに深く関わる人であればあるほど、ほぼ不可能であると感じていたに違いない。FIBAから資格停止処分を受け、全年代において国際大会へ出場ができなくなったのは2014年、わずか10年前のことである。日本バスケ界が世界的にも稀に見るスピードで進化を続けていることは、この事実だけを見ても疑う余地がない。
ついに男子日本代表は48年ぶりのオリンピック自力出場を果たした。開催国であった2021年の東京2020オリンピックから、2大会連続の出場である。間違いなく、日本バスケは熱狂の中にある。ニュースでバスケの話題を見ない日はない。テレビや雑誌の広告ではバスケ選手を頻繁に見かけるようになった。NBAを見れば日本人がプレーしている。Bリーグは毎年のように最多観客動員数を更新し、日本全国に次々と新アリーナが誕生している。高校生は毎週のようにリーグ戦を戦うことが日常になった。中学生は部活動だけではなく、どのクラブでプレーするか選択肢を持てることが当たり前になった。マンツーマンをプレーする小学生のスキルは驚くほど上がっている。全てのカテゴリーにおいてバスケを仕事にする人の数は増え続けている。
日本代表は、日本バスケ界に関わる全ての人に支えられている。
このパリ2024オリンピックテクニカルレポートは、東京2020オリンピックのレポートに続き、テクニカルハウスとして2回目の試みとなる。このレポートは大きな2つの目的を達成するために作成されている。1つは、過去の大会と比較し日本代表の”成長のプロセス”を検証すること。2つ目は様々なデータを他国と比較することで、日本代表の現在地、つまり”世界との差”を確認することである。このレポートから世界のスタンダードを知ることで、”世界で通用するプレー”とは何かが見えてくるはずである。東野技術委員長が2016年に就任して以来の想いである”日常を世界基準に”するには、まずは知るところから始まる。