大会総括/データから見る日本の立ち位置(オフェンス)

オフェンスを振り返る

世界を驚かせる3連敗

バスケは、今やオリンピックを代表する花形スポーツの1つとなっている。男女それぞれ世界トップ12チームで競い合い、全てが高いレベルでの試合となる。日本中を熱狂させた男子日本代表だが、結果だけを見れば3連敗。得失点差で最下位は免れたものの、3連敗という事実は変わらない。

一方で、準優勝したフランスに対して4Q残り10秒までリードし、勝利目前まで追い詰めた。世界ランク12位のブラジルに対しても、4Q7:30で2点差に追いつき、そこまでは互角に戦えることを証明した。3連敗という事実は受け入れつつも、間違いなく日本バスケが進化していることを世界に見せつけた。

2023、2024と世界を驚かせてきた(Shock the world)日本代表の現在地はいったいどこなのか? この章では、FIBAワールドカップ2023とパリ2024オリンピックのデータや映像を使いながら、様々な角度から世界との差を検証していく。日本の強み、成長しなければいけない弱みを明確にしていく機会としたい。

オフェンスデータから見る大会全般

1回のオフェンスで何点取っているかを表すPoint Per Possession(PPP)は、チームのオフェンス力を評価する上で、最も使われるシンプルな指標である。 日本はPPP 0.929で7位と大健闘し、世界のトップチームを相手にも得点できることを証明した。しかしながら、FIBAワールドカップ2023では0.965(32チーム中14位)だったオフェンスから数字は下降し、0.929で7位だった。相手ディフェンスのレベルも上がっていることを考えると大健闘したと言える。また、アメリカの1.161というPPPがどれだけ驚異的なのかも感じることができるランキングだ。アメリカは100回の攻撃で116点を取るということになる。

FIBAワールドカップ2023では、PPPが1.000を超えたチームは32チーム中10チーム。その10チーム中9チームが最終順位でトップ10となった。パリ2024オリンピックでもオフェンスPPP上位6チームが大会5位以内におり、これまでの様々な国際大会を見ても、オフェンスPPPはディフェンスPPPよりも大会最終成績と相関関係にあることが多い。

“バスケはディフェンスから”という格言が間違いということでは決してないが、世界レベルの大会においてはオフェンスで優位に立てなければ、これ以上の結果を望むことが難しいというメッセージかもしれない。

OFFENSE PPP RANK

順位 チーム PPP 平均得点 POSS 最終順位
1 アメリカ 1.161 104.5 90.0 1
2 セルビア 1.044 94.0 90.0 3
3 ドイツ 1.023 82.5 80.7 4
4 カナダ 0.974 84.5 86.8 5
5 スペイン 0.965 83.0 86.0 10
6 フランス 0.953 80.5 84.5 2
7 日本 0.929 83.0 89.3 11
8 ギリシャ 0.927 73.3 79.0 8
9 オーストラリア 0.910 83.3 92.0 6
10 ブラジル 0.907 80.5 88.8 7
11 南スーダン 0.906 87.0 96.0 9
12 プエルトリコ 0.792 76.0 91.7 12

平均得点とポゼッション

ホーバスジャパンのわずか3年間で日本代表のオフェンスは大きく進化した。オフェンスのPPP(Point Per Possession)だけではなく、平均得点を見てもそれは明らかである。わずか平均66.6点しか取れなかったFIBAワールドカップ2019から、日本は世界相手にも80点以上の得点をコンスタントに取れるようになった。

オフェンスPPPを上げるには様々な要因があるが、最も影響力が大きい2つは「①期待値の高いシュートを打つこと」「②シュートの回数を増やすこと」である。POSS数においても日本は、FIBAワールドカップ2019、東京2020オリンピックよりもおよそ3回増やしている。このPOSS数を増やすことは、ホーバスジャパンの改革の1つのキーワードである。

SCORE / POSS / PPP
(パリ2024オリンピック)

対戦相手 Pts POSS PPP
ドイツ戦 77 89 0.865
フランス戦 90 91 0.989
ブラジル戦 84 88 0.932
パリ2024
オリンピック
83.6 89.3 0.929
FIBAワールドカップ
2023
82.8 85.8 0.965
東京2020
オリンピック
77.3 86.3 0.896
FIBAワールドカップ
2019
66.6 83.4 0.799