3年間の軌跡

台風の目となったFIBAワールドカップ2023

インドネシア、フィリピン、日本の3カ国開催となったFIBAワールドカップ2023、日本のグループラウンドはホームである沖縄で行われた。目標はただ1つ、パリ2024オリンピックの出場権を獲得すること。そのためには大会の中でアジアNo.1になることが条件だった。4チームのグループが8個、32チームで開催されるFIBAワールドカップ。グループ内の上位2チームが決勝トーナメントへ進むだけではなく、下位2チームも17〜32位までを決める下位グループが続き、最後までオリンピック出場権を争う。ファーストラウンドグループの勝敗も、次のグループに持ち込されるため、消化試合はひとつもない。日本(36位)は世界ランク上位の強豪ドイツ(11位)、オーストラリア(3位)、フィンランド(24位)と同じ“死のグループ”となった。

日本が1番準備をしてきた初戦のドイツ戦。63-81と敗れたものの、後半だけを見れば32-28と日本が上回り、当時ヨーロッパ3位だったドイツにも互角に戦えることを証明し、大きな自信を掴んだ。そして、歴史を変えたフィンランド戦を迎えた。フィンランドも前年のユーロバスケットではNBAスターのマルカネンを擁し、大躍進の7位。FIBAランキングでも日本を大きく上回っていた。前半を36-46と厳しい状況で終えた日本は、3Q残り2:46には53-71とこの試合最大の18点のビハインドを背負った。しかし、馬場の3ptで10点差まで再び迫り、運命の第4Qを迎えた。そしてついに、河村勇輝が覚醒する。4Qだけで3pt4本を含む15得点と大爆発し、最終的に98-88と大逆転勝利となった。日本代表としては、FIBAワールドカップでヨーロッパのチームから挙げた初勝利。わずか18分の出場で17点を挙げた富永、28点19リバウンドを獲得したホーキンソンの大活躍も勝利に大きく貢献した。

勝てばグループ2位が決まる3戦目は、東京オリンピックで銅メダルを獲得し、8人のNBA選手を擁するオーストラリア戦。日本はこの日も全力のエネルギーでプレーし、ホーキンソン33得点、渡邊も24点を挙げるも20点差で完敗した。しかしながら、疲れが溜まってきていたこの日も最後まで全力で戦い、後半は54-52と勝ち越すことに成功し、さらなる自信をつける試合となった。

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映像25_FIBAワールドカップ2023_自信をつけたドイツ戦_渡邊が20点

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映像26_FIBAワールドカップ2023_フィンランドに勝利_覚醒した河村

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映像27_FIBAワールドカップ2023_オーストラリア戦_ホーキンソンの大活躍

FIBAワールドカップ2023 日本代表 試合スコア

2023/8/25[グループフェーズ]
日本 63-81 ドイツ [BOXSCORE]

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2023/8/27[グループフェーズ]
日本 98-88 フィンランド [BOXSCORE]

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2023/8/29[グループフェーズ]
日本 89-109 オーストラリア [BOXSCORE]

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FIBAワールドカップ2023
1st Round[グループE]

順位 チーム 勝率 勝ち点
1 ドイツ 3 0 100.0 6
2 オーストラリア 2 1 66.7 5
3 日本 1 2 33.3 4
4 フィンランド 0 3 0.0 3

グループEを3位で終えた日本は、グループFの下位2チームと同組となり、ベネズエラ、カーボベルデと戦うこととなったが、フィンランド戦の1勝は持ち越される。他のグループを戦うアジア勢のフィリピン、中国、イラン、レバノン、ヨルダンはまだ勝利がなく、日本は有利な状況にあった。

初戦のベネズエラはグループFで未勝利だったが、それでもFIBAランクは17位。36位の日本よりは遥かに格上。ベテランと若手選手が融合したシューティングチームであった。大会の疲れからか動きの重い日本は、前半を36-41の5点ビハインドで折り返す。3Q開始に44-45と1点差まで詰め寄るものの、比江島が3つ目のファウルでベンチに下がると、そこから少しづつ離され、53-62の9点差で第4Qを迎えた。4Qに入っても流れを掴めず、残り8:08にはこの日最大の15点のリードを許す。しかし、ここから比江島が爆発し、3ptを連発。チーム最年長のベテランは、残り1:55ファーストブレイクを走り切り、逆転となるバスケットカウントを決めた。比江島は4Qだけで17点。日本は4Qに33-15と躍動し、格上相手に大逆転勝利を挙げた。

運命の9月2日、カーボベルデ戦。日本は2勝を挙げていたが中国、レバノンが1勝ずつしていたため、この日の試合で勝利すると日本に並ぶ可能性があった。逆に言えば、日本がカーボベルデに勝ち、3勝目を挙げるとパリ2024オリンピック出場が確定する。カーボベルデは220cmの元NBAのタバレスを中心としたインサイドチーム。インサイドのディフェンスをどこまで遂行できるかが勝負の鍵であった。プレータイムの長い、渡邊とホーキンソンに疲れが見える中、若い富永が大爆発し、前半から4本の3ptを決める。3Q残り2:00には6本目の3ptを沈め、日本は73-53と大量リード。18点リードで第4Qを迎えた。守りに入りアグレッシブさを失った日本は、残り1:12で3点差まで迫られる。ここからホーキンソンのスコアで逃げ切りに成功。大黒柱のホーキンソンと渡邊は40分フル出場。富永は18分で22点を挙げた。80-71で3勝目を挙げ、48年ぶりに悲願のオリンピック自力出場を果たした。

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映像28_FIBAワールドカップ2023_ベネズエラ戦でチームを救った比江島

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映像29_FIBAワールドカップ2023_カーボベルデ戦で大活躍した富永_パリ五輪出場決定

FIBAワールドカップ2023 日本代表 試合スコア

2023/8/31[17-32位決定戦]
日本 86-77 ベネズエラ [BOXSCORE]

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2023/9/2[17-32位決定戦]
日本 80-71 カーボベルデ [BOXSCORE]

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FIBAワールドカップ2023
17-32決定戦[グループO]

順位 チーム 勝率 勝ち点
1 日本 3 2 60.0 8
2 フィンランド 2 3 40.0 7
3 カーボベルデ 1 4 20.0 6
4 ベネズエラ 0 5 0.0 5

後半のスコアから見える日本の粘り

フィンランド戦、ベネズエラ戦は、日本の脅威的な粘りが奇跡の逆転勝利を生んだ。しかし、結果的に18点差で敗れたドイツ戦、20点差で敗れたオーストラリア戦も、後半のスコアだけは世界トップレベルを相手に上回ることができた。特に優勝国のドイツ相手に後半だけとはいえ、勝利できたことはチームの大きな自信となった。得失点差を常に意識しなければならないFIBAワールドカップにおいては、全てのポゼッションに勝負がかかっていることは言うまでもない。しかしながら、「40分間日本のバスケットボールをやり抜く」マインドセットは、確実に日本代表チームのDNAとして全選手、スタッフに浸透している。

2nd Half TOTAL


日本の得点 相手の得点
ドイツ戦 32 28
フィンランド戦 62 42
オーストラリア戦 54 52
ベネズエラ戦 50 36
カーボベルデ戦 30 34
合計 228 192
平均 45.6 38.4

赤字が後半に日本が上回ったゲーム。