ホーバスジャパンが3年間で改革してきたことの1つは、ファーストブレイクであることはすでに述べた。このパリ2024オリンピックにおいても、全オフェンスポゼッションにおける、FB%(ファーストブレイクの割合)は16.8%で大会4位であった。
ただし、PPPで見ると1.022で9位と決して満足できる数字ではない。とはいえ、ハーフコートのオフェンスに比べると、ファーストブレイクは日本にとっては効率の良いオフェンスであることは改めて確認できる。
順位 | チーム | FB%Time | PPP | Ave PT | 3FG% | 3pt M |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | アメリカ | 20.9% | 1.301 | 24.5 | 46.3% | 3.2 |
2 | 南スーダン | 18.8% | 1.056 | 19.0 | 42.1% | 2.7 |
3 | オーストラリア | 17.1% | 1.063 | 16.8 | 47.4% | 2.3 |
4 | 日本 | 16.8% | 1.022 | 15.3 | 45.5% | 3.3 |
5 | プエルトリコ | 16.7% | 0.771 | 12.3 | 8.3% | 0.3 |
6 | セルビア | 16.1% | 1.218 | 17.7 | 45.5% | 1.7 |
7 | カナダ | 15.9% | 1.018 | 14.0 | 16.7% | 0.5 |
8 | ブラジル | 15.2% | 1.093 | 14.8 | 50.0% | 1.8 |
9 | ギリシャ | 13.3% | 1.310 | 13.8 | 42.9% | 0.8 |
10 | フランス | 11.4% | 0.966 | 9.3 | 36.4% | 1.3 |
11 | ドイツ | 10.7% | 1.038 | 9.0 | 21.1% | 0.7 |
12 | スペイン | 8.9% | 1.435 | 11.0 | 55.6% | 1.7 |
3ptを大事にしている日本にとって、ファーストブレイクは3ptをオープンで打てるチャンスが大きい場面である。アウトサイドシュートは試合によって波があり、ブラジル戦は1/8で全体の数字を下げてしまった。一方、ドイツ戦、フランス戦は世界レベルの相手に対して20点近くをファーストブレイクでスコアした。東京2020オリンピックに比べて微減しているファーストブレイクの得点だが、ディフェンスで相手を止められなかったことも影響している。それはディフェンスの章で後述することとする。
ファーストブレイクで1番大事なのは、当然ながら「走る」ことである。特にボールを取ってから「最初の5歩」のスピードが大切だ。特にホーキンソンの走り出しは、地味ながら全ての選手のお手本になる。
また、日本のファーストブレイクの武器は5人全員がボールプッシュできることである。PGの河村、富樫がボールプッシュを得意としていることは言うまでもないが、ウィングの比江島、吉井、馬場もボールプッシュができる。さらには、ビッグマンであるホーキンソン、八村、渡邊もボールをプッシュできる力があることが、相手チームの脅威になっている。
ビッグマンが直接ボールを運べることは、PGへのアウトレットパスによる時間のロスをなくし、より速い展開でバスケをするために、今後も日本代表に欠かせない要素になるだろう。
映像60_FB_最初の5歩
映像61_FB_全員がボールを運ぶことができる
FB % | FB Pts | FB PPP | 3pt% | |
---|---|---|---|---|
ドイツ戦 | 15.7% | 18 | 1.286 | 57.1% (4/7) |
フランス戦 | 12.1% | 19 | 1.727 | 71.4% (5/7) |
ブラジル戦 | 22.7% | 9 | 0.450 | 12.5% (1/8) |
パリ2024 オリンピック |
16.8% | 15.3 | 1.022 | 45.5% (3.3/7.3) |
FIBAワールドカップ 2023 |
20.0% | 21.6 | 1.256 | 36.4% (1.6/4.4) |
東京2020 オリンピック |
18.1% | 17.3 | 1.106 | 44.4% (1.3/3.0)) |
FIBAワールドカップ 2019 |
17.5% | 15.0 | 1.027 | 30.8% (0.8/2.6) |
ファーストブレイクを、TOからアフターTO(ATO)、ディフェンスリバウンドからアフターディフェンスリバウンド(ADR)、メイクからインバウンド(INB)に分けると、FIBAワールドカップ2023と比べATOとADRは減っている。これは後に述べるディフェンスと関係しており、より多くスコアされ、またTOを奪うこともできず、実質的なリバウンドの数、相手のライブTOの数が減っていることが原因の1つである可能性が高い。ただ、一方で相手にスコアされた後、(アフターメイク/AM)の数字は大きく伸びており、日本のトランジションは相手のオフェンスが成功するか否かに関わらず、相手の脅威になり続けたと言える。
映像62_FB_アフターメイクからのインバウンド
映像63_FBからペイントタッチ
ファーストブレイクのきっかけ分析
大会 | アフター TO (ATO) |
アフター DR (ADR) |
アフター メイク (AM) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
POSS | Pts | PPP | POSS | Pts | PPP | POSS | Pts | PPP | |
FIBAワールドカップ 2023 |
4.4 | 6 | 1.36 | 9.2 | 11.2 | 1.22 | 1.6 | 2.4 | 1.50 |
パリ2024 オリンピック |
1.7 | 1 | 0.60 | 6.3 | 9.7 | 1.53 | 4.6 | 4.0 | 0.86 |