大会総括/データから見る日本の立ち位置(オフェンス)

オフェンスを振り返る

3ポイント

FIBAワールドカップ2023では決め切ることができなかった3ptだったが、ついに日本のシュート力が発揮された。大会3試合を通しての39.3%は3位であった。ステフ・カリーを擁するアメリカは異次元の46.1%で段違いの実力を見せつけたが、日本の39.1%は、銀メダルを獲得した東京2020オリンピックの女子日本代表の確率(38.4%)をも上回る。また、平均アテンプト(試投)数は37.3本で第1位(A順位)だった。

日本の強みはコートにいるほぼ全員が3ptを武器にできることである。特に今大会はビッグマンの3ptの貢献が大きく、チーム全体で決めた44本のうち、ホーキンソン、渡邊、八村の3人が21本を沈めた。

順位 チーム G 3FG% M A A順位
1 アメリカ 6 46.1% 14.8 32.2 4
2 ブラジル 4 41.1% 11.5 28.0 10
3 日本 3 39.3% 14.7 37.3 1
3 オーストラリア 4 39.2% 9.5 24.3 11
5 南スーダン 3 38.0% 11.7 30.7 5
6 スペイン 3 35.6% 12.3 34.7 2
7 ドイツ 6 35.3% 10.8 30.7 6
8 セルビア 6 35.1% 10.0 28.5 8
9 フランス 6 32.7% 9.3 28.5 9
10 プエルトリコ 3 31.7% 10.7 33.7 3
11 カナダ 4 31.5% 7.0 22.3 12
12 ギリシャ 4 29.8% 9.0 30.3 7

アウトサイド陣 3pt
(パリ2024オリンピック)

選手 3FGM 3FGA 3pt%
#5 河村 13 32 41.0%
#2 富樫 3 9 33.3%
#18 馬場 3 5 60.0%
#91 吉井 3 3 100%
#6 比江島 1 8 12.5%
G/F TOTAL 23 62 37.1%

ビッグマン 3pt
(パリ2024オリンピック)

選手 3FGM 3FGA 3pt%
#12渡邊 7 20 35.0%
#24 ホーキンソン 9 12 75.0%
#8 八村 5 14 35.7%
#4 ジェイコブス 0 3 0%
G/F TOTAL 21 50 42%
TEAM TOTAL 44 112 39.2%

3pt Analysis
(パリ2024オリンピック)


3FGM 3FGA 3pt%
ドイツ戦 12 34 35.3%
フランス戦 16 37 43.2%
ブラジル戦 16 41 39.0%
TOTAL 44 112 39.3%

ディープ 3ptの価値

長い距離の3ptが日本のサイズ面でのディスアドバンテージを補った?

パリ2024オリンピックで日本の3pt%が上位となった理由の1つがディープ3ptである。表は、エリアによってのFGA数を、日本と他国の平均で比較したものだ。2m以下(いわゆるアラウンドリムエリア)では、明らかに日本は他国よりもシュート数が少ない。しかし、8mを超えたエリアでは、日本は他国に比べて多くシュートを放っていることが分かる。

また、距離別での3pt%を比較すると、7.75m〜8.75mの距離では日本は他国に比べて大幅に3pt%が高い。FIBAの3ptは6.75mなので、3ptラインよりも1m以上離れた場所からのシュートで大きくアドバンテージが取れていることになる。

世界レベルのバスケでは、2番・3番ポジションのウィング選手でも205cmを超えてくるような選手が存在する。そんな選手にマッチアップされた190〜195cmの同ポジションの日本のウィング選手が3ptラインのギリギリにポジションしていた場合、リングが見えないほどの相手の大きさを感じるはずである。例え3ptを打てたとしてもコンテストされ、相当なタフショットになってしまう可能性が高い。

日本はパリ2024オリンピックで8.25mを超える距離の3ptを8/22(36.4%)という確率で沈めた。5試合で12本しか試投がなかったFIBAワールドカップ2023に比べると、倍以上のディープ3ptを打っていたことになる。距離を伸ばすことでサイズ面での不利さを埋め、よりオープンで3ptを打つチャンスを増やしたことが、結果的に3pt%の向上に繋がったと言って良いだろう。

▶ 動画を見る

映像64_ディープ3pの考察

シュートレンジを伸ばした河村

日本が放った22本の8.25mを超える3ptのうち、12本を占めるのが河村である。結果的に河村は3試合で5/12(41.7%)という高い確率でディープ3ptを沈めた。しかし、FIBAワールドカップ2023で河村が放ったディープ3ptは5試合の中でわずか1本だけだった。この事実だけを見ても、河村がわずか1年の間に大きく進化していることが分かる。大会3位となる20.3ptを記録し世界中から注目される選手となった背景には、課題を明確にし、それを克服する成長力が隠されている。

▶ 動画を見る

映像65_ディープ3pt_河村のディープ3pt

8.25m以上の3pt


FGM/FGA 確率
パリ2024オリンピック 8/22
(3試合)
36.4%
FIBAワールドカップ2023 3/12
(5試合)
25.0%