大会総括/データから見る日本の立ち位置(ディフェンス)

ディフェンスを振り返る

TRANSITION DEFENSE

OFFENSE REBOUND

トランジションディフェンスの数字に触れる前に、オフェンスリバウンドについて触れねばならない。日本が採用しているタグアップシステムは、オフェンスリバウンドを増やすことも目的だが、より高い位置で相手をピックアップし、トランジションディフェンスを向上させることを目的としている。しかしながら、当然システムはスカウティングされ、開幕前のドイツ、セルビアとの強化試合では、タグアップを逆手にとったリークアウト(ボックスアウトをせずに走り出す)から多くのファーストブレイク得点を与えてしまった。それぞれの試合で27点づつという大量失点である。これはFIBAワールドカップ2023の平均13点の倍以上の数字である。その多くは、本来守りやすいはずの、相手のディフェンスリバウンドからのものであった。

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映像95_タグアップ_リークアウト_vsセルビア(強化試合)

5人全員がオフェンスリバウンドに行きつつ相手選手にマッチアップするタグアップシステムは継続的に行なってきたが、数字を見ると日本のオフェンスリバウンドは脅威になっているとは言えない。本来、オフェンスリバウンドが強いチームに対しては、どのチームもしっかりボックスアウトをしたいものである。つまり、日本のオフェンスリバウンドの弱さが、リークアウトを有効な戦術にしてしまった可能性がある。さらには、日本のガードは圧倒的に小さく、例えばPG(1番)対SF(3番)程度のミスマッチでもインサイドでは1対1で守りきることが難しく、タグアップで5人がリバウンドに行ってしまうことで、ミスマッチを解消するためのスイッチバックが難しいというトラブルも起きた。

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映像96_マッチアップ問題_1番vs3番でもミスマッチ

結果的に日本は、オフェンスリバウンドに3人が飛び込み(タグアップのコンセプトは変わらない)、2人はセーフティをしながらマッチアップコントロールをするというコンセプトに変更した。オフェンスリバウンドは当然増やすことができなかった。一方で、この勇気のある大会直前の変更が、大きな成果を生むこととなった。

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映像97_タグアップ_3人でもしつこくやり続ける

相手の平均FBポイントは11.7点と大会3番目に低い数字となった。相手のFB%は11.7%で、これは大会2位の素晴らしい数字である。

高いレベルのトランジションディフェンスの遂行に繋がったのは、以下の3つの理由が考えられる。

  1. TOが大会で1番少なく、アウトナンバーのオフェンスを与えなかったこと
  2. タグアップシステムの変更で、リークアウトを許さなかったこと
  3. タグアップシステムの変更で、マッチアップコントロールができたこと

OFFENSE PPP RANK

順位 チーム ORB% ORB POSS
1 スペイン 33.9% 12.7 86.0
2 南スーダン 33.8% 15.0 96.0
3 ブラジル 32.8% 12.5 88.8
4 ドイツ 31.3% 10.5 80.7
5 フランス 31.3% 11.2 84.5
6 オーストラリア 30.0% 11.3 92.0
7 セルビア 29.8% 10.5 90.0
8 カナダ 27.4% 9.8 86.8
9 アメリカ 26.7% 9.0 90.0
10 日本 26.3% 11.7 89.3
11 プエルトリコ 25.0% 12.3 91.7
12 ギリシャ 24.1% 8.8 79.0

TRANSITION DEF Ave Pts RANKING

順位 チーム %Time PPP Ave PTS
1 カナダ 10.1% 1.086 9.5
2 ドイツ 13.1% 1.032 10.8
3 日本 11.7% 1.129 11.7
4 ブラジル 17.7% 0.869 13.3
5 フランス 12.0% 1.443 14.7
6 ギリシャ 15.5% 1.157 14.8
7 スペイン 14.0% 1.314 15.3
8 オーストラリア 12.0% 1.386 15.3
9 セルビア 19.3% 0.971 16.5
10 アメリカ 17.3% 1.041 17.0
11 南スーダン 18.5% 1.240 20.7
12 プエルトリコ 21.1% 1.032 21.7