大会総括/データから見る日本の立ち位置(ディフェンス)

ディフェンスを振り返る

ディフェンス力の考察

チームディフェンスのデータが優れているチームを分析してみると、チームによって全く違った特徴があることが見えてくる。ここでは、どんな要素がチームディフェンスの良し悪しに影響を与えやすいかを、テクニカルハウスの視点から検証する。

リムプロテクターの存在

圧倒的なサイズと機動力を持っているビッグマンの影響は大きい。アメリカはアデバヨやデイビス、フランスはウェンバンヤマとゴベア、ギリシャのアデトクンポなどを擁するチームは、明らかなアドバンテージがある。彼らがいるだけで並の選手ではペイントでスコアできない。このレベルのリムプロテクターには及ばないかもしれないが、日本もホーキンソン、渡邊の存在によってディフェンス力が明らかに向上した。

サイズとフィジカル、ディープなロスター

平均的な選手のサイズ、フィジカルのレベルが高く、ディフェンスへのマインドが高い選手がロスターに多いことが、チームディフェンスにおける重要なファクターなのは間違いない。例えば、ドイツ、セルビアにはサイズ、フィジカルを兼ね備えた選手が多く、10人ほどでプレータイムを分散することもできるため、40分を通してタフなディフェンスができる。日本はフィジカルのレベルでは世界との差をどんどん縮めているものの、まだまだ一部の選手にプレータイムが偏ってしまうのが現状である。また、このレベルの戦いではフィジカルに守れることがスタートラインであり、フィジカルに守ることができても、さらに高いレベルのフィジカルなオフェンスに、簡単なスコアやリバウンドを許してしまうのが現実だ。

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映像103_オフボールでのフィジカルなディフェンス

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映像104_フィジカルなオンボールディフェンス_ボディアップ

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映像105_フィジカルなオンボールディフェンス_ボディアップ_さらに上のレベルのフィジカル

アウトサイドのスペシャルディフェンダーの存在

近年は、ディフェンスのスペシャリストをロスターに置いているチームが多い。FIBAワールドカップ2023は、ボンガがドイツ優勝の立役者になった。今大会の注目はセルビアのPG、アブラモビッチである。アブラモビッチは常に相手のスコアラーにマッチアップし、あのシュルーダーでさえミスを連発するほどの存在感を放った。アメリカはガードであれば誰でも守れるNBA屈指のディフェンダー、ジュルー・ホリデーをロスターに置いている。オーストラリアもベテランPG、デラベドバをディフェンス要員として代表復帰させた。デラベドバは本来ゲームフィニッシャーではないが、準々決勝のセルビア戦では最後の32秒のディフェンスを任される大役を果たしている。日本代表の中では今大会は吉井がこの役割をこなし、ドイツ戦はシュルーダーに、フランス戦はフォーニエに、またスイッチしてもレソートやゴベアにでさえ簡単に攻めさせないフィジカルなディフェンスが何度もチームを救った。こういった選手の存在は試合の流れを変えるだけではなく、チームの中にいる”得点力はあるがディフェンスが苦手な選手”をプレーさせやすくする。

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映像106_ディフェンスのスペシャリストの存在_ボンガ(GER)

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映像107_ディフェンスのスペシャリストの存在_アブラモビッチ(SRB)

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映像108_ディフェンスのスペシャリストの存在_デラベドバ(AUS)

カルチャー

高いインテンシティや正しいポジショニングは”トレーニング”や”経験”、”習慣”、”規律"によって作られる。そして、現代バスケではPNRディフェンス、トランジションディフェンスにおいて、一つひとつのポゼッションで高い”コミュニケーション能力”が求められる。そして、それを40分間やり続けるためには”カルチャー”が必要である。ドイツには圧倒的なリムプロテクターはいないが、この”カルチャー”が高いレベルのディフェンス力を支えている。