大会総括/データから見る日本の立ち位置(ピック&ロール)

ピック&ロール オフェンス

ハンドラースキル

ビッグマン同様に、ガードのPNRスキルを語る時、スクリーン後の判断やショットへの持ち込み方に注目が集まりやすい。しかし、ここではハンドラーがスクリーンを使う前にどんな準備(セットアップ)をし、よりPNRを強力なものにしているかに注目したい。

リジェクトとセットアップの関係性

  • 上手いボールハンドラーはいつでもリジェクトを狙ってる。通常、ハンドラーディフェンスはスクリーンを意識するため、リジェクトを守ることは難しい。それを利用して1on1でシンプルにチャンスを作っている。
  • リジェクトが守られても、それはハンドラーディフェンスのバランスを崩させ、ワンアーム程度の距離へコントロールすることで、スクリーンをヒットしやすくしている。(スクリーナーのスキルが必要なのはすでに述べた通り)
  • リジェクトすることで、本来PNRをプレーしたいエリア(周りの選手との良いスペーシング)をコントロールする狙いもある。

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映像80_世界トップのガードスキル_リジェクト&セットアップ

プルアップ 2ptを打たせることはベストシナリオなのか?

世界レベルの大会では、コンテインがメジャーなディフェンスの1つであることはすでに述べた。日本も例外ではなく、コンテインディフェンスを採用し、2on2を対象となる2人だけでできるだけ解決し、期待値の低いプルアップ2ptを打たせることをベストシナリオの1つとしている。データを見ても、日本は相手に最もプルアップ2ptを打たせているチームになっている。それは求めているシナリオ通りだ。一方で、確率を見ると50%という高い確率で決められてしまっている。求めているシナリオ通りとは言え、ここで生まれる3試合合計での26点(1試合平均8.7点)は大きい。

打たれた26本のプルアップ2ptを見てみると、そのうち21本がPNRのコンテインディフェンスに対して、エルボーあたりの距離からハンドラーに打たれたプルアップであった。その21本のうち12本を決められている。そのFG%は57.1%で、これは日本が許したアラウンドリムのFG%よりも高い数字だ。当然、相手のメインハンドラーがシュートを打つことがほとんどだ。ドイツであればシュルーダー、フランスはフォーニエやデ・コロ、ブラジルであれば全てPGのウエルタスがショットしている。彼らはいとも簡単にプルアップ2ptを決めることができる。チームルール通り、横から、後ろからコンテストできているショットもあるが、日本のガードは小さく、まるでプレッシャーを感じていないようであった。

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映像81_ガードスキル_世界レベルのガード_日本が決められたプルアップ2pt

OPPONENT 2pt プルアップショット

順位 チーム 2FGM 2FGA 2FG%
1 日本 4.3 8.7 50.0%
2 セルビア 3.5 8.5 41.2%
3 アメリカ 2.5 7.2 34.9%
4 プエルトリコ 4.0 7.0 57.1%
5 ギリシャ 2.5 6.8 37.0%
6 オーストラリア 2.3 6.5 34.6%

プルアップ2ptの価値は見直されている?

今度はオフェンス側のプルアップ2ptに注目したい(ただし、PNRハンドラーのプルアップ2pt以外も含まれている)。この数字だけ見ると、50%を超えるのは2チームだけでいずれも打っている本数自体が少ないことが分かる。しかし、アメリカ、カナダ、ブラジルのように、プルアップ2ptを積極的に打ち、40%台と悪くない確率で決めているチームもある。

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映像82_ガードスキル_プルアップ2ptの価値は見直されている?

2pt プルアップショット

順位 チーム 2FGM 2FGA 2FG%
1 ギリシャ 1.8 3.3 53.8%
2 セルビア 2.3 4.5 51.9%
3 アメリカ 3.7 7.8 46.8%
4 スペイン 1.3 3.0 44.4%
5 カナダ 5.0 11.3 44.4%
6 ブラジル 3.3 7.8 41.9%
11 日本 2.0 8.0 25.0%

メインハンドラーにとって、プルアップ2ptは必須スキル?

個人の2ptプルアップショットのFG%ランキング(ミニマムを1試合1.5FGAとしている)を見ると、プルアップ2ptを積極的に打つスペシャルな選手が存在することは明らかである。セルビアのミチッチ、ブラジルのウエルタスはPGとしてPNRを有効に使うスペシャリストだ。コンテインディフェンスに対してのエルボープルアップ2ptは、世界レベルではイージーレイアップのように決め切っていかなければいけないショットだと言えるだろう。

ランクされているKDことデュラント、SGAことギルジャス=アレキサンダーはまた少しタイプが違う。彼らはPNRよりも1オン1中心の選手であるが、このプルアップ2ptが高確率で決めることが出来るゆえに、世界で最も守るのが難しい選手なのである。

2pt プルアップショット

順位 選手 チーム 2FGM 2FGA 2FG%
1 Micic セルビア 1.3 2.0 66.7%
2 Durant アメリカ 1.5 2.5 60.0%
3 Huertas ブラジル 2.5 4.5 55.6%
4 Gilgeous-Alexander カナダ 2.5 5.0 50.0%
5 Brooks カナダ 1.0 2.0 50.0%
6 Bogdan セルビア 0.8 1.8 42.9%
7 Murray カナダ 0.8 1.8 42.9%
8 Jones 南スーダン 2.0 5.0 40.0%
9 Mills オーストラリア 1.8 4.8 36.5%

PICK&ROLL %TIME RANK (Paris 2024 Paris)

順位 チーム PNR ALL HANDLER PASS OUT SCREENER SPOT OFFENSE 大会順位
%Time PPP %Time PPP %Time PPP %Time PPP %Time PPP RANK PPP
1 スペイン 41.1% 0.962 19.8% 0.686 27.1% 0.957 5.8% 1.133 30.6% 1.051 5 0.965 10
2 オーストラリア 36.4% 0.813 21.5% 0.684 19.6% 0.764 7.1% 0.962 16.8% 0.887 9 0.910 6
3 ドイツ 34.5% 1.138 15.9% 0.974 21.1% 1.127 6.8% 1.182 25.0% 1.157 3 1.023 4
4 日本 33.2% 0.865 17.9% 0.833 16.8% 0.822 6.3% 1.118 21.6% 0.828 7 0.929 11
5 ブラジル 33.0% 1.034 18.0% 0.922 18.9% 0.925 5.1% 1.278 20.3% 0.917 10 0.907 7
6 ギリシャ 32.0% 0.802 12.3% 0.667 21.8% 0.797 5.1% 1.125 36.7% 0.819 8 0.927 8
7 プエルトリコ 31.3% 0.733 16.7% 0.750 16.7% 0.625 4.2% 0.667 19.8% 1.053 12 0.792 12
8 フランス 29.4% 0.973 15.8% 0.838 15.6% 0.987 6.1% 1.032 18.3% 1.194 6 0.953 2
9 セルビア 27.6% 1.054 15.4% 1.060 14.1% 0.921 5.2% 0.964 22.6% 1.066 2 1.044 3
10 南スーダン 26.7% 0.870 13.5% 0.821 13.9% 0.875 3.1% 0.556 25.0% 1.014 11 0.906 9
11 アメリカ 21.3% 1.052 9.6% 1.058 14.1% 0.868 5.6% 1.133 22.4% 1.149 1 1.161 1
12 カナダ 21.0% 0.863 11.8% 0.756 11.2% 0.821 4.3% 1.067 24.8% 1.058 4 0.974 5