世界のスタンダードから学ぶ

ドイツのディフェンス遂行力

ドイツのバスケットボールは、NBA選手が増えているそのタレント力、サイズもさることながら、洗練された規律と、一貫して遂行し続けるカルチャーを、オフェンス、ディフェンス両面で兼ね備えている。戦術的に他のチームと比べて違った特徴があるわけではなく、ただただファンダメンタルを追求する泥臭いスタイルである。残念ながら今大会はメダルを逃したものの、ディフェンス面の強固さは際立っており、PPPで大会2位、平均失点74.3点はではアメリカを上回り、全てのチームを圧倒した。

この章では、ドイツのチームディフェンスと、インディビジュアル(個人の)ディフェンスを深掘りし、日本バスケの学びに変えていきたい。

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ドイツ vs ギリシャ

DEFENSE PPP RANK

順位 チーム PPP AVE POSS
1 アメリカ 0.915 86.5 94.5
2 ドイツ 0.929 74.3 80.0
3 フランス 0.937 79.5 84.8
4 オーストラリア 0.938 86.3 92.0
5 カナダ 0.945 82.3 87.0

ドイツ代表のチームディフェンス

基本に忠実なトランジションディフェンス

  • スプリントバック
  • ビジョンを作る
  • ボールをピックアップ
  • ローディング
  • マッチアップし5on5へ

全てが高いレベルで行われる。特に国際大会では、レブロン・ジェームスや、ギリシャのアデトクンポのようなトランジション1on1では止めるのがほぼ不可能な選手がいる。こういった選手を5人全員で守ることができる。

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映像130_トランジションDEF

バックコートから常にプレッシャーをかける

  • バックコートでターンさせる
  • ビッグマンもフルコートでプレッシャーをかけることができる
  • ブラインドピックへのコミュニケーション
  • タグアップからスタートする

ディープなロスターを持っていることも武器。常にプレッシャーをかけ、時間をかけさせる、体力的に”削る"ことにもフォーカスしている。

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映像131_バックコート_ボールプレッシャー_バックコート

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映像132_タグアップ

徹底された遂行力

  • ポジショニングが崩れない(シャロートライアングル)
  • ストップドライブ(ヘルプ&ローテーション) 全てのポジションが同じことができる
  • レイアップまで行かれたらディープスイッチ

絶対にレイアップを与えないマインドセット。ポジショニングを徹底し続けるのは簡単なことではない。

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映像133_チームDEF_ストップドライ&ローテーション

PNRディフェンス”コンテイン”

【ガード】ファイトオーバー, ジャンプショットはコンテスト
【ビッグマン】バックペダル、レイアップはさせない、ジャンプショットはコンテストせずボックスアウト
【3rdマン】オーバーヘルプしない (シャロートライアングルをキープ)

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映像134_PNRディフェンス_コンテイン

  • ショットクロック10秒以下は全てスイッチ
  • トリプルスイッチを使いミスマッチを解消できる
  • ミスマッチでもファイトできるタフネス

メインディフェンスはあくまでコンテイン。コンテインを徹底することで、相手のボールムーブメントを消すことに集中している。

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映像135_PNRディフェンス_スイッチ_10秒以下

PNRディフェンス”スイッチ”

  • スイッチしても1on1で守る(アウトサイドも、インサイドもタフに)
  • スイッチディフェンスの後のオフェンスでは、逆のミスマッチを必ず攻撃するトランジションオフェンス
  • スイッチ対策のスリップや、フラットスクリーンに対して、スイッチ”キャンセル”の動きができる

同じくボールムーブメントを消すことができるのがスイッチだ。特に#00ボンガと#9ワグナーの存在が、どこからでもトリプルスイッチできるため、ミスマッチがほとんご起きない。また、ミスマッチでもタフにボックスアウトができるガード陣がいる。また、スイッチ後は必ずトランジションでビッグvsガードのミスマッチを狙う。

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映像136_PNRディフェンス_スイッチ

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映像137_PNRディフェンス_スイッチ"キャンセル"

PNRディフェンス”トラップ”

あまり使うことはないカバレージだが、相手ハンドラーがあまりにもホットになった時だけ使われる。FIBAワールドカップ2023準決勝のアメリカ戦で、アンソニー・エドワーズがホットになり、4Q終盤にエドワーズからボールを離させるために全てトラップした。急な変更でもディフェンスを遂行できる規律、習慣を持っている。

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映像138_アジャストメント遂行力_PNRトラップ

インディビジュアル ディフェンススキル

ディナイ

簡単にボールを持たせない、できるだけバスケットから遠くでボールを受けさせる, 不利な姿勢で持たせる

  • ガードも、ビッグマンも3ptより外側にプレッシャーをかけることができる

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映像139_オフボールDEF_ディナイ

ボールプレッシャー

  • アクティブハンド、常にボールに対して手を使う
  • ビッグマンもフルコートでプレッシャーをかけることができる
  • タフショットを打たせる
  • 必ずコンテストする

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映像140_オンボールDEF_ボールプレッシャー

クローズアウト、1on1

  • クローズアウトスキル
  • ボディアップ
  • コンテストはできるだけシュートハンドに合わせる

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映像141_1オン1 DEF

ポストディフェンス

  • コンタクトしたり、やめたりアクティブに動き簡単にボールを入れさせない
  • ミスマッチでファイトできる

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映像142_ポストDEF

オフボールスクリーン

  • ファイトオーバー、スルー、スイッチを使い分ける(フットワークとコミュニケーション)
  • ビッグマンもガードと同じようにオフボールスクリーンを守ることができる

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映像143_スクリーンDEF