パリオリンピックでの熱戦を終え、世界トップレベルの戦略や技術、そして日本代表の挑戦が、テクニカルレポートとして詳しく伝えられました。このレポートは、日本のコーチの皆さん、そして未来の日本代表を目指す若い選手たちにとって、世界を知り、自分たちの成長に繋げるための貴重な資料となります。
JBAユース育成部会では、このレポートとアンダーカテゴリー代表の映像をもとに、『育成年代へ届けたいメッセージ』として新たに育成向けレポートを作成しました。本資料では、対象を育成年代の選手とその世代を指導するコーチに絞り、世界で戦うために目指すべきプレーやマインド、その年代で学ぶべきことや考えることにフォーカスしてまとめています。
この「育成年代へ届けたいメッセージ」では、「日常を世界基準へ」のファーストステップとして「世界のステージにおいて、アンダーカテゴリー代表レベルでは、どんなプレーをしているのか」をまずは知ってもらいたいという目的があります。
そのため、単なる記録集やドリル集ではなく、「日本代表が世界と戦うために必要なプレーの逆算」という視点から、育成世代において「どの世代(カテゴリー)で何ができていれば適切か」についての気づきや「そのスキルをどうやって落とし込むか」を考えるきっかけとなるものであればと願っています。
映像の分類は「トランジッション」「クリエイト」「チャンス」「ブレイク」「フィニッシュ」の5局面で分類しています。今まで皆さんに紹介してきた言葉を使いながら、育成年代の指導者にとって、プレーの理解や認識をより揃えていけれるものになればと思っています。さらに、代表選手に必要なメンタリティや振る舞いについても映像を残しています。これは「人間力なくして競技力向上なし」という言葉が表すようにフィジカルやスキルを超えて選手が心に備えておく大切な基盤を共有し再確認することを目指しています。
『育成年代へ届けたいメッセージ』は、「映像で見ることでよりプレーの理解度を深める」という仕組みによって皆さんの日々の指導をより深めることを目指しています。コーチが世界の潮流を理解し目指すべきゴールからの逆算を意識し、育成年代の選手たちの日常を作っていくことは、彼らの成長の可能性を大きく広げることに直結します。
今回の資料は、パソコンでもスマホでも端末を選ばずアクセスできます。また、自宅でも体育館でも場所を選ばす閲覧できる仕様としています。都道府県DCの活動や日常のチーム練習においても手軽な資料として活用してもらえたらと思います。それぞれの年代で、「将来、世界で戦うために今、何を身につけさせるべきか」という視点を持ち、日々の指導に取り組んでいただければ幸いです。
日本代表の舞台は、決して遠い夢ではありません。今回の映像を通して、世界レベルのプレーを肌で感じ、**「自分には何が足りないのか」「これから何を努力すべきか」**を具体的に考えてみてください。
常に向上心を持ち、日々の練習に真摯に取り組むこと。そして、バスケットボールを通して、技術だけでなく、人間としても大きく成長していくことを期待しています。この「育成年代へ届けたいメッセージ」が、皆さんの成長へのサポートとなり、日本のバスケットボール界の未来を照らす一筋の光となることを願っています。
パリオリンピックでは男女それぞれ12名の選手が選出されて派遣されています。このうち、男子は88名の候補選手が選出され、30名を超える選手が国際試合に出場しており、その中から12名が選出されています。女子も同様に52名の候補選手から12名が選出されており、男女とも最終ロスター12名に残るプロセスは大変厳しいものです。これは代表選手の選出には多くの選手が関わり全ての選手の力の結晶が我々の日本代表が存在することを物語っています。
現在日本代表選手として活躍する選手たちの年齢構成はパリオリンピック代表では、最年長者が比江島選手と吉田選手、最年少者がジェイコブス選手と東藤選手でした。また、パリ2024オリンピックへ出場した男子日本代表選手のうちアンダーカテゴリー代表選手経験者は8名、女子日本代表では9名でした。
アスリート育成パスウェイという考え方から、選手の所属の移り変わりで道を辿ったものを「キャリアパスウェイ」として示し、代表歴等のパフォーマンスをたどったものを「パフォーマンスパスウェイ」として次に示しています。
これは、現在選ばれている選手について、時間を遡って整理しているものですが、現時点の育成年代の選手を見る際には現在から未来を見据えていく必要があります。育成年代の選手の指導に関わるということは、アスリート育成パスウェイを考えるということであり、責任を持って選手の将来像を考えていくことになります。目の前の勝利は尊いもので選手にとって大切な経験・機会となりますが、長い時間軸で選手の成長を考えていくことが育成年代には不可欠です。
コーチが選手を指導する際、年代や経験年数等を考慮して現在何を身につけるべきなのか、次にどのステージへ進めていくべきかを考えることを育成年代に関わる全てのコーチが責任を持って理解し、実践していくことが大切です。

自身の指導カテゴリーを超えて選手のパスウェイを長い時間軸で考えるきっかけとして下さい。
選手の成長は、必ずしも自分の目の前を通る際に起こるわけではありません。
次のカテゴリーまたはその先の未来で選手が成長する機会を失わないよう、指導者主体でなく、選手主体の視点を心がけた指導が選手の未来を作っていくことに繋がります。
現在の日本代表選手が歩んできた道筋を見ることで自分の未来の道筋を考えてみて下さい。
また、現在のステージで何をすべきか、次のステージでどうありたいかを具体的に考えていくことに繋げて下さい。
皆さんの未来は無限に広がっていきます。
自身の指導カテゴリーの選手は次のオリンピックその次のオリンピックでは何歳を迎えるでしょうか。
日本代表選手を目指すことだけがゴールではありませんが、パスウェイを考えるとともにパリオリンピックに出場した選手の年齢と自身の指導する選手の年齢を重ねながら未来を描くことは選手の可能性を無限にすることとも言えるかもしれません。
パリオリンピック代表時に23歳だった東藤選手、河村選手はロスオリンピックでは27歳を迎えます。
またその次のブリスベンオリンピックでは31歳となります。皆さんの現在の年齢を当てはめた時、自身の未来と重ねてイメージをしてみましょう。未来の目標から逆算しながら、これからの歩みを無限に想像してみて下さい。
ハンドリング:ボールプッシュでき、プレッシャーに対してアタックできる
ドライブ:ズレや間合いを作りペイントアタックできる
パッシング:パスのスピード、精度、タイミング、バリエーションを自在にコントロールできる
3ポイントシュート:40%以上の高確率で3ポイントシュートを決めることができる
フィニッシュ:ステップワークとショットのバリエーションで体格差を克服できる
ディフェンス:ボールに手が出る、ドライブに脚が出る、コースを身体で止めることができる
リバウンド:ヒットファーストし体を張って徹底したボックスアウトができる
ハードワーキング:常に高い強度でプレーし続けることができる
リード&リアクト:状況に応じて、瞬時により良いプレーを選択することができる

Basketball Japan’s Way
2023/10/122023年10月にJapan`s Wayが発表されました。その中ではオールラウンダーに求められるファンダメンタルスキルとして9つの項目が示されていますので再度確認して下さい。

テクニカルレポート2024
2025/6/15今回発表されたテクニカルレポートでは現在日本代表に選ばれている選手の特徴や役割について男女それぞれ示しています。
現在日本代表に選ばれている選手の特徴を示しています。現在指導するチーム事情によって選手の役割やポジションが限定されることもあるかと思います。そのことは、指導するチームや選手を勝利に導く上で必要なことであり、否定できるものではないと考えます。
しかしながら、現在日本代表に選ばれている選手の特徴やその要素を理解し指導することは、長い目で選手の成長を考える際に育成年代の指導者が持つべき必須事項でもあります。
現在、自身のチームでの役割やポジションと将来目指す役割とポジションが異なることがあるかもしれません。
自分に当てはめて考えることはもちろんですが、現在選ばれている日本代表選手はそのポジション・役割でどのような仕事をしているのか、そんな視点も持って下さい。
選手として求められるものを理解しアジャストしていくことはとても重要なことです。
今回育成年代へ届けたいメッセージの中ではアンダーカテゴリー代表の映像を中心に(A代表や他国代表クリップも含む)モデルプレー映像を作成しています。映像は、「トランジッション」「クリエイト」「チャンス」「ブレイク」「フィニッシュ」の5局面に分類しています。
まずは、その局面での実際のプレーを見て下さい。映像ボタンをクリックすると連続してその局面の映像クリップが流れます。連続して同じ局面の類似したプレー映像が流れますので視覚的にプレーを捉えることにチャレンジしてみて下さい。
映像クリップ内には説明が示され、一番下にタイトルが示されています。視覚的にプレーを捉えることとその映像内で何が起きているのかをリンクさせながらプレーを理解に役立てて下さい。
今回の「目指すモデルプレー」はU16ナショナルチーム以上の年代の映像クリップを使用しています。これは、言い換えると16歳を超える頃には出来るようになって欲しいプレー映像集ということになります。
そのため、全てのプレーをU15以下で目指すことは推奨しません。あくまでも完成系を見ていることを認識して選手の体格、成熟度を十分考慮した、学びの順番や戦術的負荷のコントロールをして日々の練習にご活用下さい。
どの端末からもアクセス可能です。DC活動中に映像を見せながらプレーを学ぶ環境を増やしていきましょう。

国の代表として、その胸に日の丸を背負うこと。数多の競技者の中から選ばれた者のみに許される、誇りであり、同時に重責でもあります。
そこで戦う選手・コーチはどんなメンタリティを持っているのか、コーチの言葉、選手の声、試合での振る舞いから見えてくるものがあります。
そこでは、所属チームで見せる輝きとは、また別の光が求められます。
代表チームとは、個人の能力を証明する場ではありません。
この場所では、所属クラブでの序列やプレー時間は意味をなしません。
与えられた役割を全うし、例え短いプレータイムであっても、最高のパフォーマンスを、チームの勝利のために捧げられるかを問われる場所です。
だからこそ、そこに立つ選手は一瞬たりとも勝利への思考を止めません。
常に最高のインテンシティを維持し、苦しい時には仲間を鼓舞し、倒れた仲間には誰よりも早く手をさしのべます。そして、逆境においても顔を上げ、決してヘッドダウンはしません。日本を代表するというプライドが、いかなる状況でも下を向くことを許さないのです。
スキルが練習によって磨かれ、豊かな経験がアスリートを強くしていく。
それは紛れもない事実です。
しかし、その技や強さが「競技力」という美しい花だとすれば、その花を支え、たくましく育むためには、見えない根と土壌が不可欠です。
それが「人間力」という名の土壌に他なりません。
どんなに美しい花も、土壌が痩せていては大事な局面で踏ん張りがきかず、厳しい風雨に耐えることはできません。仲間と切磋琢磨できる「リスペクト」の心。
自分一人の力ではないと知る「感謝」の気持ち。そして、うまくいかない時こそ自分を見つめる「謙虚さ。」こうした養分が深く根を張ってこそ、アスリートという大輪の花は、人々を魅了するのです。
それは、一流の競技者である前に、豊かな人間であることの大切さを教えてくれる、指導者も選手も、その胸に刻むべき言葉です。
映像67_その他_ハドルを自発的に組む
映像68_その他_フロアにいる味方へ手を差し伸べる
映像69_その他_アシストを出した選手へ指差し
映像70_その他_コートでコーチング
映像71_その他_タイムアウトでのトーク
映像72_リーダーシップ_ロッカールームでのコーチ陣_富樫キャプテンのトーク