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【インカレ2025レポート】八戸学院大学「絶対に勝ちを持って帰ろう」──バスケで“八戸”を元気に

2025年12月10日

八戸学院大学 #7 菊地美奈選手

八戸学院大学 #10 鎌田一花選手

 「第77回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)」は女子グループステージを終え、本日12月10日(水)より女子トーナメントが開幕します。年明けの皇后杯ファイナルラウンドへ出場する2チームがグループステージから登場。1勝1敗で予選敗退となった北翔大学は手応えと課題を持ち帰り、新たなる戦いへ照準を合わせます。2連勝した江戸川大学はトーナメント本戦へ駒を進めました。関東大学女子2部リーグの江戸川大学は、皇后杯セカンドラウンド(関東ブロック)でインカレ第4シードの強豪・拓殖大学を破ってファイナルラウンドの切符を獲得。勢いに乗って臨んだこのインカレでは、195cm #23 オズルンバ グッドネス アヨミデ選手(コートネームはグッディー)が連続40点を超え、2試合の総得点は92点。キャプテン #77 福嶋 恋選手は「グッディーの存在が大きく、まわりも得点を取ることができれば勝てる試合も増えると思います」と自信を持って武庫川女子大学との1回戦に挑みます。

 2年ぶりにインカレの舞台に戻ってきた八戸学院大学。通算出場回数は今回で3回目。初出場は2022年、今の4年生が1年生のときであり、翌年はロスター入りする選手が増え、初勝利を挙げました。2年前、実際にコートに立った#7 菊地美奈選手は、「はじめてのインカレだったので、全然自分のプレーもできずに、ただやられてしまうだけでした」と振り返ります。昨年は出場を逃し、#10 鎌田一花選手にとっては今年がインカレ初出場。「2年前はケガをしていたため、スタンドで応援していました。チームに勝ってもらいたい気持ちがある反面、やっぱり自分もコートに立ちたいという悔しい気持ちも少しありました」と複雑な心境を乗り越え、キャプテンとしてチームを引っ張ります。

 初戦の立命館大学は#52 米谷日里選手(13点)と#42 細浦琴美選手(10点)が2桁得点を記録し、菊地選手は9点・11リバウンドで攻守にわたって奮闘。しかしながら38-57で敗れ、1敗目を喫しました。立命館大学が2連勝でグループステージ突破を先に決め、勝っても負けても環太平洋大学戦がラストゲームとなります。試合のなかった12月8日夜、「それぞれ部屋にいて、東京でも揺れたので地震に気付きました。すぐにニュースを見たら、八戸の見慣れた場所が映っていて驚いたのと同時に不安になりました」という鎌田選手。23時15分、青森県東方沖を震源とする地震があり、八戸市は震度6強の大きな揺れに見舞われました。

 すぐに家族へ連絡を入れ、安否確認に奔走します。「もっと集中して試合に臨みたかったですが、地震があったことで少なからず動揺はありました。でも、最後の試合なので『もうやるしかない』と思ってコートに立ちました」と鎌田選手は気持ちを切り替えます。試合前のミーティングでは、「泣いても笑っても最後の試合なので、絶対に勝ちを持って帰ろう。自分たちが今までやってきたことを信じれば絶対に勝てるから」ともう一度チーム一丸となってラストゲームに臨みました。

 前半は22-35と13点リードを許して折り返します。菊地選手は、「今まで4年間練習してきたことを思い出し、絶対に自分たちならば勝てると思っていました。4年生を筆頭にディフェンスから流れをつかむことができたのも、コート上もベンチもスタンドもチーム一丸となって戦うことができたからです」と強い気持ちをプレーで表現し、環太平洋大学の攻撃を後半は10点に抑えます。第4クォーター残り2分25秒、菊地選手がフリースローを決め、44-43とついに逆転。両チームともインカレでの1勝を目指し、シーソーゲームが続きます。菊地選手、#23 長谷川優羽選手をはじめ、全員でリバウンドやルーズボールに飛び込び、幾度もチャンスをつないで執念を見せます。最後に勝負を決めたのはキャプテンでした。

「シューターとして、立命館大学戦から1本も3ポイントシュートが入っていなかったのですごく苦しいかったです。チームメイトがそれでも自分のこと信じて、ずっとリバウンドを取り続けてくれて、試合中もベンチから『一花打って良いよ』と言ってくれていたので、ずっと打ち続けることができました。それでも最後まで入らなかったんですけど、あの最後のゴール下はみんなが自分を信じてくれたからこそのシュートだったと思います。全員でつかんだ1本でした」(鎌田選手)

 残り0.2秒、一度はリングに弾かれたボールに飛び込み、ねじ込んだ鎌田選手の逆転シュートが決勝点となり、46-45で勝利。試合前に誓い合った八戸に勝利を持ち帰ることができました。ラストゲームへの想いを菊地選手が総括します。

「今年のチームがはじまってからなかなか勝てず、4年生が引っ張らなければいけないとずっと言われ続けてきました。グループステージ突破がこの試合の前に断たれましたが、このままで終わって情けない4年生だったと思われるの嫌でした。最後の最後で絶対に勝ってやる、そういう気持ちでしか臨んでいなかったので、勝ったことがすごくうれしいです。チームを引き継いでくれる後輩たちにも良い背中を見せることができたのかなと思います。もっとこのチームで一緒にバスケしたかったですが、この試合は全力を出し、みんなでつかんだ大きな1勝になりました」(菊地選手)

 これから帰路に着く八戸学院大学ですが、「いつも行くショッピングモールの天井が崩れていたり、ガラスが割れていたりした映像を見て信じられなかったです」と菊地選手が言えば、鎌田選手も「家に帰ったらいろんなものが倒れて悲惨なんだろうなとは思います」と話すように、出発前とは異なる光景が待っています。2人は岩手県出身、多くのメンバーも東北出身であり、小学校の時に東日本大震災を経験したことで、「大丈夫だという思いもあります」と鎌田選手の言葉に力強さを感じました。JBAが掲げる『バスケで日本を元気に!』。力いっぱいコートで躍動する一人ひとりのプレーが勇気を与え、それぞれの地域に元気を届けてくれることでしょう。