公益財団法人日本バスケットボール協会

　57年ぶりに関東大学1部リーグ優勝を果たした早稲田大学は、「第77回全日本大学バスケットボール選手権大会（インカレ）」の第1シードとして2回戦から登場。初戦の相手はリーグ戦で黒星を喫した神奈川大学です。試合序盤は約20点のリードを奪った神奈川大学が先手を取りました。

　ベンチスタートの#5 堀陽稀選手は、「初戦の入りの悪さは自分たちの悪いところです。ぬるっと入ってしまい、点差を引きずってしまいました」と反省点を挙げます。早稲田大学は持ち味であるペイントアタックと3ポイントシュートを主体とし、徐々にリズムを取り戻していきました。リーグ戦では1試合平均35.2本の3ポイントシュートを放ち、成功総数284本はいずれも関東1位を記録。神奈川大学戦の成功数は9本と平均を下回りましたが、35本を放ってチャンスを作りながら自らのスタイルを貫き、83-72で初戦突破。神奈川大学はさらに多い41本を放ちましたが8本成功に留まり、追う展開となってから精度を欠いたことでふたたび流れを引き戻すことができませんでした。

　早稲田大学は3×3を彷彿とさせるスタイルが特徴です。また、沖縄で開催されたFIBAバスケットボール ワールドカップ2023のときに、男子日本代表の渡邊雄太選手（千葉ジェッツ）が語った「言い方は悪いですが、本当にギャンブルみたいなバスケットをしています。3ポイントシュートの確率を上げればどのチームにも勝てるバスケット（スタイル）」にも通じるものがあります。堀選手、#18 岩屋頼選手、#12 松本秦選手は、3×3男子U23／U21日本代表として今年の国際大会に出場した経験の持ち主。倉石平監督も長年にわたり3×3の強化に携わってきた指導者です。

　「倉石さんがずっとこのスタイルに取り組んできましたが、形がうまくいかない時間帯がここ数年ずっと続いていました。こんなオフェンスで良いのかなと思い、躊躇してしまうことも選手自身にあったと思います。でも、今年は特にシュートを得意とし、気持ち良いリズムで打つことが好きな選手が揃っており、それによってこの戦術がはまっていきました」と岩屋選手は好調の要因を説明。3×3は3人での攻防となりますが2on2で打開する局面も多く、「スクリーンのかけ方やそこからの動きが3×3を通して身についたことで、良いリズムでシュート打てるようになりました」と効果を発揮できています。堀選手も、「3×3のショットクロック12秒というルールが、積極的に打ち切る意識につながっています」と手応えを口にしました。

　準々決勝は前年王者・日本大学を96-87で退け、23年ぶりとなる準決勝進出。3ポイントシュートは17/34本、50%の高確率で成功させ、ともに4本決めた岩屋選手は22点、松本選手は24点、5人の二桁得点が勝利に貢献。オフェンスに注目が集まる早稲田大学ですが、「基本はまずディフェンスをがんばること」と堀選手は強調します。ディフェンスをベースとしているからこそ、#0 下山瑛司のスピードや岩屋選手のボールプッシュでいち早く自陣へ入るトランジションも大きな武器になっています。

　昨シーズンの早稲田大学は関東大学2部リーグに所属していました。入替戦を経て1部昇格を果たし、昨年のインカレでは白鷗大学に敗れてベスト16。1年後の今シーズンは3×3の発想を5人制バスケに昇華させ、リーグ優勝という大きな飛躍を遂げました。大会公式プログラムの表紙にはトップ8の一人として、堀選手の姿が掲載されています。劇的な変化について、堀選手は以下のように語りました。

「リーグ戦で優勝できるなんて全く思ってもいなかったです。早稲田が注目されていることにビックリしています。最後の年ですが『絶対に優勝するぞ』というよりも、スピードが速く、シュートもどんどん打って点数がたくさん入る早稲田のバスケは見ていて楽しいと思います。見に来てくださった方が楽しいと思うようなバスケをしていけば、自ずと結果がついてくる。皆さんに楽しんでもらえるようにがんばります」

　インカレでの3ポイントシュートはここまで1試合平均13本成功、試投数は34.5本と高い水準を維持しています。準決勝の相手は『ミラクル日経』と呼ばれる九州2位の日本経済大学。グループステージから勝ち上がった日本経済大学はすでに5試合を終え、3ポイントシュートは平均9.4本成功、試投数は早稲田大学を上回る37.2本を誇ります。堀選手の言葉を借りれば、「打てていたことは唯一良いところだったので、それをあとは決めるだけ」。勝負のカギを握るのは、どちらの“当たり”が先に来るか──準決勝は12月13日（土）、大田区総合体育館（東京都）で行われます。