現地レポート

信念のラストショットRSS

2012年12月25日 20時31分

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信念の選手である。話を聞いて、そう感じた。京都・東山のスタメンガード、#8武内夏来は福岡の強豪、姪浜中学出身。3年生のときにはキャプテンとして全国大会にも出場している。


「そのまま福岡に残ってもよかったんですけど、自分の実力がどこまで通用するか、他の都道府県で試してみたいと思ったんです。いろいろ調べてみると、京都の東山がとてもまじめで、しかも本気で洛南を倒そうとしていることを知って、これは僕に合っているのではないかと東山に行くことにしたんです。」


しかし実際に入ってみると、想像していた以上に166センチという身長が大きなハンデになると気付いた。同級生には190センチを超えるメンバーがいて、最初に試されるのは身長の大きいメンバーたち。武内に出番が回ってくることはほとんどなかった。2年生の途中でポイントガードにコンバートすることになったが、それまでシューターと練習してきたため、すぐにうまくいくはずもない。ポイントガードとしてのデビュー戦となった府の新人大会では上位に入れず、近畿大会を逃すという憂き目も見た。


「このままじゃダメだ、この夏までに東山のガードとしてやるべきことを学ばなければいけない。そう考えて、身長の小さい自分に何ができるのか、周りの大きい選手をいかすにはどうしたらいいかを研究するようにしたんです。」


もちろん研究をしたからといって、すぐに試合に出られるわけではない。やっと出番が回ってきたのは今年5月に行われたインターハイ予選京都府大会の洛南戦からだ。


「洛南戦で6thマンとして出してもらえたときに、自分のような身長でも全国に通用することを学びました。それがこの3年間で一番習得できたことです。」


その後インターハイで準優勝するライバルチームにも身長の小さな選手がいる。そういった選手と直接マッチアップしたことで何かを感じ取ることができたのだろう。


そして6月に行われた近畿大会でスタメンガードの座を射止め、そのままウインターカップまでチームを引っ張り続けた。試合は[64-94]で神奈川・桐光学園に敗れたが、武内は最後の最後まであきらめず、信念の結晶を見せていた。試合終了と同時に決めたジャンプシュートがそれである。


「僕は常に福岡から京都に来た意味を考えて、この3年間努力してきました。だから東山に来たことに悔いはないし、田中コーチや大澤アシスタントコーチにバスケットのことも、バスケット以外のことも多く学んだので、本当に後悔はありません。」


信念は人を大きく成長させる。横綱・千代の富士もこう言っている――今日いい稽古をしたからって明日強くなるわけじゃない。でも、その稽古は2年先、3年先に必ず報われる。自分を信じてやるしかない。大切なのは信念だよ。


武内夏来は来春から関東の大学に進学する予定である。


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