現地レポート

ピンチはチャンス!RSS

2012年12月26日 12時13分

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ピンチはチャンス――ピンチだと思っていたところに、実は成長するチャンスの芽が隠れているという意味で、愛知・若水中の前コーチ、杉浦裕司氏がよく使っている言葉だ。


大阪・大阪薫英女学院にその杉浦氏の教え子、別名「裕司っ子」が2人いる。シューターの石井杏奈とガードの加藤宇希波である。ともに1年生、つまりはルーキー。だがこのルーキーは昨年の全国中学校バスケットボール大会、いわゆる「全中」を制したキャリアの持ち主である。


だからといって2人とも1年目から試合に出られるとは思っていなかったという。


「中学のときとは全然バスケットスタイルが違いました。入学した当初はどう動いていいかがわからなかったし、実際にやってもできなかったけど、どんどん考えるようになって、ディフェンスを見てプレイするとか、相手がこうしてくるから次はこうしたほうがいいと練習でたくさん教えてもらえたので、今は考えながら少しはできるようになってきました。」


その言葉どおり、石井の動きは中学時代の動きとは少し違うものになっていた。それでもチャンスがあれば得意のシュートを放っていく。そこは変わらない。


「大事な場面であっても、シュートに関しては『あいたら打て』と言われているので、どんどん打ちました。でも今大会はあまり入らなかったので、もっと練習を積み重ねて次の大会では絶対に入れて、大事な場面でチームをピンチからチャンスに変えられる選手になりたいです。」


一方の加藤は大阪薫英女学院に入って、ポイントガードにコンバートされていた。



「薫英はガードが少なくて、長渡コーチは背の大きなガードが欲しかったと言っていました。自分はけっして大きいほうではないんですけど165センチ以上はあって、周りを見る視野もあるということでフォワードからカードに起用されたんですけど、やっぱり難しいです。」


攻守の切り替えの速さで勝負をする中学時代から、高校女子バスケット界のなかでも特にフォーメーションの数が多い大阪薫英女学院のバスケットに変わり、しかもそこで司令塔になれというのだから、これまで以上に頭をフル回転させなければならない。


さまざまな違いに戸惑いながら、それでも2人は名将、長渡俊一コーチの期待を受けて、コートに立っている。


「チームとしては勝ちにこだわって全国制覇をしたいんですけど、そこは長渡コーチの教えもありますが、自分は杉浦先生の『日本一いいチームになったら自然と結果はついてくる』という言葉が一番好きなので、バスケットだけではなく、勉強も、私生活もすべてにおいて日本一いいチームになりたいです。そして自分個人としてはあと2年あるけど、来年、再来年と1つずつ大きく成長して、日本一のガードになりたいです。」


大阪薫英女学院は埼玉・山村学園に[74-82]で敗れて、今年もメインコートに立つことはできなかった。関西の雄はこのまま沈んでいくのか。ピンチである。だがそのピンチを2人の「裕司っ子」がチャンスに変えていく。


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