現地レポート

天国と地獄を知る男RSS

2012年12月27日 20時53分

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少し季節外れだが、運動会の定番曲の1つといえば「天国と地獄」だろう。メロディーを文字にすることは難しいが、たぶん聞けば「ああ、これか」と思い当たる方も多いだろう。そのように「天国と地獄」を聞いた人は多くいるだろうが、それを実際に体験した人は少ないだろう。


福井・北陸の満田丈太郎はウインターカップで「天国と地獄」を体験した数少ない選手だ。今から2年前の第41回大会でチームが初優勝を果たしたとき、貴重なシックスマンとして1年生ながら優勝に貢献した。しかしディフェンディングチャンピオンとして臨んだ昨年の第42回大会では1回戦負けという憂き目にあう。


「昨年1回戦で負けたことは北陸としてもすごく大変なことで、周りからの目も厳しくなり、チーム内の雰囲気も悪くなって、すごくツライ時期が続きました。それを修正するためにはチームの雰囲気から直さないといけないということで、練習からしっかりとコミュニケーションを取って、悪いところはすぐに直すようにしてきました」


といっても、それがスムーズにできたわけではない。スタメンがなかなか固定できず、久井茂稔コーチも試行錯誤を重ねたが、同じように選手間でも、どういうプレイヤーだったらみんなが一番スムーズにプレイできるのかを考えたという。


「僕個人としても学年が上がっていくうちに求められるものも大きくなって、まだまだ足りないものがたくさんありました。特に足りなかったのが『チームを引っ張っていくのは自分だ』という気持ちでした。周りの方からも『試合の流れを作るようなプレイヤーにならないといけない』と言われましたし…」


それでもなかなか気持ちに踏ん切りをつけて、チームを引っ張ることができなかった。その結果、インターハイで負け、国体には出られず、ウインターカップに入っても何かモヤモヤしたものが残っていた。それを打破したのが昨日の千葉・市立船橋戦である。


「いいシューターがいるのに自分が攻めてもいいのかと迷っていたところがあったんですけど、昨日の市立船橋戦の第4ピリオドでやっぱり最後は自分が引っ張らなければいけないって感じたし、チームメイトからもそう言ってくれたので、そこで吹っ切ることができました。今日もそれを維持してプレイしました。」


明日の対戦相手はインターハイで敗れた宮崎・延岡学園だが、満田を含め北陸に夏のような迷いの姿はない。2年前の優勝を肌で知っている満田だからこそ、当時のチームと今年のチームに共通点を見出すことができる。


「チームが一丸となっていて、すごく楽しいバスケットができています。応援席もそうですし、ベンチも、試合に出ているメンバーも仲良く楽しくやっているところは2年前のチームと同じだと思います。このまま北陸らしさを出していけば、明日はいい試合になると思います。」


ニーチェの言葉に「人生は常に頂上に近づくほど困難が増してくる。寒さは厳しくなり、責任は重くなる」がある。ウインターカップのトーナメントも同じことが言える。頂上に近づくほど困難は増してくる。チームリーダーとしての責任も重くなってくる。だが今の満田に迷いはない。もう1度天国の扉を開けるまで突っ走るだけである。


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