現地レポート

町田瑠唯、二十歳の誓いRSS

2013年01月12日 01時50分

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3月生まれの彼女は、正確にはまだ二十歳ではない。だが今年成人式を迎える彼女にとって、このオールジャパンはターニングポイントになるかもしれない。彼女とは、富士通 レッドウェーブの#10町田瑠唯のことである。


チームは準決勝でトヨタ自動車 アンテロープスに[75-79]と敗れたが、町田はその試合で14得点を挙げている。Wリーグ・レギュラーシーズンの平均得点が3.86点だった町田が、である。


「周りから『得点を取りに行きなさい』と言われたし、実際Wリーグを戦っていて(距離を)離されて守られることが多かったので、それが自分の中で嫌だったんです。“4対5”の形――相手から自分だけオフェンスの数にカウントされていないという意味――になってしまうのが嫌だったので、今日は得点に絡んでいこうと思いました。」


思ってすぐに実行できるのだから、それだけの力があるということだろう。だが昨シーズンのWリーグ新人王は自らの武器を「アシスト」と考えるあまり、これまではゴールに向かう姿勢が希薄だった。まだあまり研究されていない昨シーズンはそれでもよかった。北海道・札幌山の手高校のエースガードとして同校を初の高校3冠に導いたときも、もちろん得点には絡んでいたが、パスだけでも周りの選手――たとえば富士通の#0長岡萌映子やシャンソン化粧品 シャンソンVマジックの#6本川紗奈生、デンソー アイリスの#31高田汐織らが得点を取ってくれていたので、大きな問題にはならなかった。


だがWリーグのチームが研究し、その特徴をつかんでくると、町田の攻撃意識の欠如はチームにとってマイナス要素となる。攻めなければ、自分を守っているディフェンスは周りのカバーに行ってしまい、それでもなお攻めなければ、チームの得点は伸びていかない。攻撃を司るはずのポイントガードが、チームの攻撃を滞らせていたわけだ。


そんな町田がオールジャパンの準決勝で殻を破った。


「点数としてはいつもより多く入れているので、すごくよかったなと思います。でももう少し攻めていってもよかったかなとも思っています。」


そして今後に向けて、こう話す。


「相手からは『町田は離していても大丈夫』って思われているから、そこは怖い存在になれるようにもっと得点を取りにいって、そこから自分の得意をするアシストをもっと増やせていけたらいいなと思っています。



相手にとって怖い存在のポイントガードになる――162センチのかわいらしい顔をした町田が成人式を前に示した「二十歳の誓い」である。


毎年「成人の日」の朝刊で、作家の伊集院静が酒造メーカーの広告に新成人へ向けたメッセージを書いている。2007年の成人の日のメッセージの中にこんな一節がある。


二十歳の空はどこにでも飛んでいける。信じるものにむかって飛び出そう。空は快晴だけじゃない。こころまで濡らす雨の日も、うつむき歩く風の日も、雪の日だってある。実はそのつらく苦しい日々が君を強くするんだ。 苦境から逃げるな。自分とむき合え。強い精神を培え。そこに人間の真価はある。


町田の真価が問われるのはこれからである。


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