現地レポート

ただ実直に…13年目の初優勝!RSS

2013年01月13日 20時04分

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動物学者のジェーン・グドールが言っている――「ひとりひとりが重要であり、それぞれに役割があり、誰しもに現実を変える力がある」。


オールジャパン4連覇中のJXサンフラワーズを破り、初めて皇后杯を下賜されたトヨタ自動車 アンテロープスは、まさにその言葉どおり、一人ひとりがそれぞれの役割をまっとうし、現実を変えた。


後藤 敏博ヘッドコーチに「6番手だがチームのエースだと思っている」と言われた#12矢野 良子に、3Pシュートを7本沈めたルーキーの#24栗原 三佳。コートを縦横無尽に走り回る#2川原 麻耶に、怪我から復帰した司令塔の#25久手堅 笑美。その輝かしい選手たちのなかで地道にチームを支えたのが#15池田 麻美である。大会ベスト5の受賞コメント、「チームの精神的支柱として、インサイドで身体を張る堅実なプレイヤー」はまさに言い得て妙の池田評である。


決勝戦でも最後まで体を張り続けた。リードされたJXが追いつき、逆転するためにはアウトサイドシュートを入れることはもちろんだが、もしそれが外れても192センチの#10渡嘉敷 来夢がオフェンスリバウンドを取って、ねじ込む。そういった思惑を池田はひとつずつ壊していった。


「後藤さんからは再三『渡嘉敷を中に入れるな』と言われていたので、そのことだけを意識していました。これまではどうしてもリバウンドを取られてセカンドシュートを決められていたんですけど、今日は渡嘉敷選手がリバウンドに飛んだとしても、体勢を崩させられればいいなと思っていたんです。そのためには自分が膝を曲げて、あの子の足元に入ろうって考えていました。」


その言葉どおり、結果として5本のオフェンスリバウンドは取られているものの、渡嘉敷がリバウンドに飛び込んだときにあと少しボールに手が届かない、届いても指先に触れるだけで、リバウンドシュートに持ち込むことができない。そんな場面を試合終盤でも作り出していた。


けっして派手な選手ではない。学生時代は「体育が嫌いだった」というアスリートには珍しいタイプでもある。だが地道に、コツコツと努力を重ねる意思の強さはトップアスリートの持っているものと同じか、それ以上のものがある。


これまでできなかった「相手ボールにさせない」ことが、この大一番でできたのは「やはり勝ちたかったからです。そして後藤さんの指示を一生懸命やろうと思っただけですね」。


どこまでも実直な選手である。だがこういった選手がいるチームは大きく崩れることがない。後藤ヘッドコーチが「池田は僕の心のお守りのようなもので、安心できる」と言うのもよくわかる。


埼玉・県立大宮東高校を卒業して13年、ずっとトヨタ自動車一筋である。チーム在籍年数が誰よりも長いベテランは、学生時代にもないという人生初の全国制覇を成し遂げた。


「これまで何度も(バスケットを)辞めようと思いましたが、やっぱりやっていてよかったなという思いです。アシスタントコーチの平田紘美を中心に、Bチームの選手がよくスカウティングをして、私たちのために相手チームをしてくれました。本当にチーム一丸になって取った優勝だと思います。また前任のヘッドコーチの丁(海鎰)さんが辞められて最初のシーズンでしたけど、今までやってきた財産を後藤さんがよく引き継いで私たちを導いてくれたなと感謝の気持ちでいっぱいです。」


優勝に舞い上がることなく、周りへの感謝を忘れないのもまた池田 麻美なのである。



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