現地レポート

ツースリーの結実と、早稲田大の誤算RSS

2012年01月01日 18時24分

「このチームは元々のツースリーのメンバーと、地元で開催される国体のために出身県に戻ってきた選手で構成されるチームで、国体で勝つことを第一に目指していました。国体では負けてしまったんですけど、ツースリーとしては前回(2009年)、初めてオールジャパンに出場したときに負けたので、一勝することをモチベーションにして練習に取り組んできました」


中国ブロック代表のツースリーのポイントガード、枝折康孝選手はそう言います。その言葉どおり、ツースリーは大学7位の早稲田大学を【74-73】で逃げ切りました。枝折選手はこう続けます。


「とにかくチームとしてはディフェンスを練習してきましたので、ディフェンスはある程度通用するかなと思っていました。でも早稲田も大きくて、力のある14番の子(久保田遼選手)がいるので、彼のプレイは研究して、ダブルチームの行き方など部分的な練習もしてきました。あとはオフェンスの部分。国体では出身県に戻ってきた選手が中心で試合に出ていましたが、その何人かが抜けて、このチームになったとき、オフェンスの考え方の違いがあったんです。そのオフェンスの違いをとにかく整理して、ムービングからの1対1を狙ってきました」


得点はエースの島袋脩選手がドライブに、ジャンプシュートにとフル回転をします。ただときに無理するところがあるので「彼が気持よくプレイできるように」と司令塔の枝折選手は考えていたと言います。そういった入念な準備があってこその――国体チームとしては東京に遠征し、早稲田大と同じ関東大学1部リーグに所属する日本大などと練習試合をしていたそうです――オールジャパン初勝利だったのです。


一方の早稲田大は完全にチームとしての形を失っていました。もちろん戦おうという気持ちはあったでしょう。しかし「卒業論文などがあって12月はほとんど練習ができず、そこからチームとしてのまとまりが欠けてしまった」と倉石平監督は唇を噛みます。


「学生のいいところであるチャレンジャー精神でガンガン走って、ガンガンぶつかっていく謙虚な気持ちで戦っていればこんな結果にはならなかっただろうし、もっと楽に勝てていたと思うんですけど、それが『これくらいでいいだろう』という気持ちで、学生同士でゲームをやっているような気持ちになると、受けに回ることになるので、今回のような結果になりますよね…特にツースリーは山口国体の集大成という気持ちもあったでしょうし」


気持ちの面が、1点差ではありますが、結果に大きく響きました。これも1つの「1点の重み」といっていいかもしれません。早稲田大のポイントガード、大塚勇人選手もそれを認めています。


「前日の過ごし方を含めて、全体的にゲームに軽く入ってしまいました…プレイも悪かったし、(司令塔である)ボクの選択も悪かったです。全体的に気持ちが入っていなかったのかもしれません。それでもいつか自分たちに波がくるんじゃないか、逆転できるんじゃないかって思っていたんですけど、結局それが最後まで来なくて、重い雰囲気でやってしまいました」


口幅ったいことを言えば、やはり真摯な態度でバスケットに向き合わなければ、たとえ下位回戦であったとしても勝利を手にすることはできません。ツースリーはチームとしての全国初勝利のために相手を研究し、試合にも入っていきました。試合が始まる1時間前にはすでにシューティングを開始して、ゲームに向かっていたのです。そのことは、逆に言えば、敗れた早稲田大にとってはいい薬となったでしょう。大塚選手は言います。


「これからは(4年生でインサイドの要であった)久保田さんが卒業するし、この結果をいい薬として来年に向けて変えていかないと今の早稲田は楽に勝てるチームではないので…ボクたち上級生がチームを変えていかなければいけないし、バスケットをちゃんと見つめ直していきたいと思います。期待していてください」


勝ったツースリーは明日、bjリーグの千葉ジェッツと対戦します。今日のように自分たちのバスケットをして、思いきりプレイしてもらいたいと思います。そして敗れた早稲田大学にはもう一度、自分たちが早稲田大学でプレイする意味を考えながら、もう一度立て直してもらいたいと思います。

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