現地レポート

目覚める2年目のポイントガードRSS

2012年01月06日 21時51分

2番手、2年目というのは少し地味な印象があります。もちろん勝負の世界では1番のほうがいいわけですし、1年目、つまりルーキーというのは何者でなくても、それだけで注目の的になります。


オールジャパン2012の男子準々決勝、パナソニックトライアンズとリンク栃木ブレックスの一戦は白熱したものになりましたが、最後はパナソニックが【89-83】でリンク栃木を下しました。これで4年連続のベスト4進出です。


この試合で一番躍動していたパナソニックの選手と言えば、3Pシュート8本を含む40得点を挙げたルーキーの金丸晃輔選手でしょう。しかもその8本の3Pシュートが10本打ってのそれですから、まさに神がかり的なシュートでした。彼の場合は「何者でもないルーキー」ではなく、「大物ルーキー」と呼べるでしょう。


しかし金丸選手の陰に隠れて、実はチームで2番目の得点を挙げているのは、2年目のポイントガード・渡邉裕規選手です。3Pシュート4本を含める23得点をあげています。ゲームコントロールをしながら、得点も取りにいく。清水良規ヘッドコーチも


「ポイントガードとして日一日とよくなっているし、ここぞというときのシュート力もあるので、チームのオフェンスがよく回るようになりました。木下(博之)だとどうしてもスローダウンするところもあるけど、渡邉だったら突破力もある。チームに活気を与えてくれるポイントガードだからありがたいですよ」


と称賛しています。渡邉選手は攻撃的な姿勢とゲームコントロールのバランスについて、こう言っています。


「もちろん自分がリズムに乗っているときはどんどん打っていこうと思っていますけど、やはり自分が核となるチームではないので、インサイドの青野(文彦)さんだったり、シューターの晃輔だったりがウチの核だと思うので、ゲームコントロールという意味ではそこを中心に組み立てています」


青山学院大学からパナソニックに入って2年目。昨年はエースガードの木下博之選手をベンチからバックアップしていましたが、今シーズンはその木下選手の怪我もあって、正ポイントガードとしてチームを牽引しています。この1年間の違いについて、渡邉選手はこう話しています。


「一番変わったのは試合に出ていることです。そこでいい経験を積めていると思います。学生じゃないし、来年は出られるだろうという感覚はまったく持っていなくて、シビアにやるように心がけてきました。今年プレイタイムがなかったら、次はどうなるかもわからない、試合に出ることを一番の目標しようと思っていたので、それが達成できていることはいいことだと思っています。オールジャパンはさらに一歩進んで、いかにヘッドコーチの期待にこたえられるかが目標なので、もちろんチームとしての優勝は狙っていますけど、自分自身も成長できるようにつなげていきたいと思っています」


今日の試合ではリンク栃木の田臥勇太選手を前にしても堂々とプレイしていました。今日の勝利も渡邉選手にとっては大きな財産になるでしょう。「(シュートは)乗っていたので放っただけ。それが入ったということです」と言っていますが、その結果、彼を守っていたリンク栃木の選手がヘルプに寄りきれず、金丸選手が必要以上のプレッシャーを受けることなくシュートを打てた場面もありました。そういう意味では渡邉選手の得点が、金丸選手の40得点に大きなアシストとなったといえるでしょう。


準決勝の相手はリーグで1勝3敗と負け越しているトヨタ自動車アルバルクです。 個人的な意気込みを聞くと、

「個人的にはチームが勝てば何でもいいです。得点を取れなくてもいいです」

と答えていました。「リーグの序盤で競り負けたゲームは、すべて自分がコントロールできなかったせい」と振り返る彼にとって、チームの勝利こそがすべてなのでしょう。それでもやはり今日のような攻撃的な姿勢を見せることで、周りも生きてくるはずです。ゲームをコントロールしつつも、果敢にゴールへと向かう渡邉選手に注目したいと思います。

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