現地レポート

情熱はいまだ衰えずRSS

2013年12月24日 12時04分

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ダグラス・マッカーサーが「老兵は死なず、ただ消えゆくのみ」と言ったのは1951年のこと。朝鮮動乱のさなかに職務を解任され、米国上下院合同議会で行なった最終演説のなかで、当時流行っていた歌のなかから引用し、発したものだ。


ウインターカップ2013に初出場を果たした千葉英和(千葉)の森村 義和コーチは御年75歳。今大会最年長のコーチである。ただその姿はけっして75歳には見えない。知らない人に彼の年齢を告げれば、流行りの言葉でいえば「じぇじぇじぇ」と驚くに違いない。自身は「年齢のことはあまり触れてほしくない」と笑うが、それでもすでにプログラムにも掲載されているのだからとお許しをいただいた。


その千葉英和が県立岡豊(高知)を[83-51]で破り、ベスト16に進出した。


「藤岡 麻菜美(現・筑波大学 2年)が3年生のときにインターハイに初出場をして、そのときもベスト16まで進出しました。大会は違いますが、同じ初出場でベスト16というのは経験がいいね」


 



そう言って笑う森村コーチだが、実は知る人ぞ知る名将である。今年40年ぶりにインターハイを制した京北(東京)の、その40年前の優勝に導いたのが森村コーチなのだ。ウインターカップでも30大会前――当時は「春の選抜大会」――に京北が優勝に導いている。そう聞けば「あの森村さんか…まだコーチをされているのか」と思う方もいらっしゃるかもしれない。


バスケットのスタイルとしては、そのころと大きな変化はないと森村コーチはいう。


「チームとしての約束事はありますが、型にははめない。京北のときと一緒。選手が主役だからね。練習でやっていることをやるだけで、ノビノビとプレイさせていますよ。練習中も、試合中も怒ることはないですね」


その言葉どおり、ベンチでは常に椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばして、手は膝の上に置いて、選手たちのプレイを見守っている。たまに声をかけて、プレイを修正させるくらいで、あとはただジッとゲームを見ている。齢75にして、何が彼の原動力となっているのか。そう問うと、こんな答えが返ってきた。


「やっぱりバスケットが好きなんですよ。生活の一部…いや、今は全部かな。ほかに趣味もないし、すべてがバスケットのため。それが楽しいんだ」


高校バスケット界の“老兵”の情熱はいまだ衰えず、消えゆくこともない。


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