現地レポート

完全復活した愛すべき笑顔RSS

2013年12月28日 16時06分

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思い切り笑いたいのに笑えない――優勝インタビューのテレビカメラの前でそんな心境になるとは思っていなかった。でもそれは名誉の負傷である。


「第2ピリオドだったか、第3ピリオドだったか、ルーズボールを追いかけたときに欠けてしまいました」



そう言って桜花学園のキャプテン、山田 愛選手は前歯を見せる。


思えば苦難の連続だった――「第2回FIBA U-17女子バスケットボール世界選手権大会」で活躍した昨年のウインターカップ直前に、右膝の前十字靭帯を切ってしまった。そこから約1年間の戦線離脱。東京国体で試運転をして、今大会での完全復活を果たそうとしたが、直前合宿で捻挫をしてしまう。体力とゲーム勘を完全に取り戻せないまま試合に臨み、昨日の準決勝、聖カタリナ女子戦では勝ったものの、それが露呈してしまう。しかもファウルアウト。笑顔が持ち味の山田選手から笑顔が消えた。


「昨日は声が出せていなかったし、表情も悪かったって反省したんです。ポイントガードの私がそれをしてしまうとみんなに伝わってしまうので、今日はそうならないようにしようって思いました」


やるしかないと覚悟をくくったその言葉どおり、決勝戦は最後まで声を出して、チームメイトを鼓舞し続けた。前歯も気にならないわけではなかったが、表情も悪くならないように心がけた。ファウルだって第4ピリオドに4つ目を吹かれたが、「いつの間にか4つもファウルしていて……でも次にファウルをしてしまうと優勝のコートにいられなくなってしまう。それはいやだ、もうファウルしないでおこう」と思って、最後までコートにし続けた。


そして歓喜の瞬間、顔を覆う山田選手。これまでの苦しさと、最後の最後に勝てた喜びが一緒になってこみあげてきたのだ。


「桜花学園での3年間は苦しさと楽しさが半々でした。卒業後は実業団に進みますが、そこでは楽しさが多くなるように頑張ります」


最後は欠けた前歯も気にすることなく、ニカリと笑って、チームメイトの待つ更衣室へと消えていった。



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