現地レポート

夏の日の2013RSS

2013年12月24日 18時32分

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class(クラス)という音楽デュオがいた。デビュー曲は「夏の日の1993」。発売されたのは1993年4月というから、今大会の出場選手はまだ生まれていない。ただ県立新潟商業(新潟)のハードなディフェンス――いかにも県立新潟商業らしいディフェンスを見たとき、その曲がふと思い浮かんだ。彼らにとって2013年の夏の日々は悔しくも長い、そして濃密な日々だったに違いないと思ったからである。


ウインターカップ2日目、育英(兵庫)を[102-49]で一蹴した県立新潟商業だが、今夏の北部九州インターハイには出場していない。中屋 廣昭コーチが同校の男子バスケット部を指導し始めてから初めてのことらしく、調べてみると「17年ぶりのインターハイがない夏」ということになる。



そこで中屋コーチは「初心に戻った」。ディフェンスから走るバスケットが県立新潟商業のバスケットスタイルである。それを16年間ずっと貫いてきたはずなのに、長身の選手が入ってきたことで、その高さを生かそうと持ち前の速さを封印してしまったのである。それがインターハイ予選で負けた落とし穴だったというわけだ。


「でも負けてよかったんだと思います」と中屋コーチは言う。負けたことで県立新潟商業のスタイルは何なのかと、改めて見つめ直すことができたからである。選手たちもまた中屋コーチのハードな練習に食らいついた。キャプテンの前田 祥太選手は今年の夏をこう振り返る。


「僕たちが壊してしまった伝統を取り戻そうと練習に取り組みました。関東の大学と試合をさせてもらったり、インターハイに出たチームと同じくらいの経験が、この夏にできたと思っています。そのおかげで夏の敗因となったディフェンスとリバウンドが少しは変わりました。今日のゲームでもそれを出せたと思います」


今日の快勝は中屋コーチにとっても、厳しい夏の日々を乗り越えた選手たちにとっても想定内ということなのかもしれない。だが本当に勝負がかかるのは明日、藤枝明誠(静岡)との2回戦である。藤枝明誠はインターハイの準優勝チーム。


「足元をすくいたいし、相手の嫌がるディフェンスをしたいですね。ただ高さもあるし、1対1の力もあるチームなので、やはりディフェンス、リバウンドが勝負の鍵になると思います」


中屋コーチがそう言えば、前田選手も続く。


「オフェンスの藤枝明誠にどれだけ自分たちのディフェンスが通用するのか、試したいと思います」


夏とは「まるで別人」になった県立新潟商業のバスケットに注目である。


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