現地レポート

流れを引き留めた定石の一手RSS

2013年12月29日 16時41分

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実力の差はほとんどなかった。それでも勝敗がついてしまうのがスポーツの世界である。


ウインターカップ2013の男子決勝は、明成(宮城)が福岡大学附属大濠(福岡)を[92-78]で破り、4年ぶり2回目の優勝を果たした。「終始、我々のほうがゲームをコントロールしながら、進めることができました。その時間の多さが勝因でしょう」と、明成の佐藤 久夫コーチは言う。


コントロールしたなかでも、勝利に結びつく1つの鍵を挙げるとすれば、第4ピリオドの残り8分43秒で佐藤コーチが取ったタイムアウトにある。明成が10点差でリードしている場面で、福岡大学附属大濠の津山 尚大選手が3Pシュートを沈め、7点差になった場面である。佐藤コーチはそれを「相手がリズムに乗り切る前にタイムアウトを取るのは定石ですよ」と言う。確かにそのとおりである。


だが、あの瞬間、3Pシュートを沈めて、意気揚々と追い上げ体勢に入ろうとした津山選手はタイムアウトのブザーを聞いて、嫌な顔をした。そして明成ベンチを一瞥する。


「3月に行われた『おきなわカップ』で対戦したときに、前半、僕のシュートがよく入っていたんです。そのときも久夫先生はタイムアウトを取って、そこからマークを厳しくしてきました。だから今日もまた、このあとマークを厳しくされるのかなって……」


実際にタイムアウトの後、津山選手はそれまで以上に厳しいマークをされている。「勝ちたいという一心で」3Pシュートを3本入れてはいるが、福岡大学附属大濠がチームとして流れに乗り、一気に追い上げるというところまでには至らなかった。その点で相手のポイントゲッターに嫌なイメージを与えた、このタイムアウトの意味は大きい。


「基本的にはタイムアウトは取らないようにして、選手の判断に任せるようにしていた」佐藤コーチの、この試合で取った唯一のタイムアウトがゲームを決めた要因の1つといっても過言ではない。


定石どおりとはいえ、相手に傾きそうな流れを素早く察知し、すぐにタイムアウトを取った佐藤コーチの決断もまた、あっぱれである。選手だけではない、コーチも含めたチーム力で明成は冬の王座を奪回したわけである。



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