現地レポート

真に強いチームを目指してRSS

2013年01月03日 18時44分

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作家であり、医学者であるオリバー・ウェンデル・ホームズの言葉に「この世で一番大事なことは、自分が『どこ』にいるか、ということではなく、『どの方角』に向かっているか、ということである」がある。その言葉に照らして言えば、デンソーアイリスの高田真希は今、ベンチにいるが、その視線はしっかりとチームの未来に向かっている。


昨年の決勝戦と同じ顔合わせになった3回戦、デンソーとJXサンフラワーズの一戦は、[46-72]でデンソーの完敗となった。だがそのコート上に女子日本代表のセンターであり、デンソーの大黒柱である高田の姿はなく、彼女はただコートの端でチームメイトを応援するだけだった。


「昨年8月の練習で、マッチアップしていたチームメイトに足を踏まれていることに気が付かず、ボックスアウトをしようとして振り向いた瞬間に足を捻って…右足の第五中足骨を骨折しました。」


大黒柱を失った代償は予想以上に大きく、9月に開幕したWリーグではレギュラーシーズンを9勝13敗、7位の成績に終わる。そしてその結果がオールジャパンの3回戦でJXと当たることにもつながるのである。そして今日の完敗――。


「自分がコートにいられないのはすごく残念ですけど、昨年のオールジャパン準優勝という成績は誰かがいたからの結果で、今年はその誰かが抜けて3回戦負けということは、デンソーがまだ本物のチームになっていない証拠だと思います。今はチームとしていい経験を積んでいるときだと全員が実感しなければ、ただ負けて終わるだけだとこの成績がずっと続いてしまう。自分もそのチームの一員であることを実感して、今をしっかりと過ごさなればいけないと思っています。」


ベンチで試合を見ていた高田は、試合そのものではなく、チームの現状をそう話す。スタメン出場したセンターがファウルトラブルになったことに触れても、話はいつしかチームの今後へと向いていく。



「自分が試合に出たときにもファウルトラブルはありうるし、調子が悪いときだってあるので、そのときに自分と交代した選手がしっかり役割を果たすために今があると思っています。」


デンソーに入って5年目の高田だが、その目が見つめる「方角」は間違っておらず、加えて、その言葉にはすでにチームリーダーとしての風格が備わりだしている。彼女の早い復帰をチームと同じように心待ちにしたい。


高田自身はWリーグのプレイオフ・ファーストラウンドには復帰したいと言っているが、その一方で「まだ練習もしていないし、練習に入れるかどうかもわからない」とも言う。今は我慢のときである。だがその我慢のときを乗り越えた先に、高田とデンソーの新しい未来は開かれる。


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JBL撃破を目指す2人の下級生ガードRSS

2013年01月02日 19時21分

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6年ぶりに大学日本一に輝いた東海大学がオールジャパンの初戦、JR東日本秋田戦を[80-61]と白星で飾った。東海大学といえば自他ともに認めるディフェンスのチーム。相手の攻撃を粘り強く守り、ボールを奪うと一気にゴールへと駆け上がるトランジションバスケットを得意とする。ハーフコートオフェンスになれば「全員でいいシュートシーンを作るように、みんなで動き、みんなでボールを動かしていく(陸川章監督)」


その起点となるのがルーキーのベンドラメ礼生である。宮崎・延岡学園のエースとして「ウインターカップ2011」で初優勝を果たす原動力となった彼だったが、東海大学に入るとそのポジションをポイントガードにコンバートさせている。


「最初はボールを運ぶだけでもオドオドしていましたが、関東大学リーグ戦やインカレなどを経験して、今ではボールを奪われないようにと意識するのではなく、チームをうまく動かすことを意識してプレイできるようになりました。プレイをコールするときも自信を持って叫べるようになりました。」


とはいえ、まだまだ1年生。体の当たりやゲームコントロールなど克服すべき点は多い。そこをカバーするのが2年生の藤永佳昭である。


「礼生は自分から攻めることのできるタイプで、ボクはオフェンスをコントロールするタイプ。ボールが止まっているときにボクが出ていって、ポンポン回したり、前に出したりして、流れをよくするように心がけています。オフェンスだけではなく、ディフェンスでは前からプレッシャーをかけることもボクの役割かなと。そういったことでゲームの流れが変わるので、自分が出たときには流れを変えることを意識してやっています。」


藤永のような先輩がベンチにいることでベンドラメも思い切ったプレイができる。彼自身、それを認めている。


「バックアップに先輩がいるのは安心というか、思いきりできるという気持ちになれるし、あとを気にせず、例えば第1ピリオドなら第1ピリオドだけに全力を出し切れるという気持ちはあります。」


一方の藤永はベンドラメをバックアップしつつも、彼の存在に刺激を受けている。


「練習では負けないように意識してやっているし、礼生が入ってきたことで僕ももっとやらなきゃという気持ちが出てきました。やっぱり礼生の存在は大きいですね。学年は違いますが、ポイントガードのライバルとして一緒に切磋琢磨できています。」



クイックネスで相手ディフェンスを切り裂くベンドラメと、激しいディフェンスで相手オフェンスの流れを断ち切る藤永。陸川監督は3人目としてケガからカムバックした3年生の和田直樹の名前を挙げて3人体制を示唆するが、今大会のメインはベンドラメと藤永の2人になるだろう。


明日の対戦相手はJBL7位のリンク栃木ブレックス。リーグ戦を見る限り田臥勇太が出てくるかどうかは微妙だが、得点力のあるポイントガード・梁川禎浩が調子を上げているようだ。


「相手はプロですが、プロという名前に負けないよう、自分ができることを精一杯やりたいです」


ベンドラメがそう言えば、藤永がこう締める。


「試合に出る出ない関係なく、チーム全員で声を出して戦っていきたい。JBLは手の出し方や体の使い方など、スキルだけではなく、そういったひとつひとつの動きがうまいと思うんです。ただボクたちもトレーニングをしっかりしてきているし、JBLのチームとは練習試合を重ねて経験も積んでいるので、やってきたことを出せれば、絶対に勝てない相手ではないと思います。ただ全員が『勝てるかな』と思っているようでは勝てません。『絶対に勝つ!』という強い気持ちを持って戦いたい。僕も礼生もウインターカップで優勝しているし、今年のチームがインカレで優勝したのもそういう勝つ気持ちを持っていたからなので、その気持ちを持って勝ちにいきます!」


今、この原稿を書いている目の前で、大学5位の筑波大学がJBL2で3位のアイシン・エイ・ダブリュ アレイオンズ安城を[80-67]で下した。越えられない壁ではない。天下の大泥棒、ルパン三世が言っている――なぁに、壁なんてのは…越えるためにあるんだ。


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トップリーグとしてシード枠を奪還せよRSS

2013年01月02日 17時33分

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前回大会ベスト8チームには、3回戦から出場するシード枠が与えられる。男子はJBL勢がその枠を全て確保しているが、女子はトップリーグであるWJBLが6つしか埋められていない。昨年は、インターハイ優勝校・神奈川県立金沢総合高校が秋田銀行を、インカレ準優勝・大阪人間科学大学が新潟アルビレックスBBラビッツをそれぞれ破り、ベスト8進出を決めた。その結果により今大会のシード枠には、WJBL上位4チームとともにインターハイ優勝校・桜花学園インカレ優勝校・大阪体育大学が割り振られ、明日の3回戦から登場する。


大阪体育大学との対戦を決める女子2回戦。関東ブロック予選を勝ち抜いた山梨学院大学を相手に、WJBL9位のトヨタ紡織 サンシャインラビッツが[57-52]と、辛くも初戦突破となった。不甲斐ない内容に、トヨタ紡織の司令塔#21渡邊 佳恵は、「試合前のウォームアップの時からダラダラしており、見かねたキャプテンが一喝したのですが、それでも締まらず、それが前半に出てしまいこういう結果になってしまいました。もっと点数を離して勝つべきだったし、できればベンチにいるみんなをコートに立たせたかったです」と話し、その後も出てくる言葉は反省点ばかり。


トヨタ紡織は昨シーズンW1リーグ1位(WJBL全体で見ると9位)、1シーズン制となった今シーズンも同じく9位。プレーオフ進出を逃したことで、既に今シーズンのWリーグを終えている。そのため、オールジャパンがトヨタ紡織にとって今シーズン最後の公式戦となる。 「1リーグ制になったことで、JXサンフラワーズという全ての面で上回る強豪と対戦することができ、すごく勉強になりました。その経験のおかげでリーグ戦では、トヨタに1勝することもできたと思っています。今大会も準々決勝で(JXと)当たる可能性があるので、どれだけ良い試合ができるかを試したいですし、チームとしても、個人としても成長したいです」と、渡邉は話している。


しかしその前に、シードで登場する大阪体育大学を倒さなければならない。その大阪体育大学出身の選手が4人いるトヨタ紡織。渡邊もその一人だ。 母校との対戦を前に、「インカレを優勝しましたが、毎年母校の目標はインカレ優勝ではなく、オールジャパンでベスト8に入ることやWJBLチームに勝つことであり、私たちの代もずっとそう言われ続けてきました。プレッシャーはあります。逆のベンチに中大路先生がいるのもまた恐いです」と、本音を吐いた。



トヨタ紡織・中川文一ヘッドコーチは、オールジャパンで13度(シャンソン化粧品を2度の4連覇を含む10回、富士通で3連覇)もチームを頂点に導いた名将である。 しかし、試合を終えた後のコメントは歯切れは悪かった。「弱いのか、自信が無いのか、よう分からんが、今シーズンは今日のような試合が多い。練習してきたことを強い気持ちで、前向きに出せるようになり、もっと逞しくなって欲しい」と、チームのメンタルの弱さを嘆いた。


 



あのウォルト・ディズニーの言葉に──現状維持では、後退するばかりだ──という名言がある。


2年連続WJBLを9位で終え、昨年のオールジャパンではJXサンフラワーズに3回戦敗退。明日、大阪体育大学に敗れれば、全てが現状維持となる。すでにWリーグのシーズンを終えたチームにとって、来シーズン開幕までの長い間、真剣勝負から遠のくことを考えても、実力が後退する可能性は否定できない。


「もう一度、JXサンフラワーズと対戦して成長したい」と言った渡邉はその言葉の前に、「(大阪体育大学の)先輩として意地でも勝ちたいです」と、強い言葉を残していた。 そして、名将は言う。「学生に負けてはいけない。まがいなりにもトップリーグのチームなのだから──」


WJBLチームがシード枠を奪い返すためにも、トヨタ紡織が現状を打破しなければ始まらない。


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