現地レポート

劇的ブザービーター!RSS

2011年12月23日 21時12分


これこそがバスケットボールの醍醐味と言っていいでしょう。「JX-ENEOSウインターカップ2011」の男子のマッチナンバー1番、福島・県立福島商業高と大阪・近畿大学附属高の試合は、劇的なブザービーターで【66-65】、県立福島商業高が逆転勝利を挙げました。



 



最後にシュートを決めたのは2年生の水野優斗選手。


「自分で行くつもりはなかったです…最後はキャプテンに任せようとしたんですけど、マークにつかれていたので、ボクがボールをもらいに行って、シュートを打ったら入っちゃったって感じです。ただボールをリリースした瞬間は『いけるかな』とは思いました」


県立福島商業高にとっては見事な、近畿大学附属高にとっては苦々しい3ポイントシュートはそうして生まれたのです。


ゲームの流れとしては、なかなか県立福島商業高の流れになる時間帯が少なかったように思います。何度緊張の糸が切れてもおかしくないような展開。でも彼らの集中力は切れませんでした。


「インターハイのときも1点差のゲームをして――北東北インターハイでは新潟・県立新潟商業高に1点差で敗れている――その経験が生きているのではないでしょうか。インターハイのときも離されても、追い上げてやるっていうのが…ウチのスタイルといっていいのかわかりませんが、そういうふうにしか入れないんです。でも精神面では強くなっていると思います」


そのように言うのは水野慎也コーチ。実はこの水野コーチと、逆転の3ポイントシュートを沈めた水野選手は親子なんです。そのことについて聞かれると、少し照れながらも


「息子が決めたということよりも、チームが勝ったことが嬉しかったです。近大附属もいいディフェンスをするチームだったので、ちょっと崩せないでいたんですけど、思いきりよくやった結果、40分を見据えてやりなさいと選手たちにも言っていたので、その結果だと思います」


福島といえば、やはり「東日本大震災」が頭に浮かびます。県立福島商業高もその影響は大きく、被災者の受け入れをして体育館が使えない時期があったそうです。また原発事故の影響で学校が休みになったりもしたそうです。でも水野コーチは「それは県内のどの学校も同じこと。影響があったとは思っていない」と言っています。




それでもやはり多くの人々は、被災した方々に勇気を与える意味でも、最後まで諦めない姿勢を示しているのではないかと思うわけです。創部80数年ということで、OBの方でしょうか、多くの年配の方々が応援に来られていましたが、そういった人々にも力を与えることができたのではないかと思います。


その話が出たとき、水野コーチは少し声を詰まらせながら、「テレビなどでよく言われている『勇気を与えるような』というような言葉は絶対に言ってはいけないと思ってきました。でもあの子たち(選手たち)はすごく苦労していると思います…」と言っていました。本当に苦労されたのでしょう。そして、言葉にはしなくても、やはりああいったプレイを見ると、見ている人間はおのずと勇気をもらうものです。本当にいいゲームでした。


もちろん忘れてならないのは近畿大学附属高の頑張りです。彼らもまた勝者でした。何度追いつかれても、また一歩自分たちがリードを広げるという精神力の強さは、県立福島商業高と通じるところがあったと思います。胸を張って、大阪に帰ってほしい。試合としては、勝利の女神は彼らに微笑みませんでしたが、この経験を次の舞台で生かして、次こそは勝利の女神を笑わせてもらいたい。お笑いの中心である大阪ですから、きっとやり遂げてくれるでしょう。


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