現地レポート

エースを輝かせる対角の存在RSS

2011年12月26日 13時54分

メインコートを賭けた女子の準々決勝が終わりました。準決勝のカードは――


愛知・桜花学園×北海道・札幌山の手
山形・山形市立商業
×岐阜・岐阜女子


インターハイ王者の神奈川・県立金沢総合は桜花学園に、インターハイ準優勝の大阪・大阪薫英女学院は岐阜女子にそれぞれ敗れました。今年の女子はどこが勝ってもおかしくない混戦状態。そのギリギリの戦いを制して、メインコートに立つことができるのですから、明日の準決勝はこの4チームに思いきり戦ってもらいたいと思います。


高校バスケットファンの方々は、札幌山の手の長岡萌映子選手と県立金沢総合の宮澤夕貴選手の直接対決を楽しみにしていたのではないでしょうか。開幕前には日刊スポーツにもそのような記事が出ていました。結果的に直接対決にはなりませんでしたが、やはりこの大会の中心になっていたのはその2人であることに間違いはありません。


その一方で、どちらのスーパースターも1人だけの力で勝ちあがってきたわけではありません。支える仲間がいてこそ、真のエースとしての存在感も増すわけです。


「萌映子さんにすべて頼ったら、相手も寄ってしまうので、自分で攻めることも意識して、うまく萌映子さんを使えるように心がけています。今年は萌映子さんがいない時期が多かったんですけど、いなくても自分たちだけで頑張ろうって思って、ずっと練習していました。自分としても、インターハイのときに萌映子さんへのパスがうまく出せなかったので、うまく入れられるようにフェイクやパスの練習をしたり、ちゃんと自分で攻めてから萌映子さんにパスをするように意識してきました。それでもまだディフェンスが寄っているのにパスをしてしまったり、萌映子さんばかりを見ているときがあるので、明日以降はもっと積極的に攻めていこうと思います」


そのように言うのは、札幌山の手の新堀京花選手です。2年生ながらスターティングメンバーに名を連ね、長岡選手に寄りがちなディフェンスを分散させるような攻撃を仕掛けています。彼女の存在、彼女の成長はチームにとっても、長岡選手にとっても心強いところがあるのではないでしょうか。


明日の対戦相手は百戦錬磨の名門・桜花学園です。長岡選手封じを必ずしてくるでしょうから、そのときに新堀選手をはじめとした周りの選手が勝敗のカギを握るように思います。しかも桜花学園は下級生中心のチーム。来年また対戦する可能性もあるわけですから、2年生の新堀選手としても“負けグセ”はつけたくないところでしょう。


もう一方の宮澤選手にも対角になる選手がいます。地味ながら体を張ったプレイで宮澤選手とインサイドでコンビを組む河瀬ひとみ選手です。宮澤選手も、長岡選手ほどではありませんが、たとえば「第1回3×3ユース世界選手権」に出るなど、チームにいない期間がありました。その間、河瀬選手は「私は宮澤のように外からキッチリ得点を稼ぐことはできないんですけど、ルーズボールのように気持ちで何とかなるようなプレイを意識して、チームに貢献できるようにと思って練習に取り組んできました」と言います。それは桜花学園のインサイド陣を向こうに回しても、しっかりとできていたように思います。


河瀬選手は宮澤選手の存在についてこうも言っています。


「チームメイトとしてはすごく心強いし、チーム内ではいい相手というか、自分にとってもすごく経験を積ませてもらっているし、そういった面ですごく勉強させてもらいました」


つまりは、いいお手本であり、いいライバルというわけです。「天井効果」という言葉があるように、近くに上手な選手がいれば、その選手に引っ張られてうまくなることはよくあることです。もちろん彼女の努力なくしてはありえないことですが、努力に「天井効果」も加わって、河瀬選手は県立金沢総合のスタメンの座、宮澤選手の対角の座を勝ち取ったのでしょう。この経験を生かして、大学でもぜひ頑張ってもらいたいと思います。


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