現地レポート

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2011年12月25日 14時00分

「JX-ENEOSウインターカップ2011」、女子のベスト8が決まりました。


県立金沢総合
桜花学園
東京成徳大学
札幌山の手
明星学園
山形市立商業
岐阜女子
大阪薫英女学院


以上の8校です。顔ぶれを見るとやはり全国でも「強豪校」と呼ばれるチームばかりです。もちろんそれはコーチやスタッフ、そして選手たちがこの大会に向けてしっかりと準備し、それをコートの上できちんと遂行した結果でしょう。「いいメンバーが集まっているから勝てるんだ」という考え方をする人もいるかもしれませんが、それだけで勝てるほど高校女子バスケット界は甘くないのです。


「ゲームの最初、弱気になってしまって、自分のプレイができなくて、そこから自分で奮起することができませんでした。でも最後まで諦めたくなかったし、いけると思っていたけど、プレイで示せなかったから…。3年間、いろんな人にお世話になったのに結果を残せなくて、本当に申し訳ないという思いでいっぱいです」


岐阜女子に敗れた愛媛・聖カタリナ女子の近平奈緒子選手はそう言って、目に涙を浮かべていました。試合終了数分前にベンチに下げられ、試合終了のブザーをそこで聞くことになったのですが、ベンチにいる間も、試合が終わった直後も涙を見せることはありませんでした。だがしかし、思いがお世話になった人たちに及ぶと涙腺をキッチリと止めることはできませんでした。


近平選手は昨年の「第1回FIBA U-17女子世界選手権大会」で第5位になったU-17女子日本代表のメンバーであり、今年9月にイタリアで行われた「第1回3×3ユース世界選手権」で銅メダルになったU-18女子日本代表のメンバーでもあります。しかし、そのイタリアでヘルニアを発症していまい、そこからは怪我との戦いでした。この大会も痛み止めを飲んでプレイしていたそうです。


「治療の期間を2カ月くらいもらっていたので、痛みも結構とれていました。だから腰の痛みを言い訳にせず、怪我のことは忘れて思い切ってやろうって思っていました」


と彼女は言います。確かにプレイは痛みを感じさせるものではなく、コンタクトの多いインサイドで、文字どおり体を張って、チームの大黒柱になっていました。


思えば、彼女を初めて見たのは、彼女が中学2年生のとき。「U-15女子トップエンデバー」に選ばれ、国立スポーツ科学センターで(当時はまだ味の素ナショナルトレーニングセンターができていませんでした)その合宿に参加していたのです。その当時から180cmくらいあり、接触を嫌がらず、苦手なフリースローを克服しようと一生懸命練習に取り組む中学生でした。そんな大人びた面を見せる一方で、バスケットシューズのラインがピンクという中学生らしさも当然ながら持っていたのです。その彼女が高校生活最後の試合を終えました。


「高校1年生のときはとにかく先輩たちについていくばかりだったし、中学のときも自分のプレイばかりを考えていたけど、高校3年生になったら自分のことだけではダメで、周りのことも注意しないかんし、後輩を怒ったりしないかんって、自分のことではなくて、周りを見れるようになったかなと思います」


それが試合中にけっして諦めることなく、追い上げてきたときに「前から、前から!」とチームメイトを鼓舞する力になったのでしょう。卒業後もバスケットを続けるそうなので、まずは怪我を治し、次の舞台でも高校時代に培ったものを生かして、さらに成長してもらいたいと思います。


 



成長といえば、同じ聖カタリナ女子の2年生ガード、田村未来選手はこの1年で大きく成長を見せてくれました。昨年のウインターカップでブレイクをした彼女ですが、そのときはとにかくゴールに向かうだけの「突貫娘」というイメージでした。それが1年経ち、今では聖カタリナ女子の正ポイントガードとして、ゲームをコントロールしています。この1年を振り返って、田村選手はこう言っています。


「昨年はただ思ったままにプレイしとったけど、今年はちゃんとディフェンスがこう動いたからこうしようとか考えて練習をしてきました。でもやはり今日の試合でも大事な場面で自分の本能でプレイして、ミスが出てしまったから、来年はどんなときでも頭を使ってバスケットができるようにしたいです」


今日のゲームではチームトップの18得点を挙げていますが、そのいっぽうで言葉にもあるように、両チームトップの8ターンオーバーを犯しています。彼女自身が望んでいるように、まだまだ成長の余地はありそうです。


来年は同じコートに立つことができませんが、それでも近平選手も田村選手もそれぞれの舞台で成長した姿を見せてくれるでしょう。彼女たちの「JX-ENEOSウインターカップ2011」は終わりますが、彼女たちの成長物語はまだまだ始まったばかりなのだから――。

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