現地レポート

連覇の中で開いた境地RSS

2011年12月28日 17時30分

今年度最後の女王は北海道・札幌山の手に決定しました!中盤までは山形市立商業に10点以上リードされていましたが、ファイナルスコアは【80-73】、逆転で大会2連覇を達成したわけです。


その立役者は何と言ってもキャプテン・長岡萌映子選手でしょう。長岡選手はご存知のとおり、今夏、長崎県大村市で行われた「第24回FIBA ASIA 女子バスケットボール選手権 長崎/大村大会 兼 2012年ロンドンオリンピックアジア地区予選」に出場した現役高校生での日本代表選手で、それ以外にもアンダーカテゴリー――高校生年代の日本代表――にも入っている、まさに将来の日本代表を背負って立つ逸材です。今日の決勝戦でも39得点・17リバウンドを記録しています。


そんな長岡選手ですが、この大会であることに気がついたと言います。それは、もっとチームメイトを信じていいんだという気持ちです。もちろんこれまでも仲間に助けられることはあったし、信じていました。しかしコートに立って、いざプレイをすれば、そう簡単に長岡選手を止められる選手はいません。だから自分でシュートを決めることができる。天狗になっているわけではなく、ただ出来てしまうのです。それが長岡選手からしたら、日本代表たらしめるわけですが、ウインターカップではどのチームも長岡選手を止めるために懸命です。プレイを徹底的に研究し、動きを読まれてしまう。2回戦、3回戦はそれでも得点を取れるのですが、上位になればなるほど、得点ができなくなってしまう。1つの世代を引っ張る者の宿命なのかもしれませんが、それでもやはり想像以上に苦しかったに違いありません。


しかし、昨日の愛知・桜花学園戦では、そんな苦しい時間帯、つまりは長岡選手が止められているときに、佐藤れな選手と新堀京花選手がアウトサイドから援護射撃をしてくれました。これが昨日の大きな勝因といっていいと思います。試合後、長岡選手はこう反省していました。


「序盤は自分が自分がと思いすぎて、周りが見えていませんでした。(佐藤)れなや(新堀)京花の3ポイントシュートが入っているのに、自分が苦しいシュートをしてしまいました。あそこは自分が引き寄せて、外にパスを出して、シュートを決めさせるとうパターンのほうがよかったんだけど、それをやるのがちょっと遅かったです。これからは相手もそうだけど、味方の調子も見ながら、どういう攻めをしなければいけないのかを考えなければいけないと思います」


しかし、自分が攻めるのか、それともパスで味方を生かすのかを判断することは、トッププレイヤーでも簡単なことではありません。特にパスに魅入られると、シュートを打つべきところでもパスをしてしまうクセがついてしまうこともあります。パスにはそんな魔力があるのです。それが今日の決勝戦の序盤で札幌山の手が苦しんだ要因だと思います。長岡選手がシュートに行けそうなところでもパスをして、結局、山形市立商業にペースを握られてしまう。長岡選手もそれを認めています。


「まだ勝負どころがわかっていないというか、序盤にどう突き放すかといえば、やはり私のポストプレイだと思うんです。相手の山形市立商業はディフェンスでしつこく手を出してくるチームなので、ファウルが多いという印象があったんですけど、そこを狙わなければいけないのに消極的になったことが、序盤の苦しい展開になったのだと思っています」


しかしながら、大会を通してそのことに気がつけたことは、やはり超高校級の日本代表選手だなと思います。周りの味方を生かしながら、自分の強みである破壊力のある攻撃をする。これができれば、長岡選手は本当に誰も止められない選手になると思います。


「昨年は町田(瑠唯)選手(札幌山の手2010年度卒業、現、富士通)みたいな素晴らしいポイントガードがいて、自分が使ってもらっていたような感覚だったんですけど、今年はそのような素晴らしいガードがいなかったので、自分がやらなければいけなかったと思っていたんです。そこを自分で切り開けたというか、自分が行って、周りを使うことができた大会だったと思います」


昨年あたりからほぼ休みなく、日本代表活動と札幌山の手高の活動を続けてきた長岡選手。日本のバスケット界で一番多忙な高校生だったと思います。特に今年は前記のオリンピック予選もあり、「第1回3×3ユース世界選手権」もあり、チームを離れることが本当に多かった。札幌山の手高の長岡萌映子選手としては苦しかったに違いありません。それでもやはり最後は長岡選手が2011年の高校女子バスケット界を締めくくってくれました。


「インターハイの前後でチームを離れていて、みんなとの合わせができなかったし、個人的にもやらなければいけないところがあったのに、それができなくてインターハイで負けてしまいました。でもシーズンの後半からはしっかりとチームに入ることもできましたし、みんなとプレイを合わせることもできて、なおかつ自分のプレイも出せたと思うので、すごく忙しい1年になりましたが、本当に勉強になりました」


高校卒業後はWリーグの富士通レッドウェーブに進むことが決まっています。今年度同様に、来年の6月にトルコおこなわれる「ロンドンオリンピック世界最終予選」に日本代表として選出されるかもしれません。どこに行っても、どんな大会に出ても「JX-ENEOSウインターカップ2011」で学んだことを忘れずに、思いっきり暴れ回ってもらいたいと思います。



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