現地レポート

「谷間の世代」とは言わせない――活躍する高校2年生たち!RSS

2011年12月24日 13時29分

今年の高校女子バスケット界を振り返ったとき、注目されるのが高校3年生と、高校1年生の世代でしょう。高校3年生の代は昨年の「第1回FIBA U-17女子世界選手権大会」で第5位になったり、今年の9月にイタリアでおこなわれた「第1回3×3ユース世界選手権大会」で銅メダルを獲得しています。その代表格が北海道・札幌山の手の長岡萌映子選手や神奈川・県立金沢総合の宮澤夕貴選手です。一方の高校1年生は、今月上旬におこなわれた「第2回FIBA ASIA U-16女子バスケットボール選手権大会」で優勝しています。


註:ただしこれらの大会は生年月日で出場資格が決まるので、日本でいうところの早生まれの、1学年上の選手も出場できます。FIBA ASIA U-16選手権大会では2人の高校2年生が出場しました。


つまりは高校3年生と高校1年生が注目の的というわけですが、高校2年生を忘れていいわけではありません。1年生よりも高校バスケを多く経験していますし、3年生とは違って「この経験を来年、自分たちが最上級生になったときに生かそう」という気持ちを――もちろん試合中にそんなことは考えていないと思いますが――持てるのも高校2年生の、ある意味で特権です。


今まさにおこなわれている「JX-ENEOSウインターカップ2011」の女子2回戦にも注目すべき高校2年生がいました。



1人は沖縄・県立西原の川上麻莉亜選手。彼女は北谷町立北谷中学3年生のときに「全国中学校バスケットボール大会」、いわゆる「全中」を制している選手です。しかし当然のことながら、中学と高校とでは体格、体力、テクニック、戦術などあらゆる面で違いがあります。大会そのものの雰囲気も違います。川上選手自身、そのことはすごく感じているようです。


「中学のジュニアオールスター(「都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会」)以来の東京体育館で、初日の昨日は雰囲気に飲まれて、あまりいいプレイができなかったんですけど、1日で修正して、今日のゲームはうまくできてよかったです。高校バスケットで全国レベルの先輩たちは経験も豊富だし、そのなかでやるのは難しいことですけど、これがあるからまた来年のウインターカップなどで爆発できる財産になるのかなと思っています。もちろん今年も頑張りますけど、来年はまた中学のときみたいに活躍したいです」


県立西原は今日、石川・県立津幡を倒してベスト16に進みました。明日は大阪・大阪薫英女学院と神奈川・相模女子大学の勝者とベスト8をかけて戦います。県立西原には川上麻莉亜選手と同じ「川上」姓の――姉妹ではありません――2年生、川上美嬉選手もいます。彼女も北谷中で全中を制覇したときのメンバー。明日の試合は2人の川上選手にも注目しましょう。



また7年ぶりにウインターカップに出てきた三重・県立四日市商業にも素晴らしい2年生がいました。松永桃子選手です。160センチながら、突破力のあるドリブルと、独特のパス感覚を持つ選手で、またシューティングガードを任されるほどの得点力もあります。今日の東京・東京成徳大学戦は両チームトップの28得点。またスティールも7つと、攻守でチームを引っ張っていました。しかし最後は東京成徳大学の高さの前に屈する形で、高校2年生時のウインターカップが幕を閉じました。


「シュートも打ちに行こうと思うとすごく高い壁があって、パスもしようとするとなかなかしにくかったです…ミスが多かったので、もっとミスを減らしていかないと勝てないなと思いました。ただ細かいところの合わせはできたので、そこはよかったと思いました。来年は今年よりもパワーアップして、インターハイでも、ウインターカップでももっと勝てるようにしていきたいです」


小学2年生からバスケットを始め、ミニバスケットでも、三重・桑名市立多度中学のときも全国大会を経験していません。高校生になって初めて経験した全国レベル。この経験を生かして、そして今持っている素晴らしい感性をさらに磨いて、来年、またこの舞台に戻ってきてもらいたいと思います。


アジアや世界で活躍をすると、当然ながら注目されます。それはとてもいいことですが、ウインターカップにはそんな有名校の注目選手以外にも素晴らしい選手がたくさんいるのです。高校3年生と1年生が注目されがちな今大会ですが、高校2年生は「谷間の世代」ではありません。すべての学年の中から素晴らしい選手を発掘して、自分のお気に入りの選手を見つけてはいかがでしょうか。


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クリスマスイブを最高の笑顔で!RSS

2011年12月24日 09時35分

先日、ブータンのワンチュク国王とペマ王妃が来日されたニュースを見ました。かの国では「国民総幸福量」という指標で精神的な豊かさ、つまりは幸せの尺度が示されるそうです。初めてその尺度を調べた国勢調査では、実に国民の約97%が幸せだと回答したそうです。


さて、本日「JX-ENEOSウインターカップ2011」の2日目はクリスマスイブです。捉え方にもよるでしょうが、高校生時代のクリスマスイブを、東京体育館で、大好きなバスケットをして過ごせるのは、なんとも幸せなことだと思います。今日、試合がある選手たちは幸福度数100といったところでしょうか。


今朝の新聞広告に「サンタには誰がプレゼントを届けるのだろう」というキャッチコピーがありました。要はお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんに健康食品を贈りましょうという広告なのですが、これまで多くのものを与えてくれた人たちに、子どもたちから何かを贈るというのもクリスマスの見方としてはおもしろいのではないでしょうか。これをウインターカップで表現すると、これまで指導してくださったコーチやトレーナー、練習を陰からサポートしてくれたマネージャーにプレゼントを贈るのは選手しかいません。


もう1つ、新聞広告のキャッチコピーが目に留まりました。「教育は、子どもへの最高のギフトだ、と思う」という広告です。これを先ほどの広告と合わせてみると「勝利は、支えてくれた人への最高のギフトだ、と思う」とならないでしょうか。


幸せの象徴ともいうべきクリスマスイブの朝一番に「勝っても、負けても」という言葉は似合いません。今日おこなわれる28試合に出場する56チームの選手には、コーチのため、トレーナーのため、マネージャーのため、そして何より一緒に頑張ってきたチームメイト、チームを支えてくれたすべての人のために「勝利」という最高のギフトを贈ってもらいたいと思います。


本日は女子のシード校が登場します。男子も昨年の優勝校である福井・北陸、地元東京の京北、史上最年少で日本代表入りをした渡邊雄太選手を擁する香川・尽誠学園、そして秋田・県立能代工業が1回戦で登場します。それらすべての選手の最高のプレイこそ、見ている人たちへのささやかなクリスマスプレゼントです。


女子シード校登場試合


10:30 Aコート  明星学園(東京・高校総体3位)×県立小林(宮崎)
10:30 Bコート  県立金沢総合(神奈川・高校総体1位)×福岡大学附属若葉(福岡)
12:00 Aコート  県立新潟中央(新潟)×札幌山の手(北海道・前回優勝)
12:00 Bコート  相模女子大学(神奈川)×大阪薫英女学院(大阪・高校総体2位)


2011年のクリスマスイブを最高の笑顔で過ごしましょう!




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はじめてのウインターカップRSS

2011年12月23日 21時45分


「このままでは終わりません」。初出場の高知・高知中央の木伏智久コーチは囲み取材の最後をそう締めくくりました。


大会初日の今日、ウインターカップに初めて出場する13チームのうち、8チームがその舞台に立ちました。結果からいうと3勝5敗、つまり3チームが2回戦に進み、5チームが敗れていきました。



 



高知中央も敗れた5チームの1つ。同校の木伏コーチはこうも言っています。


「県内でやっているときには(リードを奪われていても、その相手を)捕まえられるところが、全国大会では捕まえられそうで、逃げられる。これがウインターカップなのかなとも感じました」


高知中央としてはオフェンスには自信を持っていたそうです。木伏コーチもその計算を立てていました。しかしウインターカップという真の日本一を決める大会のなかでは、その計算が狂ってしまうものです。エースの得点が伸びず、これまで幾度となくチームの流れをつないできたキャプテンの3ポイントシュートも今日はなりを潜めてしまった。


「これも全国大会かなと。子どもたちには失礼ですけど、私自身勉強させてもらいました。今度は全国で勝つバスケットを考えていかなければいけないと思います。今日の負けは私の責任です」


高知中央というのは、今、高知県内で唯一生徒数が伸びている高校だそうです。勢いがある。その勢いに乗じて、これからどんなチームに変わっていくのか、彼らの「JX-ENEOSウインターカップ2011」は終わりましたが、今後が楽しみです。高知県には明徳義塾がいますし、同じ四国には香川・尽誠学園という強豪校もいますので、彼らと切磋琢磨しながらレベルアップしていってもらいたいと思います。


宮城・聖和学園といえば女子の強豪校として全国にもその名を知られていますが、実は今大会、同校の男子バスケット部が初出場を果たしています。結果は【95-78】で長崎・西海学園に勝利、2回戦に駒を進めました。




 




「初戦突破が一番難しいことを、私自身が高校のときに経験していたので、選手たちが硬くならないようにミーティングなどでもおもしろい話をするようにしていたのですが、やはり試合になると選手たちは硬さが出てしまった。だから試合の途中から伝え方を変えてみたら、徐々に硬さがとれてきて、なんとか後半は聖和らしさが出てきたかなと。初戦を突破する難しさを自分がわかっていてよかったなと思います。もしかしたら前半のまま行ってしまったかもしれないので…」


そのように言う聖和学園の阿部昭弘コーチは、宮城・仙台高校の選手としてウインターカップを経験しています。高校時代の経験が、コーチになった今、生きたというわけです。しかも恩師である佐藤久夫コーチ率いる明成を宮城県予選の準決勝で、今年のインターハイに出場した東北学院を決勝で破っての出場です。


「宮城代表としてのプレッシャーはボクだけがすごく感じていました。だから変なバスケットをしたら帰れないなと。ましてや恩師に勝って出場を決めた大会なので、やはり恥ずかしい内容では終われないと思っていました」


激戦区を勝ち抜いたという自負と、そのプレッシャーに打ち勝ったことで、ウインターカップの壁を乗り越えたのでしょう。もちろん東日本大震災を乗り越えたことも彼らの――それは聖和学園だけではなく、影響を受けた東北の高校すべてにいえることですが――最後まで戦う力になったのではないでしょうか。


明日は男子の残り5校と、女子で1回戦を突破した相模大学女子と郡山商業が、今大会の初出場組としてコートに立ちます。どんな結果になるにせよ、自分たちのバスケットを最後まで、たとえ計算外のことが起きたとしても、やり抜いてもらいたい。初出場組がウインターカップの舞台にのみ込まれず、ノビノビと戦うことを祈っています。


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