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FIBAオリンピック世界最終予選 大会最終日 現地レポート

2012年7月2日

 ロンドンオリンピック世界最終予選 最終日。ロンドンオリンピックに出場できるのは世界から勝ち上がった12チームのみ。すでに11チームの出場が決まり、残す1枠を賭けてハヤブサジャパン女子日本代表チームはカナダ代表と対戦。勝った方がロンドンオリンピック最後の出場国として名乗り上げる大事な試合を迎えました。

 これまでの合宿中に伺って来た選手たちのコメントの中で、ふと思い出す言葉があります。4年に1度のオリンピックにおいて、出場できなかった4年間という年月に対し、矢野 良子選手と山田 久美子選手は揃って「長い」と即答しました。出場を決めたチームにとっては、また違う時間の流れを感じているかもしれませんが、あと1歩のところで逃した4年間は、それ以前から積み重ねてきた努力もあり、余計に長く感じてきたはずです。そして今日、この試合に勝ってロンドンオリンピックへの切符をつかみ取ることしか4年前の悔しさを晴らすことはできません。

 ウォームアップから大きな声で自らを奮い立たせ、気合いみなぎるハヤブサジャパン。しかし、気負いすぎたか試合開始から5連続でカナダにシュートを決められ、0-11と一方的に攻められます。たまらず日本はタイムアウトを要求。直後の攻撃で、#13大神選手がようやく初得点を決めます。ターンオーバーを誘う好ディフェンスから、#8田中選手の3Pシュートが決まり、追い上げにかかった日本でしたが、第1ピリオドだけで75%と高確率でシュートを決めたカナダが11-21とリード。しかし第2ピリオド、日本の連続シュートからスタートし、さらにディフェンスでは前からプレッシャーをかけ、点差を一桁まで詰めます。日本のディフェンスを縫うように、カナダは7番が連続3Pシュートが重くのし掛かります。日本も途中交代でコートに入った#7矢野選手が、いきなり3Pシュートを決め対抗し、31-37と6点差まで迫って前半終了。

 後半開始早々、カナダは7番の3Pシュート、さらに連続で加点され、第3ピリオド途中には35-49、14点差と再び点差を開けられます。第3ピリオド残り間際、#12吉田選手のコントロールから最後は#6間宮選手がブザービーターを決め42-52、10点を追いかけ、最後の10分に望みを賭けます。第4ピリオド、#8田中選手の3Pシュートから幸先良くスタートし、一気に51-54と3点差まで迫った日本。しかし、7番の3Pシュートで引き離されると残り時間も迫る中、なかなか思うように得点をつなげられず。最後は、ファウルゲームに持ち込み、相手のフリースローは落ちるも日本は得点につなげることができず、63-71で最後の試合を飾ることはできませんでした。同時に、オリンピック出場の夢も打ち破られました。

 今日の試合も、ホームのような声援に包まれ、また日本でもその期待が大きいことも分かっていただけに、勝ちたいという思いは強かったのですが、皆さんの思いに応えることができませんでした。
 ヘッドコーチ、そして選手たちの最後のコメントをご紹介します。

内海 知秀ヘッドコーチ
 選手たちは非常によく頑張ってくれました。この大会期間中で一番良い出来であったカナダに対して、戦う姿勢を持って向かっていった選手たちに、何が足りなかったというわけではありません。選手たちは勝ちたいという気持ちを持っていました。しかし、勝負の世界は何が起こるか分からず、相手に一番良いゲームをさせないようなバスケットをしなければいけませんでした。
 試合の出だしにマンツーマンディフェンスをしましたが、4番の大きい選手の対応ができず、簡単に点数を獲られてしまいました。それが悪いリズムにつながってしまいました。
 この大会を通して、チームとしても非常に強くなってきた部分を感じています。この日本代表が最初に集まった時に、「立ち向かう力、乗り越える力、日の丸の誇りの3つを持て」という話をして、チームを作ってきました。「立ち向かう力」と「日の丸の誇り」は付いたと思います。ただ、「乗り越える力」がもうちょっと足りませんでした。今後、それを乗り越えられるような選手になってもらいたいという話を試合後のミーティングでは話しました。

#13 大神 雄子キャプテン(JXサンフラワーズ)
 北京オリンピックを逃してから、何が足りないのかなと思ってこの4年間、いろいろなことをやってみようと取り組んできましたが、まさか世界最終予選前に怪我をするとは思っていませんでした。これも何か自分に与えられた試練だと思い、この3ヶ月間ロンドンオリンピックだけを目指してきたのですが、このような結果になってしまいました。自分の4年間の行動や取り組み方、どこまでやっていけば良いのか、間違えだらけだったのではないかというようないろんな思いが今はあります。日本代表としてこのユニフォームを着ている限り、結果を求められるので、本当に責任を感じています。

#8 田中 利佳選手(JXサンフラワーズ)
 出だしが良くなくて、そのままカナダに勢いを持って行かれてしまいました。最後は追いつく思いでプレイしてましたが、あと一歩、力が足りなかったです。オリンピックに行きたかったですが、ここで終わることに悔いはないです。ありがとうございました。

#7 矢野 良子選手(トヨタ自動車アンテロープス)
 欲を言えば、もう少し自分が流れを変えられば良かった、という部分はあります。ゲームの最初が悪いとなかなかペースをつかめないです。もう終わってしまったので、いろいろ言っても仕方がありません。自分にとってはこの大会が最後だと思っていました。その中で自分の仕事はできたと思っていますので、本当に悔いはありません。
 前回の世界最終予選は悔いの残る試合でした。今回はコートに出たら自分に出来ることをやろうと思って、1本1本を最後だと思ってプレイしていました。その点は4年前とは違って、悔いなくできたと思います。
 (後輩たちへ向けて)やっぱり何かが懸かるような試合は、気持ちの面でしっかり持ってるつもりでも、出だしで0-4などと先手を取られてしまうと、簡単に1本を返せないパターンになってしまいます。ゲームの入り方が悪い試合は、最後まで引きずることが多いです。その時に思い切り良くシュートに行ったり、前からプレッシャーをかけるディフェンスをするなど、悪い流れを切るプレイができる選手が出てくれば、そして気持ちが前に出てくれば、出だしが悪くても試合を通して流れをもっと自分たちに引き寄せることができるはずです。若い選手たちには、気持ちを前に出すことや粘ることをこの試合で学んでくれていたら良いなと思います。

#12 吉田 亜沙美選手(JXサンフラワーズ)
 ディフェンスは良かったのですが、その後のオフェンスのミスや足が止まってしまいました。3点差まで追い上げた時に引き離されたのは、カナダの選手の方が気持ちが強かったのだと思います。今日のゲームの最初は「インサイドを守れ」という指示だったのですが、どうしても3Pシュートを気に過ぎて外に開いてしまったことでインサイドから簡単にやられてしまい、崩れてしまいました。昨日の韓国戦では1発目のディフェンスが良く、自分たちのブレイクにつなげる展開ができましたが、それが今日は出せませんでした。今日の試合は自分たちのバスケットができませんでした。

#6 間宮 佑圭選手(JXサンフラワーズ)
 最初の出だしの部分で固くなってしまいました。大神選手が「リラックス」と声をかけていたのですが、昨日の韓国戦のような試合の入り方ができませんでした。リードされてもしっかりとついて行き、後半で逆転することを狙っていましたが、カナダの7番の選手に3Pシュートをやられてしまい、オールスイッチのディフェンスで対応しようとしたのですが、逆に自分がファウルしてしまい、カナダの思いのままのプレイをされてしまいました。今年の日本代表活動を通じて、自覚と責任、誇りという精神面の大切さを痛感しています。また、今大会を通じて、プレイの幅が広がったという手応えも感じています。

 多くの皆様のご支援、ご声援をいただきまして、ありがとうございました。