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「第9回JBAコーチカンファレンス」開催報告

2024年2月2日

トム・ホーバスヘッドコーチ(左)とゴードン・ハーバートヘッドコーチ(右)

会場にも多くの皆様にお越しいただきました

 2024年1月20日(土)、21日(日)の両日、日本体育大学 東京・世田谷キャンパスの記念講堂で「第9回 JBA コーチカンファレンス」が行われました。2023年に行われた「FIBAバスケットボールワールドカップ2023(以下、ワールドカップ2023)」を主な題材にしながら、チームマネジメントやチームビルディングについて学んでいきました。

 初日のトップバッターとして登壇したのは、ワールドカップ2023で3勝を挙げ、目標だったアジア1位を獲得、今夏のパリ2024オリンピックに出場を決めた男子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチです。ホーバスヘッドコーチは冒頭、「今回のワールドカップは私が経験してきたなかで、最も難しい大会でした」と認めます。そのうえで男子日本代表が試合をするうえで大切にしてきた、さまざまなデータを公開し、また必要に応じて強化合宿の練習風景も映像で見せながら、それらを検証・解説していきます。そして「すごくいいところもありましたし、一方でまだまだ足りないところもあります。足りないところはすごく勉強になります」と述べ、パリ2024オリンピックに向けて「これからまだまだ(成長する)チャンスは絶対にあります」と意気込みを語りました。
 続いて登壇したのは、ワールドカップ2023で初優勝を遂げた男子ドイツ代表のゴードン・ハーバートヘッドコーチです。ハーバートヘッドコーチは、男子ドイツ代表をワールドカップ優勝にまで導くまでのロードマップを、自らの経験を基にした哲学とともに語ってくれました。そのひとつに「逆境」についての考え方があります。「逆境がなければ、私たちは目的地に到達することはできません。逆境は私たちに立ち直るチャンスを与えてくれます」と言います。ワールドカップでの優勝もまさにそうでした。その予選でもある「FIBAユーロバスケット2022」の準決勝ではスペインに敗れています。打ちひしがれながら、彼らは2日後の3位決定戦でポーランドを破って銅メダルを獲得しています。ハーバートヘッドコーチも「ユーロバスケットでスペインに負けなければ、ワールドカップでの優勝はなかったでしょう」と認めています。
またワールドカップ2023でも、日本戦で主力選手の1人であるフランツ・ワグナー選手が負傷しました。それもまた「決定的な逆境の瞬間だった」と言い、そこで他の選手がステップアップしたことによって、「私たちは強くなった」と振り返っています。
 初日最後のセッションは、ホーバスヘッドコーチとハーバートヘッドコーチによる対談です。「チームの成果をあげるために~ヘッドコーチのチームマネジメント~」と題し、JBA指導者養成委員会の佐藤晃一氏がファシリテーターを務めました。それぞれが、それぞれの国の代表チームで、いかに選手やコーチとの関係性を構築していったかを語り合いました。また母国ではない国の代表チームを率いるうえで、それぞれの国の文化を学び、受け入れ、そのなかで生きることにも言及しています。
さらに、日本とドイツのゲームにも触れ、その後半(第3クォーター以降)こそが男子日本代表の正念場だったと認めています。ハーバートヘッドコーチが「日本の正念場はドイツ戦の後半にありました。彼らの雰囲気、エネルギー、そして戦い方にそれを感じました」といえば、ホーバスヘッドコーチも「前半を22点差で折り返しましたが、何をすべきかを変えなければ40点差で負けていたでしょう(実際は18点差で敗れています)。そうすれば次のフィンランド戦に勝つこともできなかったと思います」と言っています。後半の20分こそが、男子日本代表を48年ぶりに自力でオリンピック出場に導いた分岐点だったというわけです。

 2日目はまず、男子日本代表のテクニカルスタッフである冨山晋司氏が「ワールドカップの映像とデータの分析、スカウティングから振り返る」と題し、講演を行いました。どのようなスカウティングをしたのかを紹介するだけでなく、いかに情報を整理し、選手たちが理解・実行しやすいように伝えるかまで言及していきました。
その後、「男子日本代表チームのアシスタントコーチとしての役割とワールドカップの振り返り」と題して、コーリー・ゲインズ男子日本代表アソシエイトヘッドコーチと勝久ジェフリー同アシスタントコーチ(川崎ブレイブサンダース)、佐々宜央同アシスタントコーチ(宇都宮ブレックス)をスピーカーに、前記の佐藤晃一氏をモデレーターとして、オンラインで実施した座談会のビデオ映像が流れました。彼らがいかにヘッドコーチを支え、どのようにチームを形成していったが語られました。
最後のセッションは、特別企画として、Jリーグの横浜F・マリノスでコーチを務め、その後もヴィッセル神戸やコンサドーレ札幌などに関わり、今年1月からFC東京のチームパフォーマンスアドバイザーとしても活動されている福富信也氏を迎えて、JBA指導者養成委員会の今田圭太氏と「チームが成果を出すためのチームビルディング」をテーマに対談がおこなわれました。福富氏はチームビルディングの定義を「有形無形のすべての支援がチームビルディングである」とし、チームを形成するうえで大事だと言われる「一体感」とは何か、多様性を受け入れることが求められる時代に、どのようにチームビルディングをしていくのか、そこで求められる「心の安全」とは何かなど、さまざまな角度からチームビルディングについて語られました。
 クロージングではJBA指導者養成委員会の鈴木淳委員長が登壇し、「初日に講演と対談をされたホーバスヘッドコーチとハーバートヘッドコーチが普段指導している現場と、皆さんが指導している現場は異なります。彼らの考え方と、皆さん考え方も違うでしょう。結果を残した彼らが『すごいから、その考え方、手法を取り入れよう』とすることも大切かもしれません。しかし彼らの考え方を何らかの形で自分自身に取り入れようとするならば、まずは自分自身の価値観を疑わないといけません。自分自身の考え方を見直してみる必要があります。そうしないと本当の学びにはなりません」と言及。さらに「コーチとしての存在価値は専門的知識や技術を持つことだけにあるのではなく、むしろそういった蓄積されたものに安住することなく、状況に応じて自分を進化させ、イノベーションを生み出すといった考え方を持ち、行動をとっていくことこそが、2日間、皆さんがこのカンファレンスを参加した大きな意味ではないでしょうか」と参加者に語りかけました。今回のコーチカンファレンスを通じて知り合った仲間たちとともに学び続けることが、JBAの理念である「バスケで日本を元気に」にもつながるとし、今回のJBAコーチングカンファレンスを終えました。

 ※「第9回JBAコーチカンファレンス」の様子は期間限定でオンデマンド配信を行います。
オンデマンド配信での視聴をご希望の方はこちらのご案内をご覧いただき、お申込みください。
「第9回JBAコーチカンファレンス」オンデマンド配信 申込受付開始のお知らせ【2月5日申込締切】http://www.japanbasketball.jp/coach-news/73329