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2021年度全国バスケットボールコーチクリニック 開催報告

2021年8月25日

プレーヤーズ・センタード・コーチングの考え方、手法についてはJBA指導者養成部会の今田氏より紹介

USA Basketball のユース&スポーツデベロップメントディレクターであるドン・ショルター氏

 当協会 (JBA) では、去る2021年 8 月21日 (土)、22 (日) の両日、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点より、オンラインにて「2021 年度全国バスケットボールコーチクリニック」を開催。全国コーチクリニックとしては過去最多の両日で述べ2,130人の方々にご参加いただきました。

「コーチング 〜何を教えるかではなく、どのようにプレーヤーを導くか〜」をテーマに、「プレーヤーズ・センタード・コーチング (=プレーヤーの学びに対する主体的な取り組みを支援するコーチング)」に対するセッションと、USA Basketball のユース & スポーツデベロップメント ディレクターとして活躍するドン・ショルター氏*とオンラインでつなぎ、コーチングフィロソフィー (哲学) やチーム規範、チーム文化の醸成などについて学ぶ機会となりました。

*ドン・ショルター (Donald “Don” Showalter) コーチ プロフィール
・USA Basketball ユース & スポーツデベロップメント ディレクター
・U16 や U17 のアメリカ男子代表のヘッドコーチ
・ナショナルチーム戦績 (62勝 0 敗) 10回金メダル獲得、教え子の中から50人ほど NBA 選手を輩出
・ハイスクールコーチ歴 42年間 (600勝以上の実績)
▼USA Basketball のユース & スポーツデベロップメントの活動
(1)ユース向けの活動ガイドライン作成
(2)コーチライセンスの認定
(3)スキルキャンプの実施

 
■クリニックの主な内容
◎ DAY 1:8 月21日 (土)
【セッション1】プレーヤーズ・センタード・コーチングの考え方
講師:今田圭太 (JBA 指導者養成部会)
<概要>
「学び続けるコーチ」を目指すためにも、プレーヤーズ・センタード・コーチングの考え方を事例とともに紹介
・プレーヤーの成長を中心にして考える=プレーヤーが主体的に成長できるようなコーチング
・コーチが果たすべき重要な役割は「環境作り」と「仕組み作り」
・学びを深める仕組み など

【セッション2】Transformational Coaching 変化をもたらすコーチング
講師:ドン・ショルター (USA Basketball)
<概要>
2 種類のポイントを例に、コーチングフィロソフィーを伝授
①ユース世代の練習に必要な 5 つのポイント
・マンツーマンディフェンス
・全てのプレーヤーに全てのスキルを
・楽しみながら教えること
・3on3 の練習が重要かつ有効的
・ゲームに対する愛情を育む「LOVE THE GAME」
②COACHES DNA (より良いコーチになるための 5 つのポイント)
・TEACHER (良い指導者であること)
・AUTHENTIC (信憑性のあるコーチング)
・ORGANIZED (整理された練習や考え)
・HUMBLE (謙虚さを持つこと)
・ADAPTABLE (どんな状況でも順応できること)

◎ DAY 2:8 月22日 (日)
【セッション1】プレーヤーズ・センタード・コーチングの手法
講師:今田圭太 (JBA 指導者養成部会)
<概要>
プレーヤーズ・センタード・コーチングに必要な 2 つの方法と 4 つの手法を紹介
①2 つの方法
・フリーズコーチング (練習を止めるコーチング)
・シンクロコーチング (練習を止めないコーチング)
②4 つの手法
・PUSH型 (コーチから伝える) とPULL型 (プレーヤーから引き出す)
・上記から派生した 4 つの手法=TELL (伝える)・SELL (提案する)・ASK (質問する)・DELEGATE (委ねる)

【セッション2】Coaching Beyond the X’s and O’s 戦術を超えたコーチング
講師:ドン・ショルター (USA Basketball)
<概要>
スキルデベロップメントとユースカテゴリーの成長を促すキーワードやその手法を紹介
①スキルデベロップメントに関する10箇条
・8 つのスキルに分けてベースとして考える
・一貫性が偉大さを生み出す (=継続は力なり)
・プレーヤーは常にスキル向上を目指す
・試合に合わせた練習内容にしなければスキル向上につながらない
・快適ゾーンは敵
・選択肢は幻想である
・練習から競うことで試合につながる
・成長を促すために完璧を求める
・個人のスキル開発から状況判断につなげる
・スキル練習は年中実施
②バスケットカルチャーに関する “4 つの C ”
・CHOICES (選択肢)
・COMPETE (競争)
・COMMUNICATION (会話)
・COMFORT ZONE (快適ゾーン)

■参加者からのコメント
・自チームでの今の現状が間違いだらけだったこと、コーチが主語になっていて、選手が中心ではなかったことに気付くことができました。選手たちとの関係性においてももっともっとたくさんコミュニケーションをとらないとダメだということがわかりました。そして、「わかった?」という発言を自分もしていたこと。自分に対して心に突き刺さるもの、刺激がかなりありました。
・今回の DON 氏のセッションは、直接会場で受けてみたい内容でした。はやく、世の中の状況が変わってほしいものです。今回も素晴らしい研修会ありがとうございました。また、次回を楽しみにしています。
・今は蔓延防止措置で練習自粛になっていますが、自粛があけたら、今回学んだことを選手たちにアウトプットし、私自身が間違っていたことを振り返りながら、選手と共に成長していきたいと思います。
・我々が学生時代に教えられた指導の中にも今回の考え方に近いものがあったのを思い出したので、先生はこの考え方を持っていたのかと40年近く経った今も感心します。その中で、特にプレーヤーが主体的に練習に関われる機会としてのプレー機会、考える機会は多分にありましたが、「発言機会」については当然に必要な要素でありながら表立って言葉にされなかったと思われ、まさに時代の流れでやっと認められてきたと実感すると共に再認識しました。「学び」と「ゴール」を常に結び付けて進めることが大変大切なことだということを学べました。

 ドン・ショルターコーチを講師に招き、アメリカとオンラインでつないだことで時差の関係もあって夜間の開催となりましたが、多くの方々にご参加いただき、今年度のクリニックも無事に終了しました。2 日目はチャット機能を用いて、コーチからの質問に対して参加者が積極的にそれぞれの考えを述べ、また Q&A の時間を設けることもでき、ともに学び合う機会となりました。オンラインでの可能性を感じることができ、JBA ではコーチ自身が学び続けることができる環境を今後も構築・提供していきます。

 また、今回のクリニック動画については後日オンデマンドでの配信を行います。
詳しい内容は資料「2021年度全国バスケットボールコーチクリニック動画 オンデマンド配信概要」をご覧いただき、ご希望の方はお申込みをお願いいたします。

 今後とも皆様のご理解・ご協力をよろしくお願いいたします。