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【北信越インターハイ現地レポート】男子準々決勝:仙台大学附属明成 vs. 飛龍

2021年7月28日

飛龍の原田裕作コーチ

飛龍#5山本愛哉選手

 新潟県長岡市でおこなわれている「令和3年度全国高等学校総合体育大会 男子バスケットボール競技大会」は大会4日目を終え、今大会のファイナル4が決まりました。福岡大学附属大濠(福岡)と中部大学第一(愛知)、帝京長岡(新潟)、そして仙台大学附属明成(宮城)です。また、この日から「FIBA U19バスケットボールワールドカップ」に出場していた福岡大学附属大濠の岩下准平選手と川島悠翔選手、仙台大学附属明成の山﨑一渉選手、菅野ブルース選手もチームに合流し、早速ゲームにも出ていました。

 その山﨑選手、菅野選手がいる仙台大学附属明成に61-119で完敗を喫したのは飛龍(静岡)です。

「高さの差はあると思っていましたが、高さ以外のすべてで負けたという印象です」

 そう振り返るのは、立ち上がりから仙台大学附属明成に圧され、第1クォーターだけで2つのタイムアウトを取らなければならない状況に置かれた飛龍の原田裕作コーチです。

「戦う姿勢がまったく違いましたし、球際の強さ、リングに向かう姿勢も違いました。またコンタクトをする際も、(仙台大学附属)明成の選手たちは大きいだけじゃなく、しっかりとした姿勢でボールを受けたり、ボールを受けられないときにおこなうターンも、低い姿勢でしっかりとおこなっていました。ウチはそうした場面で体が起きていました。本来小さいチームがしっかりやるべきところを、大きい選手がしっかりおこなっているところに差を感じましたし、選手たちもそれを感じて、浮き足だったように思います」

 その言葉どおり、第1クォーターだけで11-36と圧倒された飛龍。第2クウォーター以降、少しずつ今大会を勝ち上がってきた動きも戻ってきましたが、高さとファンダメンタルの精度で優る仙台大学附属明成を捉えることはできませんでした。しかし、収穫がなかったわけではありません。原田コーチは「今年のチームはインターハイに出られるような、力のあるチームではなかった」と振り返ります。そんな彼らがインターハイの出場権を得て、その準々決勝まで勝ち上がったのは「3年生を中心としたチームワークだ」と言います。

「自分たちには能力がない、高さもないということを全員で乗り越えようとする力は歴代でも一番あると思います。そのチーム力が今大会のベスト8まで勝ち進んだ原動力だと思います」

 結果的には完敗で終わった北信越インターハイですが、同じ世代のトップレベルと対戦することができたのは、飛龍にとって大きな財産と言えるでしょう。

 飛龍のガード、山本愛哉選手にとっても、この試合の経験は今後のつながるはずです。山本選手は身長が162センチ。それでも得意の1対1と3ポイントシュートで27得点・8リバウンド・7アシストをあげています。仙台大学附属明成もそれを嫌がってか、途中から山本選手を「フェイスガード」で守るほどでした。

「今大会中にも何度かフェイスガードを受けていたので、(仙台大学附属)明成もしてくるだろうとは思っていましたが、そこへの対応がまだまだだなと思いました」

 山本選手は層振り返ります。しかしあえて自分がセンターライン近くに位置することで、チームメイトの動きやすいスペースを取るなど、ガードとして冷静にゲームをコントロールしようとしていました。

「それでも自分は得点を取るのが役割なので、フェイスガードをされても、それをかいくぐらなければいけません。それが全然できていなかったことが悔しいです」

 終始、苦しい展開に置かれた飛龍でしたが、山本選手は最後の最後まで運動量を落とさず、少ないチャンスのなかでも果敢に攻め続けていました。

「どれだけ点差が離れても、自分たちは勝ち上がってきたチームです。自分たちに負けたチームの選手たちや、静岡県の関係者の方々の思いも背負ってプレーしたかったので、最後まで諦めずにプレーできたと思います」

 ただ自分たちの勝利のためだけではなく、敗れたチームの思いも背負ってプレーしていたからこそ、完敗のなかに何か光るものを見出せたのではないでしょうか。小事は大事を生む――飛龍の横断幕に書かれている言葉です。全国大会で上位に進むには何をしなければいけないか。ボールを受けるときの姿勢。ターンをするときの姿勢。練習中からそうした細かいところまで気を配ることが、大きな結果をもたらすのです。それを体感した静岡県の小兵チームのリスタートは、ここから始まります。