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【北海道インターハイ/現地レポート③】タフなゲームを勝ち抜いたからこそ得られる財産もある

2023年7月26日

北海道・札幌市でおこなわれている「令和5年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(以下、インターハイ」は大会2日目。男女の2回戦がおこなわれ、各地域のブロック大会を制したシード校も登場してきました。

男子2回戦に登場した四国ブロック大会の覇者、尽誠学園(香川)は、前日を100点ゲームで勝ち進んできた県立能代科学技術(秋田)と対戦し、96-81で勝利しました。結果だけを見ると15点差の快勝とも思えますが、そのゲームは0-12から始まりました。前日の勝利で勢いづく県立能代科学技術に対して、今日がインターハイ初戦となる尽誠学園は硬さが見られ、シュートがなかなか決まりませんでした。

しかし、尽誠学園を率いる色摩拓也コーチはタイムアウトを取ることなく、メンバーチェンジで流れを断ち切ろうとします。それを具現化したのが1年生の金山颯選手です。今年3月におこなわれた「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2023」でベスト5に選ばれたルーキーは、持ち味である緩急を使ったドライブで両チーム合わせてもトップタイの33得点をあげています(もう一人も尽誠学園 #13宮崎忍選手)。それだけではなく10リバウンド、8アシストと、もう少しでトリプルダブルを達成しそうな活躍を見せました。

色摩コーチも「彼は意識が高く、すでに自分で練習を考えられる子です。それでいて結果を残したからといって、(自分はすごいなどと)勘違いをするような子でもありません。」と評価するとおり、試合後のコメントでも落ち着いて言葉を発します。
「個人としては自分の持っているプレーを思うとおりに出せたというか、いい内容だったと思います。ただチームとしてはゲームの出だしのもたついてしまったことと、ディフェンスの強度を上げるのが少し遅かったので、そういうところを次から改善して、また一つひとつ勝っていけるように頑張っていきたいです。」

同校が渡邊雄太選手(フェニックス・サンズ)の母校であることは、金山選手も知りながらも、「背は低いけれど、自分たちのやらなければいけないことをやりきって、背の高いチームを倒していくチームカラーなので、自分のプレースタイルに合っているかなって思って、尽誠学園を選びました。」と言います。
まだ入学して4ヶ月しか経っていませんが、尽誠学園での日々は間違いなく彼を成長させているようです。

「色摩コーチの考えていることは、当たり前ですが、僕が考えていることよりはるかに上を行くものなので、そうしたバスケIQの高い指導者から教えてもらっていることで、毎日すごくいい刺激を受けています。色摩コーチの言っていることが理解できないときもありますが、そのときは積極的に自分から『今のはこういうことですか?』と聞いて、なるべくガードとして理解できるようにやっています。」
インターハイでも勝ち上がることで、さまざまな強豪校と戦うことができ、そのなかで、さらに色摩コーチの考え方に触れることもあるでしょう。尽誠学園のルーキーにとって、今年のインターハイは間違いなく飛躍の一歩になるはずです。

タフなゲームはシード校だけではありません。前日の1回戦を勝ち上がったチーム同士のゲームもタフなものになっていきます。岡山商科大学附属(岡山)は別府溝部学園(大分)に84-88で競り勝ち、明日の3回戦進出を決めました。
202センチのビッグマン、ロハンジュラ・ジョン選手にボールを集める別府溝部学園に対して、マッチアップをしたのは岡山商科大学附属のセンター、188センチの佐々木翔選手です。身長の高さとフィジカルの強さを誇るロハンジュラ選手に対して、チームとしてどう守るかをインターハイに向けて練習をしてきたそうです。

しかし別府溝部学園もそうした相手チームの対策は織り込み済みです。簡単にはポストアップをさせず、スペースを作って、裏へのパスを出すことでダブルチームをさせづらくする。個の優位性を発揮してイニシアチブを取ろうと考えたわけです。結果として、それが佐々木選手のファウルトラブルにもつながります。
ベンチに下がらざるを得なかった佐々木選手ですが、チームメイトの奮闘もあり、競り合う展開となって、終盤の出番につなげます。そこでもロハンジュラ選手へのパスを徹底する別府溝部学園でしたが、佐々木選手はファウルアウトすることなく、最後まで体を張り、逆転を呼び込みます。

そして岡山商科大学附属が逆転し、3点リードで迎えた最終盤。同点を狙った別府溝部学園の3ポイントシュートが外れたとき、ロハンジュラ選手とリバウンドを争い、それを確保したのが佐々木選手でした。しかもファウルを受け、ボーナススローも得ます。1本目を外し、2本目も外しましたが、相手の動き出しが早く、やり直しに。その1投を決めて、88-84。

「最後のリバウンド争いはもう必死っていうのが一番です。そのあとのフリースローはさすがに緊張してしまいました。やり直しの1投もいつもどおりではなかったですけど、気負わずに肩の力抜いてリラックスして打てました。」
チームだけでなく、個人としても苦しみながら、最後に勝てた要因を、佐々木選手はこう話します。
「やっぱり苦しい部分もありましたし、ファールもかさんでしまったけど、チームのみんなの応援や声かけがすごく力になって、ミスしても味方がいるから大丈夫っていうチーム全員で戦えたのが良かったと思います。」

チームを率いる納谷幸二コーチも今年の岡山商科大学附属は「全員バスケット」だと言います。ベンチだけでなく、応援席を含む全員で戦い抜いたからこそ、最後の佐々木選手のリバウンド、フリースローは生まれたのです。明日に向けて、佐々木選手は言います。
「チームの雰囲気はよくなると思います。やはりこの試合はチームにとって大きな財産になると思うので、この経験を生かして明日も、これからも頑張っていきたいです」

選手個々の頑張りはもちろん、そこに至るまでのチームメイトの働きがあってこそ、選手たちはそれぞれに輝いていきます。個々が特長を発揮し、それが1つにまとまってチームになったとき、その出力は最大になります。明日の3回戦も、男女ともにタフなゲームになりそうです。