ニュース
一覧へ | 「(公財)日本中学校体育連盟設立70周年記念 令和7年度全国中学校体育大会 第55回全国中学校バスケットボール大会」最終日(3日目) 大会結果 ~男子・金沢学院大学附属中学校(石川県)が初優勝、女子・京都精華学園中学校(京都府)が3連覇を達成し閉幕~ |
【鹿児島全中2025 最終日 大会レポート】最後まで成長を止めなかった中学生たち
2025年8月24日
「第55回 全国中学校バスケットボール大会 (以下、鹿児島全中)」は本日大会最終日を迎え、今年度の全中チャンピオンが決まりました。男子は金沢学院大学附属中学校 (石川) が初優勝を、女子は京都精華学園中学校 (京都) が 3 年連続 3 度目の優勝を果たしたのです。
女子決勝戦で四日市メリノール学院中学校 (三重) を 78-66 で破った京都精華学園中学ですが、チームを率いる山本綱義コーチは今年のチームを 「闘争心に欠けるチーム」と評します。しかし山本コーチが唯一、闘争心を持ってプレーすると認める #4 松田梨月選手が先頭に立つことで、#15 アニボグ ジェニファー チナザ選手にそれが伝わり、そこから他の選手にも変化の兆しがみられるようになったと言います。

(3 年連続 3 度目の全中優勝を果たした京都精華学園中学校)
「鹿児島に来てから、目には見えない彼女らの闘争心が見えるようになってきたので、もしかしたら、という思いも芽生えていたところでした」
加えて、下級生の頑張りも主力を担う上級生の闘争心に火をつけたようです。決勝戦でも、2 桁のビハインドを背負った第 3 クォーターに、山本コーチは 3 年生の主力メンバーから下級生の 5 人に総入れ替えをします。そこで下級生たちが奮闘し、流れがガラリと変わりました。四日市メリノール学院中学は休ませていた主力メンバーをコートに戻しますが、京都精華学園中学に傾いた流れは変わりません。そこから逆転勝利への流れが作られました。
京都精華学園中学は、予選リーグから決勝トーナメントの準決勝まで得点差の開く試合展開が多く、山本コーチはそこで下級生に経験を積ませようとコートに送り出していました。
「それが実は決勝戦で功を奏したと言いますか、第 3 クォーターの途中から下級生を出してオールコートマンツーマンにしたところで、相手が結構慌ててくれたものですから、第 4 クォーターは私たちのペースでバスケットができました」
メンバーの総入れ替えは山本コーチがよく使う「常套手段」だと言います。ただし、それも根拠のない作戦ではなく、大会を通じて選手の成長を見極めているのだと言います。
「何の根拠もなく下級生を使うのではなく、それまでに経験を積ませておいて、しかもエネルギーをグッと……一人ひとりはけっして大きなエネルギーではありませんが、それさえもグッと溜めておいて、大事な場面で無我夢中でやらせることが、今日の決勝戦でも功を奏したのではないかなと思います」

(大会を通して闘争心を培い、逆転での全中 3 連覇を自分たちの手でつかみとった)
戦略的な側面もありますが、一方で大会全体を通して選手たちが――京都精華学園中学で言えば下級生が、全中の舞台を少しずつ経験していたことでチームの危機を救う要素になったのです。チームとしての成長を止めなかったからこそ、3 連覇の記録を達成することができたというわけです。
男子の優勝校、金沢学院大学附属中学もまた、角田敏コーチが「成長し続けているチーム」と認めています。
昨夏の新潟全中では 3 位、今年 1 月におこなわれたジュニアウインターカップ2024-2025では 3 回戦敗退ですが、いずれも今年度の日本代表候補の選出された白谷柱誠ジャック選手 (現・福岡大学附属大濠高校) を擁する四日市メリノール学院中学に敗れています。その悔しさを糧に、鹿児島全中では準決勝でその四日市メリノール学院中学を破って、決勝戦に進出。決勝戦でも世田谷区立梅丘中学 (東京) を 58-43 で破って、開校 4 年目で全中初優勝を達成しました。

(開校 4 年目で全中初優勝にたどり着いた金沢学院大学附属中学校)
角田コーチは成長の過程をこのように話します。
「県大会やブロック大会などがあってこの全中に向かうわけですけれど、『それぞれの大会のために調整なんてしないよ。成長中だし、まだまだ伸びるよ』と選手たちには言い続けてきました。『練習試合を含めて、試合があって練習がある、試合があって練習がある。でも実はその試合と練習との間に何があるかが大切なんだ。試合と練習との関係だけだったら絶対に成長はしない。その間に、自分のなかでもっと伸びようとする気持ちとか、チームを伸ばそうという気持ちがあってこそ練習につながって、成長していくんだよ。試合と、もっとうまくなりたいという自分の心と、練習――この 3 点を通過しないと成長はないんだよ』と私は言い続けています」
準決勝の四日市メリノール学院中学戦では19得点、決勝の世田谷区立梅丘中学戦でも23得点をあげた金沢学院大学附属中学 #8 矢作拓真選手も 「1 日ずつ成長していくことが大切だと思って、練習をしていました。新チームになってからはシュートを積極的に狙いに行って、その確率を上げることを毎日しっかり意識して練習しました」と言います。
試合と練習の間に、ただ言われたことを練習するのではなく、自分がうまくなるためにどうすべきかを自分で考えて、それに取り組む。だからこそ、エースとしての役割を果たして、チームを全中初優勝へと導くことができたのです。
角田コーチも彼の成長に目を細めます。
「彼もやはり上手くなろうとして、自分で成長しようと思っています。本当に素直な子で、練習中でも『ここをやってみようよ』と言ったことはすぐにやるんです。そうして成長したところを褒めてやるとすごく喜ぶ。そういった繰り返しの中で、絶対に勝ちたいという思いも生まれてきて、だから自分とチームが融合していったのではないでしょうか」

(エースとしての存在感を示した金沢学院大学附属中学 #8 矢作拓真選手)
コーチに言われたことをする「自主性」と、自分がうまくなるために何をすべきかを考えて、それをする「主体性」。その 2 つを金沢学院大学附属中学でははっきりと区別していて、後者を大切にしていると言います。
#8 矢作選手だけでなく、多くの選手がうまくなるために、また強くなるために、主体的に練習に取り組んだことが彼らの成長と、チームの全中初優勝にもつながったのです。
2025年の全中は金沢学院大学附属中学と京都精華学園中学の優勝で幕を下ろしました。しかし2025年度の中学バスケットはまだ続きます。中学校の部活動を含めた全国大会としては、2026年 1 月に開催予定の「ジュニアウインターカップ」があります。それまでに全中出場チームが、そしてクラブチームや B ユースのチームがどこまで成長してくるか。選手たちにとっては努力の日々がこれからも続きますが、主体的に取り組むことによって、それが彼ら、彼女らの未来は広がっていきます。全中をひとつのステップにして、成長し続ける中学生たちにこれからも注目です。
*****
第55回 全国中学校バスケットボール大会 最終結果
〇男子
優 勝:金沢学院大学附属中学 (石川) ※初優勝
第 2 位:世田谷区立梅丘中学 (東京)
第 3 位:四日市メリノール学院中学 (三重)、京都精華学園中学 (京都)
〇女子
優 勝:京都精華学園中学 (京都) ※3 大会連続 3 回目
第 2 位:四日市メリノール学院中学 (三重)
第 3 位:八王子市立第一中学 (東京)、高石市立高南中学 (大阪)