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男子U18日本代表:エントリーキャンプレポート「受かりたい気持ちは強いのでガムシャラにやっています」小田 晟選手

2021年12月2日

積極的に声をかけポジティブなエネルギーを伝播する加藤 大智選手

ガムシャラにアピールする小田 晟選手

 来年開催予定の 「FIBA U18 バスケットボール アジア選手権大会 2022」へ向けた男子U18日本代表チームの代表候補選手選考を目的に、11月28日 (日)~12月1日 (水) の期間、2021年度バスケットボール男子U18日本代表チーム エントリーキャンプを実施。今夏に行われたFIBA U19 ワールドカップ 2021に携わった常田 健コーチと入野 貴幸コーチを中心に、世界と戦うためのファンダメンタルの強化を図りました。

 「コロナ禍で活動が止まってしまったために、この世代の選手を招集するのはU14ナショナルキャンプ以来となります」と常田コーチは言います。だからこそ、「目の輝きも取り組む姿勢も良く、こちらが求めることに対する反応が素晴らしい」と良い雰囲気で練習が進みました。新たに選ばれた「Tokyo Samuraiの選手たち(伊久江 ロイ 英輝選手、マックニール キシャーン 大河選手)や、ジェイコブス 晶選手(横浜ビー・コルセアーズ)ら新しい風がかなり刺激になっています。普段は高校同士でしか対戦していない選手が多い中、クラブで活躍する新たな選手たちがエントリーされてきたことで、これまで見てきた中でも今回は特に意識は高いです」と常田コーチは評価します。

 同世代のライバルたちとはじめてともに練習を行うエントリーキャンプは、おとなしいのが通例です。しかし、今合宿をはじめるにあたり、常田コーチは3つのことを選手たちに伝えました。

①ペイントタッチではなく、アウトナンバーにしていくためにもペイントアタックすること
②常にコミュニケーションを取ること
③リバウンドは泥臭く、献身的に取りにいくこと

 これまでの経験から入野コーチは、「コミュニケーションを習慣化させるためにも、練習前に伝えようと常田コーチと話し、ビデオを見せて意識づけしました。選手たちの反応もよく、少し声が出なくなっても指摘すればすぐに修正してくれました。それによって積極的にプレーし、強度の高さを保ったまま練習を遂行することもできました」という準備が練習の雰囲気を高めた要因です。

 最長身203cmの加藤 大智選手(静岡県立浜松西高等学校)は、「バスケ大国アメリカでも率先してコミュニケーションを取っている映像を見て、そこは見習わなければいけない部分だと思いました」と率先して声をかけ、練習を盛り上げます。普段はなかなか同等サイズの選手とマッチアップする機会のない加藤選手ですが、この合宿を通して「少ししか身長差がない選手でもガードやフォワードでプレーしており、たくさんの刺激を受けています」と話し、多くのことを吸収していました。

 常田コーチと入野コーチは、トム・ホーバスヘッドコーチ率いる男子日本代表の練習を視察し、早くもこの合宿で同じメニューを取り入れます。どのカテゴリーでも、今後誰がヘッドコーチになっても必要なスキルであり、克服しなければならない弱点であるリバウンドについて、「大きい選手こそボックスアウトをかけない傾向があります。自チームでは大きいために、そこまでしなくてもリバウンドが取れてしまっているのが原因です。しかし、アジアや世界で戦っていく上では、彼らよりも大きい選手ばかりです。『日常を世界基準に』と考えれば、大きいプレーヤーこそよりボックスアウトスキルを身につけていかなければいけません」という常田コーチは、常に声がけをしながら徹底させていました。

 また、パスに関してもコーチ陣は意識を高めさせています。男子日本代表合宿を視察したときに、「スキップパスの精度やスピード、コントロールを意識して練習していました。実際に、この合宿でも同じ練習をしたところ、思いのほかできない」と入野コーチは感じ、様々な練習の中でパスをスキルアップするためのメニューを取り入れていました。常田コーチも、「ドリブルがうまい選手は多いですが、強いパスを出せなかったり、距離が長くなると正確にパスができないことが多々あります。スピーディーなバスケットを目指すためには、絶対に必要なスキルになります」と話し、その精度を高めるための取り組みを行っています。

 この世代に対し、ポジションアップやサイズアップへのチャレンジは継続していきます。「その一方で、東海大学の河村勇輝選手や今回の男子日本代表に選出された富樫勇樹選手らガードのスペシャリストは、アジアを勝ち上がって行くためにも必要です」と常田コーチが言うように、ポイントガードは身長に関係なく選考対象となります。今回選出された190cm前後の選手の中には、普段からポイントガードを担う選手も増えてきています。

 「今までは身長やスキルがなかったことで、アンダーカテゴリーのキャンプに呼ばれる機会はありませんでした。今回はじめて呼んでいただき、受かりたい気持ちは強いので、ガムシャラにやっています」というポイントガードの小田 晟選手(中部大学第一高等学校)にもチャンスがめぐってきました。大きな相手と対戦する世界に視野を向け、「身長が低いので、ディープスリーやドライブからのフィニッシュの種類を増やして、大きい相手にも通用できるようにしていきたいです」とプレーの幅を広げています。

 今回招集された選手たちは、「能力があるのは当たり前です」という常田コーチ。「日本で素晴らしい活躍をしていても、国際試合に出るとその能力を発揮できない選手もいます」という中で、求められるのは「しっかりとコミュニケーションを取ってバスケットができる選手。また、常にインテンシティの高いバスケットをしようと努力する選手。それはどんなコーチになっても変わりません」というのが今回の選考基準となります。コミュニケーションを取り、まわりにポジティブなエネルギーを伝播でき、そのために積極的に取り組んでいるプレーヤーでなければ、海外では活躍できません。

 男子U19日本代表が、FIBA U19 ワールドカップ 2021で1勝もできずに終わったことがその基準にもなっています。どんなに準備をしていても、身長もプレーも想像を超えたレベルだったことで、優秀な選手たちでもパニックに陥ってしまいました。「うまくいかないという現実が、コート上でたくさん起こっていました。常にそれを想定したところにマインドを置いておかないと、能力だけで解決してしまうような日常では、大きな代償が来ることをU19日本代表の試合を見て痛感しました」と常田コーチは自責の念を込め、そこを基準に定めています。

 37名が招集されたエントリーキャンプですが、実際に大会に出場できるのは12名となり、約2/3は合宿しか経験できません。男子U19日本代表も最終合宿でその選考から落とされた選手がいました。「代表選考なので厳しいのは当然のことです。だからこそ、このエントリーキャンプでも何かを得て帰ってもらいたい」と両コーチは願い、落選した選手たちのその後の活躍を期待しています。

 日常から世界基準を意識させながら、「男子日本代表のヘッドコーチが代わっても、一気通貫の強化はこれまでと変わらず、私たちコーチ陣も選手たちも同じ方向を向いて強化していくようにしています」と入野コーチは力を込め、底上げを担います。