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2013未来をつなぐ北部九州総体(インターハイ) 大会第5日目 現地レポート -悔しい夏の新たな誓い-

2013年8月3日

 「平成25年度全国高等学校総合体育大会 第66回全国高等学校バスケットボール選手権大会(インターハイ)」は第5日目が終わり、決勝戦のカードは以下のとおり決定しました。

■男子
藤枝明誠(静岡) vs 京北(東京)

■女子
桜花学園(愛知) vs 昭和学院(千葉)

 女子は大方の予想どおり、一方は愛知・桜花学園が勝ち上がり、他方は愛媛・聖カタリナを5点差で退けた昭和学院が勝ち上がりました。さらに予想を進めると、桜花学園のほうが優勢ではないかと言われていますが、勝負は下駄を履くまでわかりません。それは男子の準決勝を見れば明らかだと言えます。

 地方ブロック大会や、春先に行われる様々な招待試合などでの結果を踏まえたときに、今年のインターハイでは、福岡・福岡大学附属大濠と宮城・明成が優勝候補の筆頭に挙げられていました。しかしその2チームを倒して決勝に進んだ2チーム、すなわち静岡・藤枝明誠と東京・京北がその予想を打ち破ったわけです。勝負は強い者が勝つのではなく、勝った者が強い。その意味では藤枝明誠と京北は、まさに真の勝者であると言えます。

 だからといって敗れた2チームが真の敗者かといえば、そうではありません。もちろん彼らのインターハイは幕を下ろしますが、インターハイは初日の現地レポートにも書いたとおり、秋の国体、冬のウインターカップに向けた第一歩なのです。

 福岡大学附属大濠の大黒柱、#14杉浦 佑成選手は茫然自失になりながらも、試合をこう振り返ってくれました。「(藤枝明誠の)#15角野 亮伍選手を止められなかったことと、相手がゾーンディフェンスを敷いたときに、最初のほうでうまく攻められなかったことが敗因だと思います」。その言葉どおり、藤枝明誠はゾーンディフェンスが効果的と見るや、最後までそのディフェンスで通し切り、一方の福岡大学附属大濠はソーンディフェンスの攻略に最後まで手を焼きました。途中、何度かいいアタックもありましたが、それが続かず、逆に藤枝明誠に速攻を出されるシーンが多くありました。また片峯 聡太コーチが言うとおり、「ゾーンの攻めに力を注ぐあまり、自分たちのディフェンスが崩れ、リバウンドを取られすぎました」。

 それらは杉浦選手も認めるところです。今後の課題を「リバウンドとシュートの正確さ」と言い、さらには「今大会では自分に厳しいマークがきて、周りのディフェンスが寄ってきたときにうまくパスが出せませんでした。もちろん自分が攻めなければいけない場面もあると思いますが、もっと周りのシューター陣を信用して、パスを出していきたいです」と言います。

 杉浦選手へのマークはこれからも厳しくなっていくでしょう。そうなったときに、今大会で得た経験を生かせるかどうか。それはこれから杉浦選手がどんな気持ちで練習に取り組むかにかかっています。まだまだ彼の高校バスケは終わりではないのです。

 明成の#5植村 哲也選手もまた、今日の準決勝で苦い経験を味わいました。これまでの試合では、植村選手の積極的にゴールにアタックしている姿が印象的でした。しかし今日の試合では、特に中盤、パスを回すシーンが多く、どちらかといえばおとなしい印象を醸していたのです。彼自身もそれを反省点として挙げています。「確かに中盤、自分でも積極性が足りなかったなと思います。最初のオフェンスでうまくいかなかったことが迷いにつながって、そこから思い切ったプレイができなくなったんです」。しかし第3ピリオドでベンチに下がり、「僕がやるしかないと思った」と言う植村選手は、再びコートに戻ると積極的にゴールにアタックしていました。しかし時すでに遅しでした。

 植村選手曰く「チームとしての連携は決して悪くなかった」明成ですが、京北の圧倒的な個の力の前に、ねじ伏せられてしまいました。それを受けて植村選手は「もっと個の力を磨いて、劣勢になったときに個の力で打開できるようにしていきたいです」と言います。 そして自分の迷いについては「この経験があるので、次からは同じ失敗はしません」ときっぱりと言い切り、これからはどんな状況でも積極的なプレイを見せると約束してくれました。

 京北がそうであったように、やはりゴールに向かうとする選手がいると相手は怖いものです。それを明成というチームバスケットの中でいかに組み込んでいくか。植村選手の戦いもまだまだ続くのです。

 気持ちを冬に向けているのは負けたチームばかりではありません。勝ったチームにもまた、すでに冬をイメージしている選手がいます。それは桜花学園の山田 愛選手です。山田選手は昨年10月に右膝の前十字靱帯を断裂し、昨年のウインターカップにも出場できませんでした。女子U-17日本代表として世界でも結果を残した選手だけに、今大会でその復帰が期待されましたが、直前のエントリー変更でメンバーから外れました。「復帰の照準をインターハイに合わせていたので、外れることになったときは少し残念でしたが、焦ってまた怪我をするのはよくないので、今回は応援に回ることにしました」と山田選手は言います。

 とはいえ、試合中にベンチ裏の応援席を見ていると、ほんの数メートル先にあるコートに入りたそうな表情を何度も見せる山田選手。やはり選手である以上、試合に出たいと思うのは当然と言えるでしょう。「正直なところを言えば、試合に出たいと思いながら見ています」と山田選手も苦しい胸の内を明かしてくれました。

 しかし今は我慢のとき。チームメイトを信じて、応援し続けるしかありません。そして秋の国体――国体の東海ブロック予選から復帰予定――、冬のウインターカップで再び自分の力を見せるんだと意気込んでいます。「怪我をしたことを感じさせないくらい、コーチにも周りで応援してくださる人たちにも『やっぱり山田は必要だった』と思わせるようなプレイをしたいと思います」。そういって笑う山田選手の目の奥に確固たる決意のようなものが見え隠れしていました。

 一足先にコートを去る者、コートのなかのチームメイトを見守る者――さまざまな選手の思いを包み込んで、インターハイは決勝戦を迎えます。

 2013未来をつなぐ北部九州総体(インターハイ)の試合結果は、大分県協会 大会特設サイトにてBOXスコア、レポートとともに掲載されています。また、JBA大会特設サイトでは、連日熱戦を繰り広げている今大会のフォトギャラリーを更新しています。是非、ご覧ください。