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2019年度 U13 ナショナル育成センター (男女) 第1回キャンプ 開催報告

2020年3月10日

真剣な表情で鈴木コーチの話を聞く選手たち

1 対 1 の攻防に取り組む

 2 月14日 (金)~16日 (日) の 3 日間、味の素ナショナルトレーニングセンター (東京都北区) で「U13 ナショナル育成センター」のキャンプが行われました。男子29名、女子30名が参加した今年度のキャンプは今回だけの開催となりますが、選手たちは最後までチームメイトにいい影響を与えながら、キャンプの全課程に取り組んでいました。

「今年度の U13 ナショナル育成センターは 1 回なので、さまざまな技術を伝達するのにも限界があります。であれば、彼らに持って帰る課題を与えながら、モノの考え方を伝えるようにしました」
 今回のキャンプのテーマを、メインコーチである鈴木良和コーチはそう明かします。

「彼らが成長したときに、どれだけ周囲にいい影響を与え、リーダーシップを発揮できるか。そう考えたときに、今回のキャンプで学んだことを周りに伝えていけるようなリーダーシップを発揮してほしいというメッセージを込めました」

 その成果はキャンプ 3 日目に現れていました。練習前に観たイチロー氏 (元 MLB 選手) の動画を見て「しっかりとしたリーダーを作らなければ、いいチームはできないんだなと思った」という岡田彩葉選手 (愛知・弥富市立弥冨北中学 1 年) が女子の中で最も大きな声を出して、疲れの見えてくる 3 日目でもチームの雰囲気を前向きにさせていました。

 もちろんそれは今回のキャンプで培ったというより、日々の練習の中で養われているものでもあります。
「小学生のときにキャプテンをしていて、そのときから積極的に声をかけるようにしていました。中学に入ってからも、学年に関係なく、全員に声を掛けて、全員の思っていることを積極的に聞き出すなど、自分からコミュニケーションを取るようにしています」
 そうした日々の積み重ねが、全国規模のキャンプでも生かされたわけです。

また、今回のコーチングのキーポイントとして「ベストを尽くす姿勢を文化にする」を掲げ、コーチが教え過ぎないようにしていました。それについて鈴木コーチはこう話します。

「ユース部会でも、課題を解決するコーチングをすべきなのか、課題を与えるコーチングをすべきなのかが、たびたび話題に上ります。もちろんできない選手をできるようにする、つまり課題を解決するコーチングもあるのですが、今回は限られた日程の中で彼らがすぐにできない課題を与えて、自分でできるようになる過程へと導いていくことを主眼に置きました。教えてあげるのではなく、成長を促すということです。選手の視点で言えば、コーチにうまくしてもらうのではなく、自分でうまくなるという意識を持つことです。それがベストを尽くす姿勢にもつながると考えたわけです」

 それもまた日々の取り組みとつながるのですが、キャンプで興味深いシーンがありました。南川陸斗選手 (広島・広島ドラゴンフライズ U15) が練習の合間――チームメイトがゲームをしていて、コートの外で待っているとき――にメモを取っていたのです。

「普段は練習後、帰宅してからノートにまとめるのですが、今回は 3 日間のキャンプで家に帰ってからだと忘れてしまいそうだし、今年は 1 回しかキャンプがないので特別感もあって、練習中にメモをしました。コーチが大事だと言ったことや、自分で思ったことをその場で記録しておけば、あとで見返すこともできて、次につながるかなと考えたからです」
 メモを取ることだけが記録の方法ではありませんが、少なくとも南川選手のそうした姿勢に、自らうまくなろうという意志を受け取ることができます。

 鈴木コーチはその 2 人の例以外にも「日々の成果」を見ることができたと言います。
「今年度の U13 は例年より身長の高い選手が多かったのですが、その選手たちがよく動けていましたし、メンタリティーとしてもリーダーシップを発揮できそうな選手たちが数多く集まっていました。3 日間の中でスキルアップした選手もいましたし、5 アウトの統一した規律の中で戸惑うような選手も少なかったです。それは 3 日間のキャンプの成果というよりも、ここに至るまでの日常のコーチングの成果が出ているように感じました。彼らの日常のコーチングが変わっているという意味で、例年以上に充実したナショナルキャンプになったのではないかと思っています」

 日常の先に未来はあります。
 閉講式では、よりよい体の使い方を指導してきた佐藤晃一スポーツパフォーマンスコーチがこんなメッセージを彼らに残していました。
「みなさんには、来年ぜひ U14 ナショナル育成センターに戻ってきて、新しく参加した選手の前でデモンストレーションができるようになっていることを期待します。そのためには毎日の積み重ねが大切です。みなさんが周りの選手にそれを伝えていくことで、日本のバスケット界全体が強くなっていきます」

 日々、一人ひとりがベストを尽くしていけば、未来は変わってくる。そのことを伝えた今年度の U13 ナショナル育成センターでした。



※キャンプの様子は、フォトギャラリーをご参照ください。