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平成24年度 U-18男子トップエンデバー開催報告

2013年3月31日

 毎年実施している育成プログラム「平成24年度U-18男子トップエンデバー」が、3月8日~10日までの期間、味の素ナショナルトレーニングセンターで行われました。全国の地方ブロックエンデバーから推薦された41名(うち1名は体調不良により欠席)の選手たちが、所属チームの練習とは異なる雰囲気の中で、それぞれが全国からピックアップされた選手である自覚を持って、3日間の練習に励んでいました。

 ディフェンス部門を受け持ったのは、今年度からJBAスポーツディレクターに就任したトーステン・ロイブル エンデバーコーチングスタッフ(以下、ECS)。母国ドイツでもジュニア世代の指導をしていた実績のあるコーチだけに、高校生たちの心を掴むのがうまく、激しいなかにも時折選手の笑顔が表れるような練習を行なっていました。

 ロイブルECSは日本の高校生たちについて「日本の子どもたちが一生懸命に練習をすることはわかっていました。この勤勉性はとても素晴らしい。またオフェンス技術はそこそこで、オフェンス面だけで言えば、日本はいいチームを作ることもできるでしょう」と言います。しかし「ディフェンスは、これも予想していたとおり、レベルが低く、基礎技術ができていません。トップレベルになるためには、ディフェンスの基礎技術がもっと進歩しなければいけないのです」。そう言って3日間徹底してディフェンスの指導をしていました。ヘルプポジションの正確な位置取りをするためのフットワークや、そのときの手の振り方まで細かな指導を行い、「ディフェンスで重要なことはサイズやスピードではありません。フットワークのテクニックと予測があれば、相手には素早いディフェンスに見えるんです。そんなちょっとしたことで、いいディフェンスになるんだよ」と選手たちに伝えていました。また日本が世界に対して劣るサイズについては「強くて、いいディフェンスをすればサイズは関係ありません。確かにバスケットにおいて小さいことが不利であるのは事実です。でもそれは仕方がない。いつまでも『小さいから』と言い訳をするのではなく、それを克服する方法を教えていくことが大切なのです」。

 一方でロイブルECSは、選手たちと同様に日本人コーチの育成も重要なことだと言います。いくら選手が高い意識を持っていても、コーチが異なる方向を向いていては選手のやろうとしている力が削がれてしまうからです。「日本として正しい方向性を見出し、その方向性に従ってみんなで日本のピラミッドを作ることが非常に重要です。そうしながら世界に通用する日本人コーチを育成していくことが、未来への次の大きなステップになるのです」。このロイブルECSの言葉は、まさにエンデバープロジェクトが目指している方向性そのものです。「国際レベルのスタンダードとは何か?」を、受講する選手たちだけではなく、各地方からサポートスタッフとして参加していたコーチに向けて発信していく。そうすることで、ここで学んだ「国際レベルのスタンダード」が地方ブロックエンデバーなどを通じ、全国津々浦々に広がっていけば、日本のピラミッドの底辺は正しく広がっていくことでしょう。

 しかしながら、選手にせよ、コーチにせよ、そういった国際基準の練習を合宿のその場だけやったのでは意味がありません。ロイブルECS自身も「トップエンデバーだけですべてが解決するとは思っていません」と認めています。「今回はトップの選手が集まって合宿を行い、トップのコーチが教える特別な状況です。そこで選手やコーチたちがエネルギーを発揮するのは簡単でしょう。でも明日はどうでしょう?明後日は?大切なのは、ここで得た精神を自分のチームに戻っても守り続けることです。そうすることで日本にとって強い土台ができるのだと思いますし、それこそがエンデバープロジェクトの目的ではないかと思っています」。

 今回はロイブルECSのほかにも、筑波大学男子バスケットボール部のヘッドコーチである吉田 健司氏、拓殖大学男子バスケットボール部のヘッドコーチである池内 泰明氏がECSとして参加し、主にオフェンス面の指導を担当されました。吉田ECSはディフェンスをつけた練習の中で「ディフェンスが頑張るから、オフェンスもそれを抜こうと頑張る。オフェンスが頑張れば、抜かれないようにディフェンスも頑張る。この相乗効果を大切に練習しよう」と、常に攻守の意識を高く持つことを強調していました。また、いくつかのシューティングドリルを指導した池内ECSは「これからは人にやらされるのではなく、自分でやる練習が大切になります。特にシュートに関してはさまざまなシチュエーションを考えながらやろう。それをできる選手が上のレベルでプレイすることができるんです」と選手たちにエールを送っていました。

 練習を終え、福田 惟吹選手(大阪・大阪学院大学高 2年)は「初めてのことばかりだったので、とても新鮮でした。練習についていくことに必死でしたが、楽しくて、勉強になることばかりでした。今回経験したことをチームに戻っても練習していきたいです」と充実した表情で答えてくれました。またJBAが今年度から実施した「ジュニアエリートアカデミー(ビッグマン)」を受講していた鶴田 美勇士選手(長野・東海大学付属第三高 1年)は、「エリートアカデミーで教わったステップをチームでやると、監督から『ステップがうまくなった』と言ってもらえたので、教わってよかったと感じていました。今回のトップエンデバーでは、改めて基礎技術の大切さを感じたので、これもチームに戻ってやり続けたいと思います」と、早くも次に向かう意欲を表していました。

 ロイブルECSの言うとおり、今回の合宿ですべてが変わるわけではありません。しかしながら、こういった積み重ねが日本のバスケットを進化させ、世界に近づくステップになっていくのです。