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2013未来をつなぐ北部九州総体(インターハイ) 大会第2日目 現地レポート -勝者にもまたドラマがある-

2013年7月30日

 「平成25年度全国高等学校総合体育大会 第66回全国高等学校バスケットボール選手権大会(インターハイ)」は大会2日目。シードだった男女各5校が登場し、それぞれのベスト16が決定しました。負けたチームは明日、もしくは明後日、地元に帰ることになります。そして残りの夏を、秋の国民体育大会、冬のウインターカップに向けた練習の日々に向けることになるでしょう。この大会を最後に部活動から引退し、受験勉強や就職活動へと切り替える3年生もいるかもしれません。彼ら、彼女らに敬意を表しながらも、インターハイは明日、ベスト8をかけた戦いに突入していきます。

 地元・大分代表の県立大分豊府を破った東京・明星学園は、明日、千葉・昭和学院と対戦します。昭和学院といえば、昨年のウインターカップで3位に入り、今年の関東大会でも優勝した注目校の1つです。明星学園は関東の新人大会でも、春の関東大会でも昭和学院に敗れています。その敗因をガードの#5島田 莉穂選手は「2回とも自分たちが構えてしまって、いつもどおりのプレイが全然できていませんでした。特に春の関東大会のときは3年生のプレイがうまくいかなくて、下級生に助けてもらうことがとても多く、それが敗因につながった」と分析します。だからこそ、3年生にとって最後のインターハイは、3年生が中心になってこれまで積み重ねてきた明星学園のバスケットを出していきたいと考えているのです。

 明星学園の椎名 眞一コーチも「明日が勝負」と力が入ります。「正直言って、今大会は他のことを考えず、昭和学院とのことだけを考えて練習してきました。その成果が出せるかどうかだと思います」。勝敗を分けるカギとして、椎名コーチも、島田選手も「激しいディフェンス」を挙げています。正確なプレイをするアウトサイド陣をあおり、強力なインサイドへのパスコースをいかに防ぐか。明星学園は「3度目の正直」で昭和学院越えを狙います。

 また本日、東北大会1位の宮城・聖和学園を破ったのは山口・慶進。昨年度ポイントゲッターして活躍した#4松本 愛美選手は、今年度からポイントガードにコンバートされました。村谷 勉コーチも苦渋の選択だったと言います。松本選手もまた、当初は「自分の売りである1対1がうまくできなくて、悩んだこともあった」と言います。しかし最上級生として臨む最後のインターハイ予選のころから、徐々にイメージが掴めてきました。「自分は1対1しかできなかったけど、強いチームを見ていると合わせがしっかりできています。だからまずは自分がボールのないところの動きを心がけるようにしたら、ポイントガードとしても『こうやったらうまくいくのかな』というイメージが湧いてくるようになりました」。

 最上級生として、エースとして臨む最後のインターハイ。聖和学園に勝ったことは嬉しいと言いながら、「でも目標はここじゃないので、明日も頑張ります」と気を引き締めています。彼女の目標とは日本一になることです。そのためには明日の岐阜・岐阜女子も突破しなければいけません。「岐阜女子はセンターも大きいし、ガード陣もしっかりしているチーム。自分たちは挑戦者なので、思いきりリングに向かって、自分のできることを相手にぶつけて、絶対に勝ちます」。

 ここ数年の山形・山形市立商業を見ていると、毎年誰かが怪我に見舞われる印象があります。今日の東京・東京成徳大学戦でも、試合には勝ったものの、#5遠藤 杏夏選手がパスカットに飛んだ直後、着地で膝を負傷してしまいました。高橋 仁コーチも「ディフェンスの足がある子だっただけに、彼女がいなくなるのは痛い」と悔しがっていました。相手の前にすばやく回り込んだ、見事なパスカットでしたが、その代償はあまりに大きかったわけです。試合後、遠藤選手とは同級生のキャプテン、#4吉田 園佳選手は「自分がもう少し頑張っていれば、怪我人が出なくても済んだのかなと思ったら…」と涙を流していましたが、他の選手がどれだけ頑張っていても、遠藤選手はあのパスカットに飛び込んだでしょう。それくらい絶妙なディフェンスだったのです。

 涙をぬぐった吉田選手は気持ちを立て直して、明日の愛知・安城学園戦に臨みます。安城学園はシード校の福井・県立足羽を倒して、勢いに乗っているチームです。全体的な高さもあります。「高さだけでは対抗できないので、スピードを生かしたドライブからの合わせなどを意識して戦いたいです。個人的には、センターだけではリバウンドが取れないと思うので、リバウンドにも絡まなければいけないし、今大会はアウトサイドの仕事も他の選手に任せ切りなので、明日はアウトサイドの仕事もしっかりと頑張りたいです」。

 1年生のときからゲームに出ていた吉田選手が目指すのは、自身が1年生だったときのキャプテン、大沼 美琴選手(現・JX-ENEOSサンフラワーズ)だと言います。彼女のオールラウンドな動きを自分もしていきたいというのです。明日の試合でそれができるかどうか。キャプテンが一皮むけるときかもしれません。
 さらに言えば、大沼選手のときも同級生に怪我人が出て、失意に暮れそうになるなかで国体準優勝、ウインターカップ準優勝を勝ち取っています。怪我人が出ること自体はけっして喜ばしいことではありません。しかし怪我をした仲間の分まで最高のパフォーマンスを見せたとき、吉田選手は一歩、大沼選手に近づきます。

 負けたチームにもドラマはあります。しかし、勝ってなお大会に残るチームにもドラマはあるのです。数々のドラマを抱えて、明日、男女のベスト8をかけた8試合が行われます。

 2013未来をつなぐ北部九州総体(インターハイ)の試合結果は、大分県協会 大会特設サイトにてBOXスコア、レポートとともに掲載されています。また、JBA大会特設サイトでは、連日熱戦を繰り広げている今大会のフォトギャラリーを更新しています。是非、ご覧ください。