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【鹿児島全中2025 第 2 日 大会レポート】敗北のなかに見えた成長の跡

2025年8月23日

「第55回 全国中学校バスケットボール大会 (以下、鹿児島全中)」は大会 2 日目。男女の決勝トーナメントの 1 回戦、2 回戦がおこなわれ、それぞれのベスト 4 が決まりました。

〇男子ベスト 4:金沢学院大学附属中学校 (石川)、四日市メリノール学院中学校 (三重)、世田谷区立梅丘中学校 (東京)、京都精華学園中学校 (京都)
〇女子ベスト 4:四日市メリノール学院中学校 (三重)、八王子市立第一中学校 (東京)、京都精華学園中学校 (京都)、高石市立高南中学校 (大阪)

 鹿児島市にある西原商会アリーナでおこなわれた男子の決勝トーナメントは、そのベスト 4 入りをかけて、1 回戦から白熱したゲームが続きました。第 1 試合でおこなわれた北谷町立北谷中学校 (沖縄) と実践学園中学校 (東京) の試合はダブルオーバータイムにもつれ込むほどの激戦です。
 その隣のコートでおこなわれていた日野町立日野中学校 (滋賀) と金沢学院大学附属中学とのゲームは、結果として 102-50 で金沢学院大学附属中学が完勝しています。日野中学としては完敗だったわけですが、だからといって日野中学に何も残らないわけではありません。
「以前までやったら、点差が開いたときにそのまま下を向いて、もう無理かなという態度がプレーに出てしまっていたんですけれど、今日の試合は最後の最後まで自分たちのバスケしよう、相手がどんなディフェンスをいてきても強気でプレーをすることであったり、諦めんと食らいつくことをプレーで見せてくれました」
 日野中学を率いる稲垣祐汰コーチは、完敗のなかでも光明があったと認めます。

リードを広げられても最後まで攻める姿勢を崩さなかった日野中学校 (写真は #6 角田康晴選手)

 というのも、鹿児島全中の出場権を獲得した近畿大会の決勝戦では京都精華学園中学と対戦し、30-101 の大差で負けています。第 1 クォーターこそ競り合ったものの、第 2 クォーターから突き放されると、選手たちは意気消沈。なすすべもなかったそうです。
 それが全中の金沢学院大学附属中学戦では、点差を離されても「最後まで気持ちも折れることなくやり続けられたので、そこは大きな成長かなと思います」と稲垣コーチは言います。
 そうした経験は、3 年生にとっては次のステージで、下級生にとっては来年度以降で、大きな成長の糧にもなります。
「プレー面や技術面で劣るところは練習で補っていかないといけないんですけれど、いざ試合になったとき、それでもやはり劣っている部分はどこかしらにあるものです。そこで自分がひとつやられたときに、次は守ってやろうとか、次は攻めてやろうという気持ちが全国の舞台を経験して、とても大事やなと思って、それを 3 年生が見せてくれたので、次の 1、2 年生に『日野中の思い』として引き継いでいけたらいいなと思っています」
 完敗も未来につながる貴重な財産というわけです。

 同じく決勝トーナメントの 1 回戦で対戦した東北学院中学校 (宮城) と中村学園三陽中学校 (福岡) の一戦は、残り 2 分を切ったところで東北学院中学が逆転し、2 回戦進出を決めています。中村学園三陽中学はあと一歩のところで勝利を逃してしまったのです。しかし、これもまた得るものがなかったゲームではありません。
 中村学園三陽中学は2026年度からの生徒募集を中止するなど、近年、いくつかの問題に直面していました。その結果、今年度のチームがバスケットボール部としては最後のチームとなり、メンバー構成も 3 年生 9 人だけです。その 9 人で九州大会を優勝し、昨日の予選リーグも 1 位通過をしています。成長がなければ達成することのできなかったことです。
「その点に関しては、本当に私たちだけでは成し遂げることができなかった結果です。昨年の新潟全中が終わって新チームがスタートしてから、県内外のクラブチームや、高校にもお世話になり、ほぼ毎週のようにゲームができる環境が、この 1 年間続けられたところが、この結果を残すに至っての大きな糧だったと思います」
 中村学園三陽中学の奥村健吾コーチはそう振り返ります。

いくつかの問題に直面しながら、9 人とスタッフで乗り越えた中村学園三陽中学校

 その奥村コーチの息子である #11 奥村碧斗選手はこう振り返ります。
「九州大会を優勝するのは本当にすごいことだと思うし、みんながこれまでいろいろあったかもしれないけど、バスケットをやめずに、そして諦めずにやってきた結果だと思うから、そこはしっかりみんなも、自分も含めて、よかったと思います」
 そして奥村選手はこう続けます。
「僕自身、中村三陽中学に進学して本当によかったって思いますし、今日の試合では 3 ポイントシュートがよく決まっていたと思うんですけれど、この 1 年間は 3 ポイントシュートをたくさん練習してきました。それもこの全中という舞台でたくさん決めるために練習してきたので、それが発揮できたことは自分にとっても嬉しいことですし、それ以上にこの 9 人で最後まで全中を最後まで戦えたことは初めての体験で、こういう体験ができてよかったなと思います」
 苦しく、混乱する時期もあったと思いますが、それでも 9 人の選手たちがバスケットボールを諦めず、ひたむきに取り組んできたからこそ、たとえ逆転負けを喫したとしても、どこかで誇らしさも感じられる鹿児島全中の決勝トーナメント 1 回戦だったのです。

 完敗にも、逆転の惜敗にも、成長の跡は確かに見て取れます。しかもそれにはまた次のステージという続きがあります。それこそが中学バスケットの醍醐味のひとつです。勝っても負けても、彼ら、彼女らの成長はこれからです。
 そうした日々成長を続ける中学生の、今夏のチャンピオンは明日決まります。