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FIBAワールドカップ2023[17-32位決定戦/最終戦]日本80-71カーボベルデ:パリ2024オリンピック出場決定「これが強いチームの在り方」渡邊雄太選手

2023年9月3日

今大会で敗れた2戦がオリンピックレベルという富樫勇樹選手

日の丸が似合う渡邊雄太選手

 「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」は17-32位決定戦のラストゲーム。男子日本代表はカーボベルデと対戦し、最終クォーターにゴールが遠のくも80-71で逃げ切り、世界から3勝目(2敗)を挙げるとともに、目標としていたアジア1位(大会結果19位)となってパリ2024オリンピックの出場を決めました。

 観客総立ちの大歓声を受け、日本一丸でパリ2024オリンピックへの切符をつかむ戦いがティップオフ。立ち上がりからジョシュ・ホーキンソン選手(サンロッカーズ渋谷)が、河村勇輝選手(横浜ビー・コルセアーズ)とのコンビプレーで次々と得点を重ね、富永啓生選手(ネブラスカ大学)が1本目から3ポイントシュートを沈めます。エンジンのかかった河村選手と富永選手がさらにチームを勢いづかせ、50-37で前半を終えます。

 第3クォーター終盤までは6/6本、100%の成功率で3ポイントシュートを決める富永選手。73-55、第3クォーターを終えて18点差をつけた日本が、目標達成までのカウントダウンがはじまります。しかし、「第4クォーターはもう大変でした」とトム・ホーバスヘッドコーチが振り返るとおり、緊張なのか、見えないプレッシャーなのか、パタリと日本の得点が止まりました。

 日本が得点を決めたのは残り2分48秒、テクニカルファウルをもらった比江島慎選手(宇都宮ブレックス)が決めたフリースローで74点目。その間、カーボベルデに68点まで追い上げられ、その差は6点。これまでもシュートが入らない時間帯にチームを支えてきたディフェンスで粘り、ふたたび勝利へのカウントダウンが動き出しました。最後の10分間は7点に終わった日本ですが、「応援の力は本当に大きいですし、自分たちもすごく助けられたのでファンの皆さんに感謝しています」と渡邊雄太選手(フェニックス・サンズ)の言葉どおり、日本一丸で死守。1976年モントリオール大会以来となる48年ぶりに、自らの力でパリ2024オリンピックへのチケットを手にしました。

 目標に届かなければ引退を示唆し、自らを奮い立たせて臨んだ今大会、「正直すごく不安でした。本当に今回が最後になるのではないか、とも思っていました。正直言って予選グループも大変でしたし、本当にしんどいときでもがんばってくれたみんなのおかげです。感謝しています」という渡邊選手の日本代表の雄姿はまだまだ見続けられます。

 東京2020オリンピックに続き、2大会連続出場を果たし、次はオリンピックでの勝利に期待が高まります。まずは出場権獲得に安堵するホーバスヘッドコーチは、「ゆっくりと次の目標を考えたいです」と話し、次はどこに照準を合わせるかが楽しみです。

 近年、FIBA リオ2016オリンピック世界最終予選、FIBAワールドカップ2019、東京2020オリンピックと3つの世界大会を経験し、その度に悔しい思いをしてきました。ついに世界から勝利を挙げ、さらに3勝まで伸ばし、「来年へ向けて、今大会ではスタンダードを作ることができました」とホーバスヘッドコーチは評価。しかし、パリ2024オリンピックを見据えれば、「このスタンダードでは足りないです。もっとレベルアップしなければ、勝てないです」と述べ、FIBAワールドカップの戦いが終わるとともに新たなメンバー争いの幕が開きました。

 富樫勇樹選手(千葉ジェッツ)はまず3勝できたことに対し、「すごく大きいことです。前回大会はケガのために出場できず、映像で見ていてもその厳しさは伝わっていました。今回の雄太の引退宣言もそうですが、いろんな選手の気持ちに火がついて、良い流れのままトムさんの気持ちとあのパッションとともに、この結果を残すことができたと思っています。これを今後も続けていきたいです」とスタートラインに立つことができたFIBAワールドカップ。しかし、オリンピックを経験している富樫選手は、「今回負けたドイツとオーストラリアとの2戦がオリンピックレベルであり、それらのチームにまず勝っていかないと1勝もできないです。また違うレベルの場所だと思っています」という富樫選手は、若い選手の台頭にこの大会でユニフォームを脱ぐ覚悟をしていました。

 キャプテンとしてチームを引っ張り、見事に目標を達成した今の心境は、「また1からにはなりますけど、しっかり努力して次のオリンピックへ向けてここであきらめるわけにはやっぱりいかないです。この大会を経て思うこともあるので、1からはじまる争いに全力で臨む以外ないです」とまだまだ進化を続けます。

 そんなキャプテンに対し、「たぶん彼自身は悔しかったというか、もっともっと試合に出たかったと思います。もっと出ていれば活躍もできていたと思うんですけど、そういう気持ちを押し殺して、ベンチでキャプテンに徹していました。試合が終わったら、いつも声はガラガラでした」と渡邊選手は、その立ち振る舞いに感謝します。富樫選手だけではなく、このチームは全員が勝利のために、仲間のために戦える集団だったことが一番の勝因かもしれません。渡邊選手はこう続けます。

「それぞれが求められている役割を理解して、このチームはうまく機能していた理想のチームです。誰ひとりエゴみたいなのも見せることなく、自分の役割に徹してくれていました。今回は試合に出られなくて悔しい思いをした選手たちもいると思います。でも、遅い時間に試合が終わってから練習をして、汗だくになってロッカールームに帰ってきます。いつでも試合に出られる準備をしていました。これが強いチームの在り方であり、本当にみんなが誇らしいですし、このチームで良かったです」

 日本の戦いは終わりましたが、FIBAワールドカップの戦いはここからが本番です。9月3日(日)には沖縄ラウンド最終戦となる2次ラウンドが行われ、すでに準々決勝進出を決めた4勝同士のドイツvsスロベニアの行方が今から楽しみです。9月5日(火)よりフィリピン・マニラにベスト8チームが集結し、9月10日(日)の決勝で世界一を決めるまで熱き戦いが続きます。