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【北信越インターハイ現地レポート】男子決勝:中部大学第一 vs. 帝京長岡

2021年7月30日

インターハイ初優勝の中部大学第一

2年生シューターの坂本康成選手(中部大学第一)

 新潟県長岡市でおこなわれていた「令和3年度全国高等学校総合体育大会 男子バスケットボール競技大会」は30日が最終日。ともに初優勝を目指す中部大学第一(愛知)と帝京長岡(新潟)の決勝戦がおこなわれ、中部大学第一が54-37で勝利し、今年度のインターハイ王者に輝きました。

「選手たちがよく頑張ってくれました」と中部大学第一の常田健コーチは第一声、そう言いました。「帝京長岡とは、長岡に入ってから練習のための体育館をお借りするような関係で、簡単にいかないことはわかっていました。試合の点数経過を見ても完全に帝京長岡のペースで、前半はうまくいかないストレスが溜まっていましたが、幸いにもディフェンスだけは機能していて、アジャストされていないところもありました。後半、オフェンスのうまくいっていないところをうまく解消できれば、チャンスはあるなと思っていました」

 その言葉どおり、中部大学第一がわずか1点のリードで迎えた後半、常田コーチが「ゲームの入りのシュートタッチがいい」と評価する2年生シューターの坂本康成選手が3ポイントシュートを決めて、弾みをつけました。結果的には、後半の入りがゲームを分けたといってもいいでしょう。

 敗れた帝京長岡の柴田勲コーチは「中部大学第一の高さとディフェンス、フィジカルコンタクトの強さは警戒していて、そこはうまくクリアできたと思います」と振り返ります。ゲームのペースも、中部大学第一の常田コーチが言うように、柴田コーチもまた「これくらいの点数で抑えていこうと考えていたとおりでした」と認めます。しかし「アウトサイドのシュートが今日は来なかった。ほとんどが短いシュートになっていた」ことが敗因のひとつだと言います。

 昨日の準決勝、仙台大学附属明成戦では24本中8本を決め3ポイントシュートも、今日は10本多い34本打ちながら、決まったのは5本だけ。同じく留学生を擁するチームだけに、インサイドでイニシアチブを得ることもできず、帝京長岡の得点は伸びていきませんでした。そこも勝敗を分けた要因のひとつです。

 相手のペースでゲームを進め、ストレスを溜ながらも、わずかな風をつかんで抜け出し、初優勝をつかみとった中部大学第一と、自分たちの思い描いたゲームプランで進めながら、シュートの精度を欠いたことで、それを逃した帝京長岡。ただ、どちらもこれで終わりではないと言います。今大会中、終始、選手たちに「結果ではなく、質を求めなさい」と言い続けてきた中部大学第一の常田コーチは、その意図をこう話します。

「インターハイは、いわば全国大会の“新人戦”です。全国の強豪校もこのまま終わるわけがありません。今回の優勝は大きな意味がありますけど、いかにこのインターハイを勝ち上がっていくかが今後のウインターカップにつながると思って、そのような指示を出していました」

 結果は初優勝でしたが、彼らもまたその質を改めて見つめ直して、冬に臨もうとしています。

 それは帝京長岡の柴田コーチも同じです。近年はライバル・開志国際(新潟)の壁をなかなか乗り越えられず、「この2年間は苦しい時期でした」と振り返ります。それでも柴田コーチの言葉に発奮し、今年の選手たちは全国のファイナルまで勝ち上がりました。

「今までは合い言葉のように『日本で一番になろう』と言っていましたが、その近いところまで来ていると彼らも感じていると思うので、それに向けた厳しいトレーニングや、仲間との約束事、チームルールを守って、これから冬に向けて成長してくれるかなと期待しています」

 2021年夏の頂点には中部大学第一が立ち、そのすぐ下に帝京長岡がいます。しかしウインターカップでは彼らが全国のチームから標的にされることは間違いありません。いかに中部大学第一を引きずり落とすか。いかに帝京長岡を倒すか。彼らは夏のファイナリストになったことで、その基準になったわけです。その基準を自分たちで、全国のライバルが知らないところで、いかに上げていくか。中部大学第一と帝京長岡の冬に向けた戦いもまた、これからさらに熱を帯びていきます。