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FIBA女子アジアカップ総括:「プラスマイナスがゼロになれば良い」渡嘉敷来夢選手

2019年10月1日

3年ぶりに国際大会に戻ってきた渡嘉敷来夢選手

FIBA女子アジアカップでは身体を張ったディフェンスで4連勝に貢献

 「FIBA女子アジアカップ」で4連覇を果たしたAKATSUKI FIVE女子日本代表は無事に帰国し、優勝記者会見を経て、チームは解散しました。連日多くのご声援をいただき、チーム一同感謝しています。10月4日(金)から開幕するWリーグはそれぞれのチームに分かれて日本一を競うとともに、東京オリンピックへ向けた日本代表の座を争う新たな戦いがはじまります。会場へ足をお運びいただいて、アジアチャンピオンのプレーをぜひ間近でご覧ください。

 リオデジャネイロオリンピック以来、3年ぶりに日本代表として国際大会へ出場した渡嘉敷来夢選手(JX-ENEOSサンフラワーズ)。5戦全勝で頂点に立ったあと、「きつかったですね」というのが最初の言葉でした。193cmのエースが復帰したことで、自ずと4連覇への期待が大きくなります。しかしそれは渡嘉敷選手にとっては、不安とプレッシャーになってもいました。

 大会に備えて行った練習試合はニュージーランドとチャイニーズ・タイペイ、そして中国遠征ではプエルトリコ、ギリシャとも対戦。渡嘉敷選手より大きい選手を擁していたのは中国だけです。ほぼ高さに対する経験ができない中、4連覇に向かって負けられない準決勝の前日は、緊張で眠れなかったそうです。実際に大きな選手と対峙すれば、「こんなにプレッシャーを感じるんですね」と久々の感覚に驚きもありました。

 エースとして期待されるのは、やはり得点です。前回出場した4年前のFIBA女子アジアカップ決勝の中国戦は18点(予選ラウンドでは19点)を挙げました。しかし今年は準決勝・オーストラリア戦10点、決勝・中国戦7点と物足りなさを感じていたのは渡嘉敷選手自身です。

「大会を通じてあまり出来はよくなかったです。特にオフェンスが内容としてよくありませんでした。得点が全てではないですが、やっぱり得点は欲しいです」

 オフェンスで反省点を挙げる渡嘉敷選手ですが、「(髙田真希選手や長岡萌映子選手を含め)ビッグマンたちは本当にディフェンスでがんばってくれました」とトム・ホーバスヘッドコーチが感謝するほど身体を張ります。ディフェンスこそが日本の武器であり、勝利するための生命線です。身長差だけではなくフィジカルで押し込んでくる相手に対しても、強気で身体をぶつけてゴールを守る姿は頼もしかったです。

 中国の205cmあるハン・シュー選手には18点を決められました。しかし、渡嘉敷選手は「得点されたのはインサイドではなく、ほとんどが外からのシュートでしたし、あれはしょうがないです。でも、他のところはしっかりとゴール下を守れていた部分もあったので、それは自信になります」と手応えを感じています。シュー選手は18点中フィールドゴール8本を成功させました。そのうち5本はフリースローラインより外側であり、ペイントエリア内では負けていません。オーストラリア戦で14点を挙げていた200cmのリ・ユエル選手に至っては4点に抑え、オーストラリア戦では3本のブロックショットを決めています。

 オフェンスとディフェンスの出来に対して、「良い意味でプラスマイナスがゼロになれば良い」と渡嘉敷選手は考えていました。平均12点をマークし、MVPの本橋菜子選手(東京羽田ヴィッキーズ)17点、オールスター5の宮澤夕貴選手(JX-ENEOSサンフラワーズ)12.8点に続くチーム3番目の得点源であり、けっしてオフェンスがマイナスではありません。それに加えてディフェンスでは数字に表れない部分での貢献度は高く、大きくチームのプラスになっていました。

 大きな相手に対するディフェンスで自信を持っていましたが、「個人の出来としては悔しい気持ちが強いです。チームとしては優勝して良かったですが、個人としてはまだまだだということをあらためて感じられました。でも、この結果で良かったなと思います」と課題が見えたことをプラスに捉えています。

 11月には東京オリンピックに向けたアジア・オセアニア予選となるFIBA 女子オリンピック・プレクォリファイイング トーナメント2019が開催され、オーストラリアとの対戦が決まりました。「11月にはキャンベージが戻って来ると期待しています」と渡嘉敷選手は、WNBAラスベガスエーシーズで活躍する203cmのリズ・キャンベージ選手との対戦を心待ちにしています。さらに来年2月はオリンピック世界最終予選が控えており、すでに開催国枠で出場が決まっている日本やワールドカップチャンピオンのアメリカも参加する真剣勝負です。

 目標はオリンピックでの金メダル獲得であり、そこへ向けても「高さに慣れる必要があります」と危機感を持っています。それもFIBA女子アジアカップでレベルの高い試合を経験できたからであり、「休んでいる時間はなく、オリンピックが終わったら休めば良い話です」と渡嘉敷選手は闘志を燃やし、今すぐにでも次の戦いを欲していました。