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【インターハイ2025 最終日 大会レポート】認識を共にすることで得たインターハイ制覇

2025年8月1日

岡山県岡山市でおこなわれている「令和7年度 全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会」は最終日を迎え、男女の決勝がおこなわれました。今年度の夏の王者は、女子が桜花学園(愛知)に、男子が鳥取城北(鳥取)に決まりました。桜花学園は4年ぶり26回目の、鳥取城北は初のインターハイ王者になります。

女子の決勝戦では桜花学園が63-59で日本航空北海道(北海道)に勝ちました。桜花学園の白慶花コーチはゲームをこう振り返ります。
「今日はディフェンスとリバウンドの勝負であることと、日本航空北海道さんは勢いに乗っているので、ゲームの入り方が大事だと選手たちには伝えました。入り方はよかったんですけど、途中、相手の中心選手に得点を取られるなど、苦しい場面もありました。ただそこで桜花学園の選手たちが大きく崩れることなく、粘ってくれたので、最後は何とか逃げ切れたかなと思います」
桜花学園と言えば、これまでにインターハイ25回の優勝を誇る、高校女子バスケ界きっての強豪校です。ウインターカップでもこれまでに24回の優勝を果たしています。しかし2022年度以降、その年の国民スポーツ大会で愛知県としてや「U18日清食品トップリーグ2022」で優勝したものの、インターハイとウインターカップのトーナメントでは優勝から遠ざかっていました。決勝戦に進むのも2年前、つまり現在の3年生たちが1年生のとき以来のことです。白コーチは言います。
「ここ数年、桜花学園は競った試合や勝負所で相手に流れを持っていかれる展開でずっと苦しめられていました。それを打破できたきっかけは今年度の東海ブロック大会の決勝戦だったと思います。そこで最後の最後まで粘って粘ってディフェンスで頑張れば、私たちも勝てるんだよと、選手たちもそれが自信になったように思います。インターハイ2025を通しても、対戦するチームに苦しめられながら、それでも大崩れすることなく、苦しいときこそディフェンスだという認識を全員で持てていました。それを選手たち同士で声掛けをして、呼応するかのようにみんなで『そうだね、そうだね』と意思疎通をし続けられたことが今大会の大きな勝因じゃないかと思います」

優勝から遠ざかるなか、昨年末には桜花学園を強豪校へと育て上げた井上眞一・前コーチが逝去されました。混乱してもおかしくないなかで、白コーチを中心に選手たちは「桜花一丸」を掲げて、インターハイ2025の舞台に立ちます。
実は桜花学園が(厳密には当時の校名は「名古屋短期大学付属」ですが)、初めて全国大会を優勝したのは、今年度と同じ岡山県で開催されたインターハイでした。1986年のことです。それから39年の時が経ち、同じ岡山県開催のインターハイで、井上・前コーチからバトンを受け取った白コーチ率いる桜花学園が優勝したのです。
「井上先生は生前、 今年度の岡山インターハイをすごく楽しみにしていて、ずっと「俺が初優勝をしたのは岡山なんだ。また勝とうな」とずっと話されていました。先生と一緒にそれを達成することはできませんでしたが、私のなかで、今年度のインターハイは絶対に、何としても譲れないという思いもりました。先生とお別れをして初めてのインターハイで桜花学園の存在感を見せたいという思いもありましたし、先生が空からチームを見守ってくれて、苦しい時間帯も力を貸してくれたんじゃないかと思います」

男子の決勝戦は鳥取城北が、2010年に沖縄で開催されたインターハイ以来の優勝を狙う八王子学園八王子を64-58で振り切りました。チームを率いる河上貴博コーチは決勝戦をこう振り返ります。
「粘り強くリバウンドに絡んだり、ディフェンスをしつこくやるといった自分たちのバスケットをやり通したことと、子どもたちも試合を楽しんでくれていたので、それが一番の勝因かなと思います」
選手たちは当初、インターハイ2025の目標を「ベスト4」に掲げていたと河上コーチは明かします。トーナメント表を見ても、その目標を達成することさえ厳しい戦いになると思っていたとも認めます。
しかし選手たちがインターハイ2025のゲームを重ねていくなかで、どんどん成長していったことが、彼らの目標をも飛び越えた初の日本一へとつながりました。
「チームとしては、初戦の羽黒(山形)戦でゲームの入り方が悪かったところを、2回戦の柳ヶ浦(大分)戦ではすごく良いゲームの入り方をしてくれました。その柳ヶ浦戦は後半がよくなかったのですが、次の帝京長岡(新潟)戦では後半も落ち着いてできていました。準決勝の仙台大学附属明成(宮城)戦は相手の頑張りもありましたが、ウチの選手たちも我慢して戦ってくれました。今日の八王子学園八王子戦は出だしが少し硬くなってしまったんですけど、ゲームの入り方はチームとしての成長ですし、選手個々も成長してくれたなと思います」
試合は、これまで選手たちが頑張ってきた練習の成果を出す舞台です。それだけに留まらず、その舞台で得た経験を翌日の試合に生かして、大会期間中も成長し続けたことが、鳥取城北のインターハイ初優勝に結びついたのです。

もちろん、彼らの強さは今大会、あるいは新チームになってからの数か月で得られたものだけでもありません。昨年度の「SoftBank ウインターカップ2024」で決勝戦まで勝ち上がったことも、チームにとっての大きな財産になったと河上コーチは言います。それは特に終盤に追い上げられた準決勝や決勝で力となって発揮されました。
「勝ちきるためにはどういうことを頑張らないといけないのかを、ウインターカップで勝ちを重ねるにつれて、チームとしても、私自身としてもすごく整理できました。今回のインターハイでも、我慢強くプレーし続けることが大事だとウインターカップで学んでいたので、昨年度から主力としてコートに立っている#4新美鯉星と#7豊村豪仁、#28ハロルド アズカを中心に、そこの共通認識ができていたかなと思います」
バスケは「経験のスポーツ」と言われますが、単に経験を重ねるだけでなく、その経験をいかに生かすかが大事なのだと、鳥取城北のインターハイ初優勝が教えてくれました。

インターハイ2025は桜花学園と鳥取城北の優勝で幕を下ろしましたが、今年度の高校バスケはここからさらに熱を帯びていくことになります。8月下旬からは「U18日清食品リーグ2025」も始まり、リーグ戦を通した競技力の向上が見込まれます。高校生たちの熱い夏は、インターハイ2025を終えてもなお、まだまだ続くのです。

【放送・配信】
[全試合配信]
▶ インハイTV ※決勝は録画配信
▶ バスケットLIVE ※男女1・2回戦と決勝は録画配信

[男女準々決勝・準決勝・決勝 (放送 / 配信)]
▶ J SPORTS / J SPORTSオンデマンド
※一部試合は録画放送・配信
※女子準々決勝はJ SPORTSオンデマンドでの配信のみ

[決勝]
▶ NHK BS ※男女決勝を生中継